販売台数500台の限定車、スバル S210。納車直後のレポートをさせていただきましたが、思ったより反響が多く、みなさまの興味の高さを思い知らされました。
ということでポルシェ 718ボクスターのブログではありますが、2週続きでS210の納車後レポートをお届けいたします。
納車直後の週末は、街乗りと首都高数㎞しか走れず、印象もその時のものしか書けませんでした。その後次の週末に伊豆の入り口まで行くことができましたので、その時の様子をお伝えしたいと思います。
初めてのワインディングは濃霧の中
文字通り、何も見えない
夜遅く、箱根新道に入りました。すると、いやな予感が。頂上付近はめちゃくちゃ濃い霧!
このまま国道1号を三島方面へ進むことも考えましたが、そうなると目的地まで1時間余計にかかるので、避けたい。交差点がどこかもわからない中、いったん止まって道の位置を確認し、静岡県道20号熱海箱根峠線へ。
うっ。久しぶりに経験する「全く見えない」濃霧。長さが5メートルある白線の先端が見えません。めちゃ怖い。。。
さすがに視界の良いスバル車と言えども、何も見えないとどうしようもありません。
フォグライトとリアフォグの出番、そしてヘッドライト自動制御を試す
早速納車後初のフォグライトとリアフォグを点灯。この辺りの操作系は昔のスバル車と変わらず、すぐにわかります。
ヘッドライトはステアリングの動きに連動して細かく動いているのがわかります。が、同時に低速でもライトが上向きに照射する(※)ことがあるようで、そうなると霧で乱反射して全く見えない。そこで手動でヘッドライトを下向きにします。
※取扱説明書を見ると、30㎞/h以上で自動制御がオンになり、15㎞/h以下になると機能がキャンセルされるようです。
最近の車はヘッドライトが高機能化していて、照射範囲を自動制御する車が増えています。
その作動のさせ方は、安全運転支援機能と同様メーカーごとに微妙に違います。
それもあり、私は納車時にヘッドライト周りの操作系を真っ先に確認するようにしています。
スバルの場合は、ライトのポジションをAUTOにした状態で、ハイビームにする(レバーを前方に倒す)とライトの自動制御がON(スバルの場合はADB(アダプティブドライビングビーム)と呼ぶ)になります。

濃霧ではヘッドライトの照射範囲が上向きになると前が全く見えなくなってしまうので、常時下向き。ただし、ステアリング連動のヘッドランプは滑らかに動いていることが確認できました。私はポルシェ 718にもこの機能をつけていますが、霧がなければ威力は絶大なはず。早く普通の夜に試してみたいものです。
ちなみに、熱海峠まですれ違いは「0台」。
ナビを拡大し、次のコーナーが右なのか左なのかを確認しながら、とにかく間違えて草むらに入らないことを考えて走りました。
まったく車のインプレッションになってませんなぁ。。。
気を取り直してワインディング
翌日は晴れましたので、やっとワインディングを走れました。
シビック タイプR(FL5)とフェアレディZ(RZ34)に乗った後にこの車に乗り換えて走ります。

ちなみに、マグネタイトグレーはご覧の通り、かなり濃い目のグレー。太陽が照っても照らなくてもなかなかきれいな色合いです。
シートポジションは高め、そして視界が良い
シートポジションは、先の2台に比べて高めです。私はシートを一番低い位置にしていますが、それでも高め。


一方、スバルの場合は水平対向エンジンでフロントが平べったいため、フロントウィンドウの下端が低め。それもありダッシュボードも比較的高さがありません。
そのため、先の2台に比べると、ややステアリングを「見下ろす」ようなポジションになります(極端に言えば、の話です)。
個人的には、スバル独特のポジションだなと思っています。
そして、視界が良い。以前にもレビューしましたが、この車はドアミラー付近のショルダーラインが下にえぐられていて、斜め前方視界がとても良い。


まずは、この辺りでスバルらしさを感じながら、よっしゃ!と気合を入れて発進します。
足回りはこの車の最大の美点!
と言いたいところですが、いい意味で気合は空回り。コンフォートモードだと、とにかく乗り心地が良い。

納車初日のインプレッションにも書きましたが、この足回り、最高です。
昔でいうと「足のいいやつ(トヨタカリーナ)」。←残念ながら私はこのCMを生では見ていません。
スポーツモデルらしく、コンフォートであってもある程度の硬さとダンピングはあります。
が、荒れた路面でも、まるで路面を舐めるかのように長い脚を伸ばしながらコトン、コトンと一発で収束させていきます。一度サスペンションで受け止めつついなし、上屋にはできるだけ衝撃を伝えてこない。ボディに衝撃が来ても堅固ながらもしなやかなボディが衝撃をその場で抑え込んでしまうかのようで、フロア全体に振動が伝わらない。
スバルがニュルブルクリンク北コースで耐久レースに参戦している、ということはこういうことなのかもしれません。私はこのコースはゲームでしか走ったことはないですが、あまり固めた足だと車が跳ねてしまい不安定になってしまいそうですし、運転しているほうも疲弊しそう(ジャンプスポットもありますし)。S210の足回りは、こういったコースでいかに安定して、かつ安楽に走れるか、というところから導き出されたセッティングなのかもしれません。
芯はあるのにものすごくしなやか。
ものすごい腰のある讃岐うどんみたいです。
上屋が揺れないので目線の移動も少なく、スポーツカーでは必ずしも誉め言葉ではない「快適」という言葉が真っ先に浮かんでしまいます。
ほかの車と比べてみる
私が持っている、ほかの車と比べてみます。
シビック タイプR(FL5)は、路面に「しがみつく」感じ。路面から絶対に離されまいとするので、突き上げの後路面の凹んだところにもすぐに「ベタっ」と張り付きに行きます。そのため路面の凹凸は、「ほぼそのまんま」体にくる感じ。体調の良いときに乗りたい車です。

フェアレディZは、おもてなし感が強い。突き上げに対していなそうとしてくれますが、荒れがひどい路面だと上屋が少し煽られます(伸びの減衰を弱めて乗り心地を取りに行っているため、うねりがひどいと車が「飛ばされる」感覚がある)。そしてフロアも若干ブルブル震えて頼りない感じ。

S210は、この2台のどちらとも違います。ちょっと近いのはポルシェ 718ボクスター GTS 4.0。
ポルシェ 718ボクスター GTS 4.0はシビック タイプRよりも、もう少し突き上げに対しては「受け流す」感じ(縮みの減衰を少し弱く、伸び側できちんと路面をつかみに行く)。とはいえ、やはり路面から離されまいとするので上屋は路面の荒れをなぞっていく感じはあります。

さらに近いと感じられるのは、メルセデス・ベンツ W126。まったく違う車でありながら、考え方に近いものがありそう。

以前にも紹介した動画の通り、W126はホントに足が良く動く。縮み側を弱くして路面からの衝撃を吸収しつつ、伸び側の減衰を上げてしっかりと路面に張り付く感じです。いわゆる猫足セッティング。
1978年プリプロダクションメルセデスSクラスw 126 – テストと証明(Old Mercedes TV。1:24頃からサスペンションの紹介になります)
W126はサルーンなので当然S210とはバネの硬さもダンパーの減衰力も違うのですが(ついでに言えば40年以上前に設計された車)、これを全体に硬くしたらS210になるんじゃないかと思うくらい、乗った感じサスペンションの豊かなストローク量と路面への吸い付き方の方向性が似ている気がします。
まぁとにかく、S210はスポーツカーなのに恐ろしく乗り心地が良く、しかも路面に吸いつくような感じがあり安定しています。
※そういえばシビック タイプR(FL5)のニュルブルクリンク北コースでの車載動画を見た時に、車が派手に動いていてドライバーが「格闘」している感じが伝わってきました。それに対して718ケイマンGT4RSは「楽そう」だったのが印象的。シビック タイプRの方が路面の良いサーキット向けの足をしているように思いました。たとえば下記の動画でFlugplatzというコーナーを抜けるとき(FL5の動画だと1:00頃)のドライバーのヘルメットの動きを比べてみてください。もちろん、足回りだけではないと思いますけど。
【シビック TYPE R】CIVIC TYPE Rニュルブルクリンクアタック 走行テスト 車載動画
On board the new Porsche 718 Cayman GT4 RS at the Nürburgring
まだ良く味わえていないフレキシブルパフォーマンスホイールの効果
今回のドライブでは、最大の横Gが体感で0.6G程度(S210にはGメーターなどがついていないので、手掛かりは自分の体感のみです)。それほどコーナリングでいろいろなバリエーションを試せていません。そのため、フレキシブルパフォーマンスホイール単体の効果というのは実感できていません。
STI新パーツ!「フレキシブルパフォーマンスホイール」の仕組みと効果について!
全体的にいえるのは、かなりフロントヘビーな車(車検証上は前前軸重1,000㎏、後後軸重630㎏で、前後重量配分はなんと61.3:38.7と、FF車のシビック タイプR(62.2:37.8)とほぼ同じです!)ではあるものの、フロントの入りはとても良いこと、内輪に荷重が残り外輪が踏ん張っている感が少ないこと。シビック タイプRと似た感じですが、やはりホイールのたわみが効いているのか、より無理なくフロントが中に入っていく感覚はあります。
(ただ、この車のフレキシブルタワーバーやドロースティフナー、電子制御ダンパーやLSD+トルクベクタリングの制御の入り方などもまだよくわかってないので、これがそうですよ!というところまでわかっていないのが実情です。ベース車のWRX S4と乗り比べればよいのでしょうが、私が借りられる車は電子制御ダンパーのない仕様で、けっこうこの有無って車によってはコーナリングの感触にも影響を与えているので、なかなか難しいところです)


もしかして、それよりも前回お伝えした「微小舵角」の動きがベース車と違っているという話は、このホイールのおかげ?と思ったりもします。
このあたりは、もう少しいろんなコーナリングを試してみたりして「これだ!」という感覚をつかみたいと思っています。(逆に言えば、このホイールの効果が際立っていて動きが不自然だ、ということはないということです)
エンジンについて思うこと
ウルトラスムーズで振動の少ないエンジン
足がとにかくスムーズに良く動くことに感動したところで、エンジンについてもちょっと書きたいと思います。
不要と思いつつも、今のところ慣らし運転モードで、エンジン回転数は4000rpmまで、フルスロットルはかけない、という感じで運転しています。
回転上昇は「ウルトラスムーズ」。電気自動車なのかと思うくらいのスムーズさです。もちろん排気干渉による振動もありません。6気筒かと思うようなスムーズさ。
水平対向エンジンは4気筒であっても、排気干渉がないと本当に振動が少なく感じます。
あまりにスムーズで振動が伝わってこないので、もしかしてエンジンマウントが柔らかいのでは?と思ったのですが、ではコーナリング中にエンジンが動いてしまうのか、というとそういった感覚も皆無。
ということで、やっぱりこの車はエンジンそのものの振動が少ない、と感じるほうが自然だと思います。

シビック タイプR(FL5)に乗ると、エンジンの振動がバリバリに伝わってきます。エンジン単体の振動もそれなりにあります。シングルマスフライホイールを採用したこともあると思いますが、やっぱりマウントも相当硬そう。生き物だわー、という感覚とともに、なんだか昭和時代のようなやる気を感じます。
それからすると、まぁスムーズだこと。

ないものねだりもしたくなる
そうなると、ないものねだりが出てきてしまう自分がいました。
もしEZ30のような水平対向6気筒エンジンが搭載されていたら、もうウルトラプレミアムなスポーツカーになっていそう、なんて妄想が。。。

エンジンが2.4Lになったことで、ターボがトルクを「絞り出す」感覚がなく、ズドーンとトルクがかかってそのまま上まで「あっ」という間に回ってしまう。そういう意味では6気筒エンジンに近い感覚。そして先ほどの振動のなさ。すべてがスムーズ。
それであれば、あの6気筒の「音」があったら!なんて思ってしまう自分がいました。
もちろん、さらに高望みすれば、AWDという駆動方式とこのシャシーの余裕からすると、エンジンがもうちょっとパワフルであっても車のバランスはまったく悪くならないと思います。でももうこればっかりは仕方ありません。。。

おまけ:恒例のパワー比較
当ブログではおなじみの、各車速でのパワーの比較もしておきます。
いつもの通り、1速で車を引っ張るというのは公道ではあまりやらないという前提で1速は使わないルールとしています。また、車重を考慮して、今回は全車車重1,500㎏だったと仮定してパワーを補正しています。
まずはS210を、WRX S4 STI Sportと、レガシィS401と比べてみます。
| 車速(㎞/h) | S210 | WRX S4 | S401 | |||
| 40 | 144 | 2速 | 146 | 2速 | 132 | 2速 |
| 50 | 180 | ↓ | 182 | ↓ | 180 | ↓ |
| 60 | 216 | ↓ | 219 | ↓ | 229 | ↓ |
| 70 | 252 | ↓ | 246 | ↓ | 267 | ↓ |
| 80 | 272 | ↓ | 254 | ↓ | 287 | ↓ |
| 90 | 233 | 3速 | 236 | 3速 | 288 | ↓ |
| 100 | 259 | ↓ | 249 | ↓ | 276 | 3速 |
| 110 | 273 | ↓ | 255 | ↓ | 289 | ↓ |
| 120 | 237 | 4速 | 240 | 4速 | 287 | ↓ |
| 車重(kg) | 1,630 | 1,610 | 1,500 |
個人的に興味深いのはベース車との比較。S210の方が車重が20㎏重くなっている分、4800rpmまではベース車の方が速い。高回転になるとS210の方がパワーが出てきます。これはベース車のピークトルク(375Nm)発生回転数が2,000-4,800rpmだったのに対し、S210は2,000rpm-5,600rpmになったからです。
S401に対しては、50㎞/hまではS210の方が速いものの、その後置いて行かれ、S210の方が速く3速へのシフトアップを迎えるためそこで差がついてしまう、そんな感じです。
次に、シビック タイプR(FL5)とポルシェ ボクスター GTS 4.0との比較。
| 車速(㎞/h) | S210 | シビック タイプR | 718GTS4.0 | |||
| 40 | 144 | 2速 | 169 | 2速 | 126 | 2速 |
| 50 | 180 | ↓ | 211 | ↓ | 168 | ↓ |
| 60 | 216 | ↓ | 252 | ↓ | 208 | ↓ |
| 70 | 252 | ↓ | 282 | ↓ | 255 | ↓ |
| 80 | 272 | ↓ | 308 | ↓ | 310 | ↓ |
| 90 | 233 | 3速 | 332 | ↓ | 355 | ↓ |
| 100 | 259 | ↓ | 338 | ↓ | 388 | ↓ |
| 110 | 273 | ↓ | 307 | 3速 | 408 | ↓ |
| 120 | 237 | 4速 | 324 | ↓ | 401 | ↓ |
| 車重(kg) | 1,630 | 1,430 | 1,470 | |||
シビック タイプRはS210よりも車重が200㎏も軽いため、トラクションがかかってしまえばS210とは比べ物にならないくらい速いです。S210は、ギア比の設定もあり時速80㎞/hまではタイプRの1割減くらいで頑張っているものの、3速にシフトアップするタイミングでガクンとパワーが落ちて置いて行かれる。
S210は高回転側が伸びるようにチューニングした関係でピークパワーがレブリミット近くにあり(ピークパワーは5,700rpmで発生。レブリミットは6,000rpm)、シフトアップした時にガクンとパワーが落ちる傾向があります(2速と3速のギア比の変化はタイプRもS210もほとんど同じ)。
718ボクスター GTS 4.0に対しては健闘。時速70㎞/h弱まではS210の方が速い。その後抜かれて、S210が2回変速して4速に入れた時に、718は2速のまま引っ張っていきます。120㎞/h時の最高出力は718がS210の約1.7倍!
このように718とはギア比の設定や出力特性が全く違うのでした。

トランスミッションについて思うこと
変速の速さとタイミングはとても良くなった

トランスミッション(スバル・パフォーマンス・トランスミッションというCVT)は、ベース車に比べて特にシフトダウンのタイミングが良くなりました。ちょっと「出方を待って」遅れてシフトダウンするのではなく、ブレーキを踏んだら躊躇なくギア段を下げてくれます。その際の空走感もほとんどなくなったといってよいと思います。
シフトアップは、先ほどの「フルスロットルはしない」という今の段階ではあまりわかりませんが、おそらくフルスロットルで加速する際にはむやみやたらにシフトアップはしないのではないかと思います。
そういった感じで、変速スピードやタイミングに関しては、「すごく良い」と感じます。
個人的には納得のフィーリング
一方で、シフトアップした時にプーリーが動いて次のギアに固定するときのウィーンという音(だと思う)は、フィーリングとしては「ちょっと残念」な感じ。DCT(デュアルクラッチトランスミッション)のように、いったん動力が物理的に切れてスパッと次のギアが組み合わされる時のような快感は残念ながらありません。
ということで、やはり一部にCVT的なフィーリングは残るわけですが、個人的には前回書いたステアリングフィールとこの足回り、スムーズな回転のエンジン、ウルトラ速くて賢くなった変速を考えたら、もうそれ以上は別にいいかな、MT乗りたきゃシビック タイプRの超絶良いフィーリングのMTもあるんだし、というような気分になりました。
逆に、この「動力が途切れない」感じも、この車のスムーズな動きに合っていてむしろ現代的でポジティブ、と思い直すようにしています。
まとめ

これがWRXをベースとしたSシリーズでいいのか?という声はきっとあると思うのですが、1台の車としてみれば、とても「まっとう」だと思いました。
べつにこの「楽」な乗り味はゴージャスさを狙ったわけではなく、あくまでも道路状態の悪いリアルワールドでの安定した走りを追求した結果。
逆に、走りの良い車は運転するのが楽だということがとてもよくわかります。
素直に、車ってやっぱり進歩しているんだと感心する1台でした。
もともとスバルは、素直な運転感覚をとことんまで磨いていくような車づくりをするメーカーだと感じます。水平対向エンジンとAWDというアイコンがあるため「個性的」と捉えられるメーカーですが、本質的には上記のような車づくりなので、基本スタンスは「本質を極めて直球勝負」だと感じます。
そういう意味では「わりと地味」。
でも、前回も書いたように車の細部の作りこみを見るとほんとに良い。
じわりじわりと愛着が湧いてくるタイプの車。これこそがスバル沼。
全く予定外の車ではあったのですが、この車を手放す理由が見当たらない。ということでこの車も免許返納まで乗る候補になってしまいました。











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