車を買うのは楽しいのですが、車を売るのはけっこう楽しくない体験です。その中で、目を吊り上げて人生を賭けなくても、まぁまぁの値段で車を売却するにはどうしたらいいのか、体験を元に書いてみようかと思います。なお、これは、1円でも高く売る、とかそういった気合の入ったものではないので、その手のテクニックを知りたい方はいろいろなブログをご覧になるとよいと思います。
あと、個人的には何よりも大切なのは、これまでお世話になってきた愛車を笑顔で新しい嫁ぎ先に送り出すことだと思っています。別れ際が原因で思い出が台無しになったら悲しいですからね。
この記事を書いたきっかけ
「車 売却方法」などで検索してみればわかりますが、「高く売る方法」というような記事を書いているのはほぼみな業者。中古車買取店だったり一括査定運営サイト(プロ直伝の高く売る方法とか書いてあっても同じ)。個人サイトでも、裏にアフィリエイトがあるのか、何か一つの買取方法に誘導するものがほとんど。
これじゃあ、買い手の人たちがいくら私たちの味方のふりをしても、彼らの都合の良いように誘導されるだけですよね。。
3か月前に車を売る時に、「何年経っても状況は変わらないんだなぁ」と思いつつ、自分なりに調べて&考えて売ってみたらまぁけっこういい線いっているような気がしました。錯覚かもしれませんが。
それで、ごく普通の車持ちが、少しの努力で少しだけ良い思いをできるようになったら人に役に立っているのではないだろうか、と思って書くことにしました。(ちなみに、どこからも一銭ももらってませんのでご安心ください)
いきなり結論
ちょっと長いので、まず自分なりの結論を書いておきます。
なお、この記事では、一括査定(正確には一括見積もり→出張査定ですが、一般的には一括査定で通るようなので、この用語に統一します)とオークション代行を比較しています。
買取業者が直販してくれるなら売却額は一括査定>オークション代行のチャンスあり
買取業者が直販してくれないなら売却額はオークション代行>一括査定
「なんだこりゃ?」という方もいらっしゃると思いますし、「そんなのあたりまえじゃん」という方もいると思います。
下記に、なぜかを解き明かしていきますので、興味がある方は読み進めてくださいませ。
まずは、売却する車がどんな車か、ポジショニングする
たいそうな話ではないのですが、楽をするには準備が必要。ということで簡単に売却する予定の車をポジショニングしてみます。

1.普通の車(ほとんどの国産車、輸入でも大衆車)
2.珍しい車、高額な車(上はランボルギーニから下はポルシェくらいまでのスポーツカー、ベントレーやロールスロイスなどのラグジュアリーブランド、ベンツ・BMW・アウディの中だと高価格帯の車)
3.古い車(登録から20年以上経っていてそれなりに市場価値のついている車)
今回扱うのは1.の普通の車です。
2.の珍しい車や高額な車は、その車種に特化した買取店(販売店や整備工場を持っている方がベター)に当たって相対(あいたい)でじっくり見てもらった方が良いです。また、最近はカババのような個人売買をサポートするサイト(「自動車フリマ」と自称されています)も出てきているので、こういった趣味性が高い車の売却には向いていると思います。
3.も同じで、普通の買取店には価値がわからないので、旧車専門店やいつも懇意にしている人を頼ったりした方が良いと思います。
まずはこのポジショニングで売却先のアタリをつけます。たぶん90%以上の車は1.に入ると思います。
次に、中古車の流通経路を見てみる
私もこの業界の人間ではないので調べたことを書いているだけですが、ざっと見るとこんな感じ。業界の人しか入れない自動車売買のオークション(オートオークション=AAと呼ばれているらしい)がいくつも存在して、そこで中古車が売買されている、というのが流通の中心。70%以上の中古車がこの経路を通るようです。

中古車の流通はオートオークション経由が70%以上
まずは左側。
「売主(車を売りたい人。ここでの私たち)」との接点は「ディーラー」や「買取業者」、「オークション代行業者」。
「ディーラー」や「買取業者」は、「売主」から車を買い取り、オークションに回します。「オークション代行業者」は、「売主」の代わりにオークションに出品してくれます。(図にはありませんが、中古車販売業者間の流通サービスもあり、中古車販売業者間での売買もされているようです。)
中古車販売店などがオークションで入札し、落札したら車を買い取って店頭で「買主(中古車を買って使用する人)」に売る、という流れになります。
残りは直販ルート
次に右側。
右側は直販。先ほど出てきた「ディーラー」や「買取業者」が「売主」から車を買い取り、オークションに流さずに直接「買主」に売る形態です。個人売買代行もここに含めます。
ここで注目してほしいのは、「ディーラー」や「買取業者」がオートオークションルートにも直販ルートにも登場することです。「買取業者」は車を「売主」から買い取った後にオークションに流しもするし、自社店舗での販売もしているのですね。
普通の車を売る代表的な方法を見てみる
さて、ここからは1.の普通の車を売却することを考えます。
代表的な売却方法は4つ
- ディーラー買い取り
- 一括査定(オートバックスなどがやっている持込査定もここに入れてしまいます)
- オークション代行
- 個人売買(代行含む)
このうち、ディーラー買取は価格競争力があまりないことから扱いません。個人売買も魅力的なオプションですがここでは扱いません。
このうち、ディーラー買取は価格競争力があまりないことから扱いません。個人売買も魅力的なオプションですがここでは扱いません。
この記事では、「オークション代行」と「一括査定」を比較したいと思います。
オークション代行
それでは、最初の図の左側に位置する、オークション代行から見ていきましょう。

オークション代行とは?
最近流行りのオークション代行というのは、先ほど述べた、業者しか参加できないオートオークション(AA)に、代行業者を通して個人でも入れますよ、というものです。つまり、ディーラーの買取部門や買取業者の買取部門を中抜きして、直接(といっても代理業者を通してですが)個人がオートオークションに出品したり、オートオークションを通して車を購入したりできるようにしたものです。確かに、なんかお得感がありますよね。
オークション代行の「売主」のメリットは?
「売主」のメリットは2つ。
- 「買取業者」や「ディーラー」を中抜きすることで、車が高く売れる
- 売るための作業を代行業者がやってくれるので手間がかからない
メリット1:高く売れる
「買取業者」がオークションに流す前提であれば図のような価格構造になります。(「儲け」は粗利と捉えてもらって構いません。ここから人件費等の諸経費が出ていきます。)
赤い線が買取価格。そこに注目してください。

「買取業者」は、過去のデータからその車がオークションで売れそうな金額を算出し、そこから業者の取り分(手数料)を引いた金額を上限に、買取金額として「売主」に提示します。
言い換えると、「売主」である私たちが手にする金額というのは、
「売主が手にする金額=オークションで売れる(と「買取業者」が予測した)金額-買取業者の手数料」
となります。「買取業者」は損をしないように、オークションでの予想落札価格を低めに見積もるはずですから、どうしても私たちに提示する買取金額は低くなりがちです。
一方、オークション代行業者を通してオークションに直接出品できれば、
「売主が手にする金額=オークションで業者に実際に売れた金額-オークション代行業者に支払う手数料」
となります。
オークションで売れた金額(実績)が基準になるので、こちらの方が良いですよね。
メリット2:手間がかからない
基本的に、やり取りは代行業者1社とだけ行えば終わりです。オークションに出品するために必要な写真等もぜんぶ代行業者が撮ってくれますし、必要な書類一式も全部揃えてくれます。基本的には質問に答えるだけで、あとはすべてやってくれます。
なんか売主にとってはメリットしかないように見えますね。こうしてみると、なんだ、全部オークション代行に頼めばいいのかな?ということになりそうです。
ここまで、70%以上を占めるというオートオークション経由での販売に直接アプローチできる、オークション代行を見てきました。
一括査定(直販)
次に、「買取業者」による一括査定を見てみましょう。
さきほど書いたように、「買取業者」は自社で車を買い取ってオークションに流すルートと、自社で直販するルートと両方持っているのですね。ここがミソです。

先ほど、「買取業者」が買い取った車をオークションに流すルートは、オークション代行との比較でみてきましたので、ここでは、直販ルートを見ていきます。
買い取った車を「買取業者」が直販ルートで売るかオークションルートで売るかは、売主である私たちは指定できません。ですので、まずは「買取業者」がどうやって直販ルートを選ぶか、そのメカニズムを解明してみたいと思います(ここからは推測の連続です)
直販ルートの「買取業者」のメリットは?
直販の彼らにとってのメリットは何でしょうか?
それは、
「中間マージンなしに、買主への販売価格と売主からの買取価格の差額(さや)を総取りできる=利幅が大きい」ということです。
コスト構造を見てみましょう。右が「買取業者」による直販です。「買取業者」が買い取った車をオークションに流す場合と、自社で販売した場合を比較してみましょう。

これをみると一目瞭然ですね(ちょっと図が大げさかもしれませんが)。
このように、「買取業者」が売り手から買い取り、自社販売網で販売(直販)する方が利益が出ます(もちろん、この「儲け」から販売スタッフの人件費や店舗の土地代などの経費が出ていきます)。
流通経路すべてを一社で独占できるわけですから当然ですね。
直販ルートの「売主」のメリットは何?
ここまで、「買取業者」の立場に立って直販のメリットを見てきました。でも結局それが「売主」である私たちにとってのメリットにならなくては意味がないですよね?
では、「買取業者」が直販ルートを選ぶとなぜ私たちがうれしくなるのか?
それは、
- 買取価格のUPが期待できる
からです。
もう一度図を見てみましょう。今度はオークション代行との比較も入れています。
赤いラインが買取価格です。そこに着目してください。

直販の場合は、利幅が大きいために、それを原資として一部を買取価格の上昇分にあてられるわけです。
「買取業者」は、なぜ買取価格を上げるのか?ボランティアじゃあるまいし。
と思われるかもしれません。でも、彼らにも買取価格を上げる理由があります。
買取にかかるコストの大部分は出張査定です。そして失注すると一銭にもなりません。買取価格を上げることで失注リスクを減らすことができます。こうして出張査定の際の「打率」を上げることで無駄なコストを減らそうとするインセンティブ(動機)が働きます。
彼らはオークションでの車の落札価格のデータも持っているでしょうし、オークション代行業者の手数料等も知っているでしょうから、どの価格で指せばいいかは大体わかっているでしょう。
こうすることで、私たちとしては一括査定→オークションに流す場合よりも高い買取金額が期待できるようになります。さらには、オークション代行よりも魅力的な価格の提示も期待できるわけですね。
ここまでで、買取価格を高い順に並べると
一括査定→直販>オークション代行>一括査定→オークション
という順番がなんとなく見えてきました。
どんな時に「買取業者」は直販を選ぶのか?
「買取業者」による直販が一番私たちにもメリットがあることがわかりました。でも、直販で売ってくれるかは私たちには決められない。そこが最大の問題です。
でも、彼らの考えがわかれば、少なくとも直販してもらえそうかどうか予測できるのでは?
そこで、彼らの思考回路をもう少したどってみたいと思います。
直販ルートの「買取業者」のデメリットは?
彼らにとっての直販のデメリットは何でしょうか?
それはずばり「在庫」です。
買い取ってオークションに流せばすぐにお金が入りますが、買い取って自社店舗で売る場合には、買主に車を買ってもらうまでは一銭にもなりません(回収サイクルが長い)。しかも長期間売れ残ってしまったら目も当てられません。ですので、
直販は利幅が大きいけど「在庫リスク(売れ残りリスク)」がある
わけですね。
「買取業者」はどうやって直販ルートとオークションルートを使い分けるのか?
ここがポイントです。答えは、
- 車を見て決める
先ほど言ったように、直販は利幅が大きいけど、「在庫リスク(売れ残りリスク)」があるわけですね。
じゃあどうするか?
「在庫リスク(売れ残りリスク)」が少ない車を直販で売ろう!
となるはずです。
一括査定で「業者」が手に入れたい車は?
では、どんな車なら、直販したいと思うでしょうか?
- 店舗に置いたらすぐに売れる、いわゆる「人気車」
店舗スペースは場所を取りますから、回転が命です。すぐ売れなくてはいけません。その時に一番(売れるかどうか)読めるのは、人気車です。販売台数トップ10に入っているような車がこれに当たります。




- 店舗に置くとお客さんが振り向く、いわゆる「見せ(魅せ)車」
店舗に来た時、あるいは通りかかった時に雰囲気が明るくなる車、あるいはいいイメージを与えるような広告塔的な役割の車も買いたい候補に挙がる車。販売台数トップ10ではなくても、誰にでも知られていて憧れられる車、セグメントではトップのような車がこれに当たります。例えばトヨタ ランドクルーザーやスズキ ジムニーなど、アクティブなライフスタイルを連想させるような車、BMW ミニみたいにちょっとおしゃれで乗ってみたいかも、と思わせるような車、トヨタ GR86みたいなスポーツタイプの車、そんなところでしょうか?(実際にデータを見て企画しているわけじゃないので実際のところはわかりません)



このタイプの車は、「買取業者」にとって、リスクを減らしながら利益を最大化できる「欲しい車」になるのではないでしょうか。
ファイナルジャッジ!いよいよ売り方を決める
さて、今見たように、売主である私たちにとっては「一括査定→直販が一番高く売れそう」「買取業者が自分で売りたい車であれば、直販してもらえそう」というところまで来ました。
最後はチェックシートでどうするか決めましょう。1つでも当てはまれば、一括査定が吉かもしれません!
<一括査定かオークションかを判断するためのチェックシート>
- その車は、店頭に置いてあったらすぐ売れそうな「人気車」ですか?
- その車は、店頭に置いてあったらお客さんが喜びそうな「魅せ車」ですか?
あと、じつはもう一つあって、
- けっこう傷はついているけど、修復歴ありにはならない程度の車
具体的には、修復歴ありになる指定箇所の修理・交換が必要でない、たとえばバンパーとかドアパネルとか、そういったところのへこみが目立つ車。
こういう車もオークション代行による出品よりも一括査定の方が高く売れる傾向にあるようです。先ほど書いたように、オークションは実物を見ないで買うので、傷の情報はリスク分も含めてディスカウント(減点)されます。
しかし、例えばちゃんとした整備工場を持っている買取業者の場合は、一括査定の際に機器を用いて変な修理をしていないかをスキャンしたりしています。そうすると傷の程度と必要そうな修復費用がわかるので、場合によっては「そこまで減点するほどの傷じゃないな」という判定に変わり、買取提示額が上がる、ということです。
(まぁこの場合、「安く修理を済ませ、見栄えを良くしてからオークションに流す」というルートになることも多いわけですけどね。)
さぁ、どうなりましたか?
- 1つでも当てはまる:一括査定を検討してもいいのでは?
- 1つも当てはまらない:オークション代行の方がいいかも?
「売り方を決める」のまとめ
オークション代行か、一括査定か、2つのメジャーな売り方を比較して、自分の車に合った売却のしかたを見つける方法を考えてみました。
実際にはオークション代行、一括査定それぞれ特有のデメリットもありますので、それを末尾に掲載しておきます。最終的にはそれも勘案して決めることをお勧めします。
ちょっとしたテクニックも
もし、「面倒くさがらずにもう少し売却額を高く狙いたい」という場合には、組み合わせ技もあります。
「一括査定」で見積もりをもらった後に「オークション代行」で売る
です。一括査定は、ルール上査定額を提示してきた買取業者に売る義務は発生しません。そこで、このようなことができるのです。オークション代行で売る場合に、「最低落札価格」に、上記の査定額を入れればよいことになります。
ただし、この場合は最低入札価格が高すぎて落札されないリスクもありますので、日程的に余裕がある(いつ売らないといけないという日程上の制約がない)場合のみ、おすすめします。
ホントのまとめ
ここまで読んでくださった方、ありがとうございました。「何やら面倒やないかぁい!」とツッコミを受けそうですが、コンセプトを理解していただければ実践は簡単です!
要は、
- 「買取業者が欲しそうな車(人気車・魅せ車)」は一括査定も検討すべし
ということです。
ぜひ、買取業者に呑み込まれることなく、今までお世話になった愛車を新しい嫁ぎ先に笑顔で送り出せるよう、お祈りしております!
次回は、実際に9年半乗ってきた日産セレナ(C26)を一括査定で売却した時の話を書きます。
補足:オークション代行・一括査定それぞれのデメリット
オークション代行・一括査定にはそれぞれ上記に挙げた以外のデメリットもあるので、実際にはそれも考慮に入れて最終的にどちらで売るかを決める必要があります。
オークション代行のデメリット
- 1.売れるまでの日数が必要
- 2.入札が流れて売れない場合がある
- 3.落札されたら必ず売らなければならない
デメリット1:売れるまでの日数が必要
業者によっても違うかもしれませんが、だいたいオークション代行業者がアクセスしているオークションは1週間に1回くらい行われるようです。月曜に行われるオークションだとだいたい木曜日くらいには代行業者への申し込みが必要と思われます。そして、オークションで買い取り先が決まるとそこから4、5日のようなので、どうしても最短7日はかかります。その曜日を逃すと次のオークションまで1週間とすると、プラス1週間、というように伸びてきてしまいます。
デメリット2:入札が流れて売れない場合がある
代行業者に申し込むと、最低入札価格(フロアプライス)を設定するかどうか聞かれると思います。要は、いくら以上だったら売るか。オークションに限らずですが、ここで強気の金額を設定すると最低入札価格以上で誰も入札がなくてオークションが流れることがあります。そうすると、もう一度売る戦略を考えて、となりますので売却が先延ばしになります。需要が想定しづらいマイナーな車の場合も、オークションが流れることがあるようです。
デメリット3:落札されたら必ず売らなければならない
落札された金額が思いのほか良くなかった(たとえば最低入札価格近辺)という場合でも、落札されたら必ず車は売らなければなりません。あとで一括査定でもっと高い査定額を出してきた買取業者がいてもだめです。
一括見積査定のデメリット
もう言わずもがな、嫌な電話がたくさんかかってくること、そして出張査定の応対が面倒ということです。
ちょっと前、オークションが台頭する前は、リクルートなんかは電話なしでメール等のやり取りだけで査定のセッティングができたのですが、最近はまた電話は必須になっているようです。
ただ、MOTAみたいに事前に5社くらいまで絞られて(事前オークション)、そこからだけ電話がかかってくる、みたいな方法も考えだされているよう。
いずれにしてもこの電話だけは勘弁、というのが正直なところです。
わたしが、まだ許せると思う一括査定サイトは下記です。(当ブログは比較サイトではないので、実際に使う場合は比較サイト等で検討することをお勧めします)










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