じつは、まもなくホンダ シビック タイプR(FL5)が納車されます。フェアレディZ(RZ34)も近々納車されるので、経営統合の話が進んでいる両社の車がほぼ同時に納車されることになるのは奇遇というかなんというか。
(というかなんでそんなに車買ってんだ。。)
注文したのは2022年9月。納車までは約2年5か月。納期等、納車までの流れはこちらをご覧ください。
今回は、購入を決めた際の試乗について、2年以上前の記憶とメモを頼りに書きたいと思います。
シビック タイプR(FL5)納車初日のファーストインプレッションはこちらです。
1,000㎞走行後:ホンダ シビック タイプR(FL5)、納車後1,000㎞。禁断のべた踏み、不整路。その時クルマは?
詳細比較:
【比較】ポルシェ 718ボクスター vs ホンダ シビック タイプR(第1回) 2台の相違点と意外な共通点
【比較】ポルシェ 718ボクスター vs ホンダ シビック タイプR(第2回) ワインディング編:サラブレッドと下町ファイターが対決!
ホンダシビックタイプRを買いたい!と思ったわけ
安易な動機
個人的にはいつかサーキット走行をしてみたいと思っていました。そして、2021年頃からサーキット走行用の車を探し始めました。
最有力候補はスバル WRX STI。
2019年にVAB型 スバル WRX STI ファイナルエディションの抽選に応募しなかったことに後悔していた私は、ずっと新型WRX STIを待っていました。
が、ご存知の通り、新型WRXにSTIが設定されるかどうか、雲行きが怪しくなってきました。
「それなら、シビックタイプR、ありかも?」
こんな、スバルファンからもホンダファンからもブーイングされそうな安易さで、シビック タイプRを調べはじめたのでした。
シビック タイプRの(紙面・動画での)第一印象
具体的にシビック タイプRに興味を持ちはじめたのは、2021年10月。カモフラージュ塗装の車両が発表されたときです。ずいぶんスマートになった外観に、これならありかも?と思いました(ファンの方、本当にすみません)。

スペックも明らかに。
富士スピードウェイを含む特定のサーキットでの速度リミッター解除機能、データロガーもある。ブレーキも素のままでサーキットを走れそう、これはいい!
そう思ってディーラーに向かったのでした。
ホンダ シビック タイプRとご対面
試乗できるのは家からちょっと離れたところにある店舗。同じマニュアル車のスバル レガシィ S401で試乗に向かいます。
行ってみると、ありましたありました、シビックタイプRの試乗車。
やっぱりデカいな!というのが第一印象。
何しろ全幅はシビックのベース車に比べて+90㎜の1,890㎜。


試乗の予約はほぼ埋まっているらしく、私が訪問した後にも先客がシビックタイプRの試乗車で道路に出ていくのが見えました。
ひとしきり、営業の方の話を聞きます。
「資産価値、上がりますよ」と変な営業トークをされました。
・・・別に、そういうつもりはないんだけどな。。まぁこういうラフな感じがホンダさんらしくて面白いですね。笑
車に乗り込んだ時の第一印象
しばらくすると、試乗車が戻ってきました。
「それでは行きましょうか」と声をかけられ、シビックタイプRに乗り込むことになります。
ホールド感の素晴らしい純正シート
わー、ほんとにシート真っ赤なんだー。恥ずかしい。。

座ってみると、さすがにホールドが良い。リクライニング角度は調整でき(レバー式)、普段乗りでも困らなそうでした。しかも4点式以上のベルトもそのまま付けられそう。
ちなみに、ベース車のシートをもとにホールド性を増すなどの改良をしているとのことで、こうしたところにもコストを抑える工夫がされているようでした。
これはいい!
ただ、一点だけ問題が。
私は足が短いため(?)少しシートを前目にするのが好きです。が、そうするとシフトノブが相対的にやや後方に位置するため、シートバックのサイドサポート部の張り出しが少し邪魔になりました。サーキット走行や街中でのシートポジションであれば問題ないかとは思いましたが。。。
室内は広々、雰囲気も良い
車内はワイド。広々としています。
水平基調のダッシュボード。

高さもほどほど。着座位置はベース車よりは少し低いのですかね?それでも気軽に乗れる感じです。ナビの位置も視界を遮らず、すごく視界は良い。

ミラーの付け根とAピラーの間はトヨタ車やスバル車のように広く取られてははいませんが、左前方視界は悪くありません。
最近のホンダ車は、室内の雰囲気が良いなぁと感じます。樹脂の質感も悪くないですし、なによりシンプルなデザインに好感が持てます。
センターコンソールパネルやシフトノブにアルミニウムを使うなど、ポイントポイントにいい素材を使ってデザインのハイライトを作っているところも好感触。

エアコン操作ダイヤルは質感は普通であるものの、操作感は良い感じです。

ステアリングホイールを触ると、アルカンターラが気持ち良い。これ、手入れを考えるとちょっとイヤなんですが、気持ち良いのは間違いありません。

まずは赤いシートにちょっと気恥ずかしさを覚えつつも、好印象のままスタートします。
走り出す。何だこの「ラク」さは!
プッシュ式のエンジンスターターを押してエンジンを始動します。
あら、普通。
静かでもありませんがうるさくもありません。
とにもかくにもトランスミッション!
ギアを入れます。おおぅ!
ちょっと期待していたことではありますが、まずシフトポジションを1速に入れるときのあまりの気持ち良さにくらくらしてしまいました。軽いのにカチッと入る感じが最高。全然(我が家のS401では強く感じる)ゴリゴリっという感触がありません。
走行中の変速も良い。スコンスコンと入っていきます(ただし、私は3速から2速への変速時にちょっとまごつきました)。
シフトノブがすりすりしたくなるほどの握り心地で、かつショートストローク。シフトショックも出ません。

このフィーリング、昔レンタカーで借りて運転した初代NSXを思い出しました。ホンダ車のマニュアルトランスミッションは大好きです。マツダ ロードスターと並んで私の大のお気に入り。
クラッチも軽くてかなり奥から半クラッチになるので、ミートするのに何の神経もいらない感じ。我が家のS401とは大違いです!
現代的な車だなー!!と興奮します。
秋の夕暮れの時間帯、道路は混雑しています。もうのろのろ運転。それでも全然クラッチを踏んでいるのが苦になりません。めちゃいいやん!
オートビークルホールドに悶絶
10分経ってようやく幹線道との交差点に。ここからは上りです。
「いきなり坂道発進かよ」
やってみます。あ、ヒルスタートアシストが機能している!めちゃラク!
渋滞にはまっても全く苦にならない、この「普通」さにちょっと感激してしまったのでした。
「スゴイですねー、今のマニュアル車って坂道発進も簡単なんですね」というと、
ディーラーの方曰く、
「オートビークルホールド使うともうめちゃくちゃラクですよ」
試してみます。
マニュアル車のオートビークルホールド、じつは生まれて初めて。

ギアをニュートラルに入れると、ブレーキからもクラッチからも足を離せます。
発進時にはクラッチを踏みながらギアを1速に入れて、普通に発進。その間、坂道だろうとなんだろうと永遠に(実際は最大10分)ブレーキをして待ってくれます。「えーっ、こんなんでいいの!?」
マニュアル車の面倒な部分からはもう全部解放!あとはギアチェンジの楽しい部分だけお楽しみください、というわけでした。
もう感激すぎ!!日本語が変になるくらいです。
車の走りに感激する前に、この便利機能にやられてしまったのでした。
のろのろ運転で分かった快適さ
渋滞で全然走れてない。。。
スポーツカーの試乗としてはある意味最悪のシチュエーションですが、そんなところでも全くイヤにならない。逆にこんなシーンでも快適だなと感じられたのは、この車が乗用車ベースだからこそ。
着座位置が低すぎず、視界が良い。着座姿勢もいたって普通。窮屈な感覚も皆無、といった感じで疲れる要素がありません。

のろのろと走っている分には、音もそれほどうるさくありません。こんなところは一昔前のランエボ(三菱ランサーエボリューション)など、乗用車から派生したハイパフォーマンスモデルにはない部分。後席中央に人が座れないことを除けば、普段使いしても困らなそうな快適さです(全幅の大きさや最小回転半径の大きさは除く)。
路面からのゴツゴツ感もかなり抑えめ。電子制御ダンパー(サプライヤーはZFザックス)のおかげでしょう。しっとり上質、というほどではありませんが、ノーマルモードは文字通り「普通」でした。ロードノイズもあまり気にならず。

試しに一番足が硬くなる+Rモードに入れてみます。さすがにコツコツします。が、「これはヤバい」というほどの硬さは見られません。すごいもんです。
エンジンも低回転でトルクがあり、高いギアでもラクに走れます(4速30㎞/hからの再加速も余裕)。レスポンスも良くすぐにアクセルに反応してくれるのでとにかくラク。
総じて、のろのろ運転ではこの車の快適さが光りました。
ただ、一つ気になったのはビビリ音。路面の特性で特定の周波数で共振するのか、時折ダッシュボードの左の方からビリビリという音が発生していたのが少し気になりました。このあたりは納車されたらチェックしてみたいと思います。
交差点からのダッシュで、エンジンの俊敏さの片りんをみた

ようやく裏道に抜けるところが来ました。交差点を曲がって、5,000回転弱までの加速を試せました。
+Rモードにします。2速、アクセル、踏みます!(でも怖いので半分くらい)
なんじゃ、ターボラグ、感じず。
ドラマ、ゼロ!
トルクがフラットに出てターボラグもほぼないため(ターボチャージャーの翼の大きさ、形状、枚数などにも手が入っているようです)、特に2速で5,000rpmまでの領域ではそれほど暴力的な加速を感じることはありません。
とはいえ、ブースト圧が高まって、車速が上がるにつれて車をグイっと引っ張っていくような感覚が強くなります。このあたりは低回転型の実用ターボにはない、スポーツユニットらしい部分がありそうです(それ以上回してないのでわかりませんが)。

ただ、急加速時にはエンジン振動が少し室内に伝わってくるのを感じました。
また、エンジン音はそれほど官能的とは言えないかもとは思いました。昔のVTECの高回転エンジンを知っていると、ちょっと物足りないかもしれませんね。
一方、アクティブサウンドコントロールは思ったより自然な感じです。GR86 / BRZのようにあからさまな合成音を流しているのが判る感じではなく、原音を増幅するような感じです。音像の定位感にも不自然なところがなく、これはありだと思いました。
加速時の安定感は半端ない感じでした。路面のうねりにもハンドルは全くとられず、まーっすぐ進みます。
ステアリングも良い感じ
ステアリングフィールは重くもなく、軽すぎず、絶妙。それでも20年前の車に比べたら圧倒的に軽い。ほんとにラクです。
(ステアリングホイールの重さは、走行モードによって3段階変わりましたが、どれも絶妙な味付けでした)
切り始めの感覚も自然。中央付近のアソビもほとんどありません。
デュアルピニオン式EPS(電動パワーステアリング)のサプライヤーはたぶん日立Astemo(旧ショーワ)。ギアボックスのラックギア支持剛性アップやアルミハウジングの高剛性化などもしっかり行われているようです。
また、ベース車においてもハンドル操作によるシャフトのねじれを検知するトルクセンサーの分解能が、先代比6倍になったとか。これでステアリング操舵時の小さなねじれでも検知できるようになるため、ステアリングの剛性を上げられたそう(つまりたわみにくくできる)。
そんなこんなで、ステアリングフィールはたぶん現行ホンダ車でベストではないでしょうか?
ブレーキetc.も抜かりなし
フロントブレーキは、Bremboのモノブロックアルミ対向4ポットキャリパーで、ディスク径は350㎜。それに対してリアブレーキはフローティングタイプ(片押し式)。さすがにFF車だけあり、バランス的にはフロントにかなり寄っているようです。
踏み心地はとても自然でした。これはサーキットでも安心して踏めそう。

ホイールは先代FK8の20インチから19インチにインチダウン、幅を265㎜と幅広化。リバースリムを採用して高負荷時の面圧の均一化を図っているようです。(ちなみに、ノーマルリムの成形ラインに載せるために、1ピース構造を採用しながらリムを成形するスピニング工程で2つのローラーを同期させる専用制御を入れるという、生産技術面の工夫もしてコスト増を抑えているそう)。路面への食いつきはきっとよくなっていると思います。
鍛造から鋳造に変えていますが、インチダウンの効果もあり、タイヤとのセットで一組あたり1kg軽量化しているとのこと。
実際にこのあたりの効果はサーキットで走ってみないとわからないので割愛します。
再びトランスミッション。
オートレブマッチも試してみました。スゴイ。
・・・自分が頑張ってやる必要は皆無ですね。
フライホイールはシングルマスで回転慣性質量を約25%低減したとのこと。レスポンスも良く、回転落ちも速そうです。
のろのろ試乗でも、あり!
シビック タイプRは魅力にあふれていました
試乗は約30分。そのうちスイスイ走れたのは5分ほど。
それでもこの車、すごくいいなと思いました。
とにかく、トランスミッションがすごすぎて(ラクであり気持ち良い)、それだけで価値ある一台だと感じました。
さらに、良く回りそうなエンジン、安定の加速感、快適と言っても良い足回り、素直なステアリングフィール、うるさくない音環境、オートビークルホールドの超絶便利さ、オートレブマッチなど、ちょっと走っただけでも良いなと感じられる部分がありました(走行性能はほとんど味わうことができませんでしたが)。
マニュアル車でありながら、その味わいはとても現代的。個人的にはこれは大歓迎。これならマニュアルの新型車に乗る積極的な意味があるなぁ、と感じました。
(個人的には古い車も好きなので、新しい車には古い車にはない要素を求めてしまいます)

クリーンな室内、ホールド性の良いシート、乗用車ベースゆえの気軽に乗れる着座位置、クリーンなエクステリアなど、走り以外の部分もなかなか好印象。
リアシートも広々。だけど、なぜ4人乗り?5人家族の我が家では、ファミリーカーとしては使えません。。

個人的には、サーキットでのリミッター解除機能もついて、ブレーキもそのままサーキットに行けそうなスペック、と自分のニーズにぴったりであることも、購入を後押ししました。
驚愕のお値段!
そして、最後。お値段(車両本体価格)が500万円切り。驚きです。このコスパのすごさは日本車の量産車ならでは。もちろんFDの頃までのシビック タイプRからしたら別次元に高い車になってしまいましたが。。
調べれば調べるほど、コンセプトのブレない車だなと思いました。
本田技研が発表している資料しかないので非常に外形的にしかわからないものの、シビックのベース車の良い所はできるだけ残し、安易なホイールの鍛造化やシートの外注(Recaro等)をせず、コストアップにつながるもの(リバースリムなど)も生産技術の工夫で乗り切るなど、製造原価をあげないための「実を取る」方針が随所にみられます。
それでいて、専用設計(ベース車とは別という意味)のフロントサスペンションやトランスミッション、エンジン周り、ステアリング機構など、走りに関する部分はかなり手が入っているようでした。(ただし、ここでもサスペンションなどは既存のラインからそこだけ「外して」製造し、再度通常ラインに合流させるなど、既存のラインを最大限に使うというコンセプトはゆるぎなさそうです※)
※下記を参考にしています。とても面白い記事でした。
新型「ホンダ・シビック タイプR」はこうして生まれる! 埼玉・寄居工場のヒミツに迫る(WebCG)
まとめ
こうしてざっと車を見てみると、注文が殺到する理由が良く分かる気がします。私も(ちょっと迷いましたが)注文してしまいました。
もちろん、もう少しこうだったら、という点はあります。もう少し小さくて軽い車体に高回転まで回るエンジンが付いていたらなぁ、などなど。でも、今の時代ちょっとそれは難しそう。
そう考えると、現在買える5,6百万円の車というレンジではかなり魅力的なのでは?と思いました。
2月には納車されそうなので、楽しみです。
納車されたらフェアレディZ(RZ34)やポルシェ 718ボクスター GTS 4.0との比較もしていきたいと思います。
お楽しみに!
ホンダ シビック タイプR(FL5)、ポルシェ乗りによる納車当日、初ドライブインプレッション
ホンダ シビック タイプR(FL5)、納車後1,000㎞。禁断のべた踏み、不整路。その時クルマは?
【比較】ポルシェ 718ボクスター vs ホンダ シビック タイプR(第1回) 2台の相違点と意外な共通点
【比較】ポルシェ 718ボクスター vs ホンダ シビック タイプR(第2回) ワインディング編:サラブレッドと下町ファイターが対決!












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