ポルシェ718ボクスター GTS 4.0の納車から、早いもので2年経ちました。街乗りから、高速道路、ワインディング、林道、サーキットまで、だいたい走れそうなところは走ってきました(本格的なオフロードは無理ですけど。。)。
思えば、前車ポルシェ 718ボクスター(ベースグレード)に乗り始めたのが2017年7月ですから足掛け7年。
もう体の一部のようになってしまった(!?)718ボクスター、主にベースグレード(水平対向4気筒)とGTS 4.0(水平対向6気筒)の違いにフォーカスを当てながら、この車の魅力をお伝えしたいと思います。
718ボクスター GTS 4.0についての全般的な魅力紹介はこちらをご覧ください。
718ボクスター GTS 4.0、納車1年後のレビューはこちらからどうぞ(5回シリーズ!)
(じつはこれが「アミオの愉快なる車生活」100本目の記事(資料含む)なのでした。ぱちぱち!)
比較に登場する2台
まずは、現在乗っている718ボクスター GTS 4.0。水平対向6気筒自然吸気(NA)エンジンを積んだモデルです。2022年7月から乗っています。

次は、718ボクスター。水平対向4気筒ターボエンジンを積んだモデルです。2017年7月から2022年6月まで乗っていました。

街乗りの718ボクスター GTS 4.0 vs 718ボクスター
走行シーン別の乗り味比較、最初は一番楽しくなさそうな街乗りから行ってみましょう。
718ボクスター GTS 4.0の街乗り

まずは乗り心地。
乗り心地は20インチを履いているスポーツカーということを考えればよいと思いますが(うまく足がプルプルといなしているのは感じ取れる)、それでもいかんせん20インチ、扁平率35%のためエアボリュームがなく、サスペンションのストロークも短いためそれなりに揺すられます。同乗者がいる場合にはやっぱり気を遣うレベルです。

そして、水平対向6気筒NAエンジン。ポルシェの水平対向6気筒エンジンは、加速時はなかなかいい音を奏でるものの、巡航時の低回転域は割とざらざらした音で、個人的には正直なところすごく好き、というわけではありません(とはいえ、好きか嫌いかと聞かれれば「好き」と答えますけど)。
街乗りではめったに2,000rpmを上回ることがないため、ずっとこの音を聞きながら走ることになります。
NAエンジンの良さであるレスポンスの良さも、信号スタートダッシュのようなことをしない私には感じることができません。
ギアはPDKの場合、40㎞/hで5速、55㎞/hくらいでトップギアの7速に入ります。かなり回転を抑えて燃費を稼ぎに行っているようです。

燃費もあまり良くない。街乗りだけしていると6~7㎞/lくらい。
それでも、自分のすぐ後ろからエンジンの音がすること、着座姿勢が低いことから、普通の乗用車のスペシャルグレード、というのとは全く別の立ち位置の車であることは感じ取れます。
718ボクスターの街乗り
街乗りだと、718ボクスターは絶妙のバランスの車だと感じます。

スポーツカーとは思えないような乗り心地の良さ(18インチ、電子制御ダンパー付の場合)とジャストサイズ(横幅1800㎜)、視界の良さと相まって、シティコミューターとしてもありでは?と思わせるくらいです(実際に通勤に使ってました)。

エンジンは水平対向4気筒。不等長エギゾーストのため排気干渉があり、かなり個性的な音。好き嫌いはあるようですが、昔のスバルを思わせながらも、どちらかというと空冷4気筒(ポルシェ356や912)を彷彿とさせるサウンド。個人的にはハスキーヴォイスのブルースシンガーをイメージします。
やはり2,000rpmくらいまでしか回ってませんが(ギヤ比は7速を除いてGTS 4.0と全く同じ)、この回転域のサウンドは独特の「ボロボロ」という音がして、好きな人にはけっこうたまらない音だと思います。
それでいてちょっと加速しなきゃというケースでも2,000rpmからぐわっとターボ加給による加速が味わえるので、ちょっと楽しい。
ギアはPDKの場合7速が超ハイギヤードのため、7速に入るのは70㎞/hくらいから。通常は3速30㎞/h、4速40㎞/h、5速50㎞/h、6速60㎞/h、という感じで10㎞/h刻みでギアが上がるようなイメージ。NAエンジンよりは少し高回転を使う設定のようです。
燃費もGTS 4.0より最大2割良い感じ。
街乗り:718ボクスターの方が楽しい!
ということで、街乗りは、個人的には718ボクスターの方が楽しいと感じます。

何より乗り心地と燃費が良いこと、乗用域の音が個人的に好み、また低回転域からの加速感にパンチがある、などがポイントです。
高速道路の718ボクスター GTS 4.0 vs 718ボクスター
それでは高速道路ではどうでしょうか?
718ボクスター、全グレードに共通の高速道路の乗り味
まずは細かい差異について触れる前に、718ボクスター全グレードに共通する高速道路での乗り味について触れておきましょう。
高速(100㎞/h)での直進安定性については、思いのほか良いです。今どき2,475㎜のホイールベースはなかなか短い方だと思いますし、しかもリア駆動。トレッドだっていまどきの車にしてはそれほど広くありません。高速走行については、不利な条件が揃っています。
それでも高速になればなるほど路面にへばりつくような感覚があるのは、足回りのセッティングが高速走行に最適化されていることと(サスペンションのバネレートやダンパーの特に低周波数側の減衰力が高め。もちろん、そもそもダンパーの性能が良いというのもありそうです)、空気の流れがうまく処理されているからだと思います(981型で揚力係数は前0.08、後0.06、合計0.14)。

ポルシェ特有のセンター付近のステアリングレシオがあまりクイックでない特性も相まって、ストレスなく高速道路を走れます。(バリアブルギアレシオ。センター付近はGTS 4.0で15.0:1、ベースグレードで15.02:1になっています。)
100㎞/hでの風切り音などのノイズも少なく(ドアミラーの形状を見ても昔から空力への配慮がちゃんとされていることがわかる)、やはりポルシェは高速域をメインターゲットに作られた車だと感じます。

718ボクスター GTS 4.0の高速道路
ここからはそれぞれの特徴。
高速道路でも、水平対向6気筒エンジンの回転数は抑えめ。PDKだと100㎞/h時の回転数は1,960rpm。
エンジン音はやはり「ブーン」というちょっと扇風機のような音がしていて、それほど風情がありません。たまに気筒休止で片側バンクが止まるので(つまり、3気筒で走る。20秒ごとにバンクを切り替えて作動させている)、「ああ、エコだなぁ」とちょっと自己満足に浸れますが、その程度といえばその程度。ポルシェの6気筒ってすごい(音が)いいんでしょ?と期待して乗られたら、「なーんだ」って思う人が大半かもしれません。
718ボクスターの高速道路
こちらは7速PDKの場合、前述の通り7速のみギア比がさらにハイギヤードになっており(GTS 4.0は0.71、ベースグレードは0.62)、100㎞/h時の回転数は1,710rpmとかなり低い。
こちらは気筒休止機構がないものの、コースティング(クラッチが切れてエンジンとトランスミッションが切り離され、回転数がアイドリングまで下がること)を多用するため、より静か。エンジンが回っていても例のビートのあるサウンドが聞こえてくるので、こちらの方が個人的には好きです。
高速道路:互角!


ということで、音を除けば718ボクスター GTS 4.0もベースグレードも差異はなく、どちらも「けっこう優秀」なハイウェイクルーザーだということが言えると思います。
ちなみに、100km/hで走っている限り、走行安定性についてはGTS 4.0とベースグレードでほとんど区別がつかないと思います。細かい空力の違いは200㎞/h超くらいをターゲットに作り分けているように思います。
ワインディングの718ボクスター GTS 4.0 vs 718ボクスター
さあ、やってきました。718ボクスターに乗ったら一番楽しいのはこのシチュエーション。
718ボクスター、全グレードに共通のワインディングの乗り味
ここでも、最初は全グレードに共通する乗り味について触れておきたいと思います。
この身のこなしの軽さはミッドシップならでは
どちらのグレードでも共通なのが、身のこなしの軽さ。エンジンが前にないことはこんなにも違うのか、と感じさせられます。ちょっとハンドルを切った時に何の演出もなくノーズが入っていくのは、この駆動方式ならでは。かといって怖いわけではなく。無理に曲げている感がまったくありません。
ミッドシップの車に初めて試乗される方には、まずレーンチェンジしてみてほしいと思います。異次元です。
もちろん、ただミッドシップだから自動的にこの乗り味が生まれるわけではありません。
下記のような工夫もあって、リアが安定した動きを獲得しているようです。
- 重心の水平対向エンジンを縦置きにすることで回転モーメントを減らしている
- オイル潤滑をセミドライサンプ式にすることで重心を低くしている(オイルパンはあるものの、ポンプによる回収前に一時的にオイルを入れておくだけなので、薄さは普通のオイルパンの半分以下から1/3くらいらしいです)
- ストラット式サスペンションのジオメトリー設計を工夫してロールセンターを重心に近づけている(ことでロール量自体が減る)
また、ホイールベースが短くトレッドがある程度広いことから、どちらかというと「曲がる」ことに重きを置いたパッケージングになっています。


その2つが合わさって、かなり気持ちの良い曲がり方をします。
数値を見ると、ホイールベース2,475㎜でトレッド幅は前1,525㎜、後1,535㎜。前輪トレッドで割り算すると1.62。
一般に値が高い車は直進安定性重視、値が低い車は回頭性重視と言われています。
ちなみに、他の車はどうかというとこんな感じ(グレードも適当に選んでいるので全般かなり適当です)。。
| シビックタイプR(FL5) | 1.68 |
| WRX STI(VAB) | 1.73 |
| フェアレディZ(RZ34) | 1.63 |
| GT-R | 1.75 |
| レクサス RC | 1.76 |
| GRスープラ | 1.55 |
| GRヤリス | 1.67 |
| BRZ / GR86 | 1.69 |
| クラウンセダン(参考) | 1.85 |
シフト制御も唖然とするほど
もう一つ触れなくてはならないのはシフト制御です。これはPDK限定の話ではありますが。ポルシェをMTで乗る、というのはとても贅沢ではありますが、私は敢えて2台続けてPDKを選んでます。
このトランスミッション、もうただただすごいとしか言えません。シフトダウンの制御もめちゃくちゃ秀逸で、サーキットだと(私のような素人は)全部オートマで走ったほうが速いくらい。カーブ手前でブレーキをちょっと強く踏むとすかさずシフトダウンしてくれます。その時の制御がめちゃ速くて正確。
もちろん自分でパドルを操作することもできます(パドルもしっかり長さと質量があり、かなりいい味しています)。

いわゆるデュアルクラッチのMTなので物理的に変速しているわけですが、スポーツ+(プラス)にするとほぼ半クラッチがない状態で次の段をバスっとつなげるので、ローンチコントロールを使ってロケットスタートするなど、車の性能をフルに生かすような状況では、かなりシフトショックもあります。ギミックなんて全くありません。覚悟してね!って車から言われている感じ。その代わり変速は100ミリ秒(0.1秒)を切るくらいらしい。

もちろん、ノーマルモードではもっとゆっくりつなぎに行くので、シフトショックは感じられません。
このあたりの機械的な感触と、バーチャルかと思うような変速スピードが相まって、何とも言えない世界観が味わえます。
718ボクスター GTS 4.0のワインディング
ここからはグレードごとの違いを見ていきましょう。
エンジンレスポンスが最高、そして音も良い

水平対向6気筒自然吸気エンジンは何といってもレスポンスがいいのが気持ち良い。そして回転上昇をしてもまったく振動を感じないような滑らかな回転フィールも、まさに「完全バランス」の水平対向6気筒らしくとても気持ち良いです。
騒音規制で1,500-4,000rpmあたりはほぼバルブが閉じているものの、回転上昇と共にウォーンと吠えるような音もわずかに残っています。これは気持ち良いです。
足回りも、ただただ速い
もう一つは、足回り。
20インチは伊達ではなく、もちろん限界の50%くらいしか使っていないにしても(だいたい0.6Gくらい)この安心感は絶大。
さらに、機械式LSDによってコーナーリングは安定しています。ブレーキング・アクセルオフで後ろ荷重が「抜け気味」になって左右輪のトルク差が発生すると、LSDはそれを解消する方向に作動するため、「リアが安定=どっしり」しているように感じられます。さらにコーナーからの脱出時のアクセル操作では、LSDがロック方向に働くことで外輪にしっかりトルクが配分されるため、「リアが確実に蹴りだしてくれる」感覚があります。
そしてトルクベクタリング。内輪をブレーキで「つまんで」上げることで曲がりやすくする、現代の車に多く見られる制御ですが、やはりこれをやると車が外に持っていかれる感じがなくなり安心感につながります。もちろん制御が入っていることはわからないくらい自然です。
味があるかどうかというと若干疑問はあるものの、GTS 4.0は「速く」走れることに重きを置いていることは感じ取れます。

「痒い」ところもある
一方でパワーバンドを外れると速度が乗らないのもNAエンジンらしいところ。ヘアピンカーブからの立ち上がりなどでは、「遅いかも」と感じなくもない。なのでやや中速~高速の道の方が気持ち良いのも確か。ヘアピンの連続する道ではうまくつながりをイメージして走らないと面白くありません。

あと、本当はこのエンジンの本領発揮は6,000rpmから上なのですが、ワインディングでは試せないのが残念なところ(2速、6,000rpmでの車速はPDKで95km/hほど)。
車重も装備によるもののおおむね80kgくらい、ベースグレードよりも重くなっています(PDKモデルで1,470kg前後)。この差は体感的にはけっこうあり、NAエンジンでトルクの上がり方が緩やかということも手伝って軽快感はあまりありません。
全体的に、軽く汗流してくるわ、というよりはがっつりスポーツしてきます、というちょっと体育会系のノリは強まっていると思います。
718ボクスターのワインディング
ターボらしい刺激で低速域でも楽しめる

ターボの良いところは、低回転域から加給によって太いトルクが出るところ。体感的には「かなり速い」と感じられます。それこそ時速40㎞/hからの加速でもかなり爽快な気分になれます。日本のように低速域がほとんどのところだと、このあたりの速度域でのパンチ力はかなり魅力的です。
音も前述のようにパンチの効いた音。
中回転域もバイクみたいで気持ちいいぞ
4000rpmくらいになると音の粒がそろってきて、バイクのようにビューンと回っていきます。水平対向4気筒エンジンならではのドラマチックな回転感だなと思います。
で、高回転域はどうなの、となるのですが、ワインディングでその回転域まではいかないのです。残念。
速さよりも味わいの足回り
足回りは、オプションにより、なのですが、18インチのオープンデフ(LSDなし)モデルに限っていうと、プリミティブでこれはこれで楽しい。
まず18インチタイヤなので、速いは速いもののやはり繊細。ちゃんと様子を探りながらのハンドル操作になります。
そして大きな違いはLSDとトルクベクタリングの有無。この機能がないと、718のミッドシップらしい車の素の特性が直接的に現れます。普通の車はコーナーリング時(特に侵入時)に外に引っ張られる力をかなり感じるわけですが、718は、その力を少しは感じつつもあっけなくスッと曲がっていきます。こんなところに慣性モーメントの少ないミッドシップらしさを感じることができます。
また、GTS 4.0と比べると、LSDがないことでアクセルを緩めたりブレーキングする際には、(先ほど書いた通り車が左右トルクの差を「そのまま」放置するため)若干リアの粘りがない感じがします。逆に言えばひらりと姿勢を変えていく軽快感を感じます。さらにトラクションをかけてコーナーを脱出する際にも、GTS 4.0に比べると、少しは気をつけないといけません。
車の素の動きが出てくるため、安心感とは引き換えに、操る楽しみはこちらの方があるかもしれません。

GTS 4.0はLSD・トルクベクタリングと20インチタイヤで、無理やりでも車を曲げてやる、って感じがありますが、LSD・トルクベクタリングなしの18インチタイヤだと、ブレーキのタイミング・強さによる加重移動とハンドルを切り始めるタイミングと量が下手くそだと、「お前下手くそだなぁ」と車から怒られる感じがします(それでも、日本のワインディングの速度域では誰がどんな運転をしてもうまく曲がってくれてしまいますが。。。)
そういう意味で、車をちゃんと曲がりやすい状況にもっていこう、と繊細に運転を心がけようという気持ちになるのがベースグレードでした。
また、車重が軽いことやLSDがないこともあり、ちょっとしたひらひら感も残っていて、そういう意味で「味わい深い」ワインディングが楽しめます。
水平対向4気筒では味わえない世界は?
ここまで見てきたように、日本のワインディングでは水平対向4気筒は、すべてにちょうど良くできている気がしています。
それでも味わえないものは、水平対向6気筒エンジンのレスポンスの良さと回転上昇の滑らかさでしょうか。
・・・でも(6気筒も)美味しい速度域を味わう前に「ハイ終わり―」と言われてしまうのですけどね。
ワインディング:気分による!
ワインディングは、どちらも違った良さがあって一概に言えない、というのが正直なところ。
718ボクスター GTS 4.0はエンジンのレスポンス、滑らかな回転上昇と音、20インチタイヤとLSD&トルクベクタリングによる「速い」コーナーリングがポイント。
718ボクスターは軽快感とターボの加速感と空冷ポルシェのような音、18インチとLSD&トルクベクタリングがないことによる「素の楽しさ」がポイント。
どちらにも魅力があり、どちら、と決められないのが正直なところです。


林道の718ボクスター GTS 4.0 vs 718ボクスター
おいおい、そんなところいくなよ、、、と言われそうですが、ドライブしているとどうしても行きたくなるもの。そんなとき、車は応えてくれるのでしょうか?
718ボクスター GTS 4.0の林道
私の718ボクスター GTS 4.0には車高を10㎜上げるオプション(車高を元に戻すオプション)をつけています。車高が下がることによって行動範囲が狭くなるのはイヤだったからです。
でも、実際同じ場所に行ってみると、以前718ボクスターでは走れていたところがGTS 4.0だと走れない(お腹を擦ってしまう)ことがありました。
どうも見てみるとリップスポイラーの有無ではないかなと思います。フロントが擦りやすくなりました。ということで、GTS 4.0になって、今まで2か所行きたくてもいけない場所ができてしまいました。


718ボクスターの林道
とはいえ、元の718ボクスターもPASMをつけていた関係でノーマル仕様よりは10㎜ローダウンされています。街中で歩道から車道に出るところの段差は斜めに出ないと擦ります。林道も、大丈夫かなぁと思ってもアスファルトがうねっているところではお腹を擦ることがあります。
おまけ。砂利道の718ボクスター。
林道:僅差で718ボクスターの勝ち!
ほとんど両車、差はありませんが718ボクスターの方がわずかにお腹を擦りにくいと思います。
それでも、スポーツカーということを考えれば、意外にどんなところでも行けるという印象。たぶんフェラーリに乗ってそういうところは行こうと思わないので、こうした、「行こうとすればなんとかなる」ような実用的なところも718ボクスターの魅力かなと思います。

サーキットの718ボクスター GTS 4.0 vs 718ボクスター
最後はサーキット。じつは718ボクスターではサーキットに行ったことがないので(サーキット走行デビューは718ボクスター GTS 4.0でしたため)、718ボクスター GTS 4.0のレビューのみです。
718ボクスター GTS 4.0のサーキット走行
まずいいところから。
エンジンは本当に気持ち良い!
本当にストレスなく回転上昇していき、7,800rpmのレブリミットまでよどみなく加速していきます。一般道では、6,000rpmから一段と激しさを増す加速は怖いくらいですが、サーキットだとちょうどよい。富士スピードウェイではコーナーでも60㎞/hを下回る場所は1か所しかなく、常にパワーバンドに入っている感じなので低回転域のトルクの細さを感じることもありません。
ヘルメットをしているのでどうしても澄んだ音を聴くのは難しいですが、それでも富士スピードウェイで直線に入った時は「ああいい音!」と思う瞬間があります。
ブレーキも安心感の塊!
もう一つはブレーキ。制動距離はおそらく32m台と、かなり短いと思われます(981型のケイマンSの記録(32.6m)から推測)。減速Gも1.2Gを超えます。水を張った低ミュー路でも0.9Gを超えます(GPSの測定器の値)。
たんに止まりやすいだけでなく、ブレーキを踏んだ時の足裏からくるフィードバックがとても分かりやすいです。
また、ブレーキバランスは前寄りで、しっかり止めることを最優先にしている感じ。ブレーキング時の姿勢変化も少ないのは、私のような初心者にはとても安心感があります。
そしてやっぱりトランスミッションがスゴイ!
おまけの動画を載せておきます。雨の中、完全車任せでシフトしています。
ドライの場合、シフトアップはレブリミット7,800回転をしっかり使い、常時6,000回転以上をキープ。そして減速時もシフトダウン時に7,000回転近くになることもあります。
これが雨になると、アクセルをパーシャルにしているところでは7,000回転もしくはそれ以下でもシフトアップし、巡航時に5,000回転台も使います。ブレーキも思い切り踏んでいないため、シフトダウンも6,000回転以下に収まる範囲を使っています。ただ、4,000回転以上は常時キープしているので、カーブ出口からの加速でもたつくこともありません。
(小さいかもしれませんがタコメーターに注目してみてください)
動きが穏やか!
ハンドルを切った時のノーズの入り方も神経質なところがなく、むしろ少しおっとりしてくれているような感じ。気難しいところがないので、初心者でも安心して走らせられるのは良いです。車からのインフォメーションも多く、車の動きがつかみやすい。
こうしたところを見ると、やっぱりどんな人でも気軽にスポーツ走行を楽しめるように作られていると感じます。そういうので物足りなければGT4やGT4 RSもご用意しています、というスタンスなんだと思います。
また、20インチとLSD&トルクベクタリングの組み合わせも、やはりコーナーリング時の安心感につながっていると感じます。もちろん限界まで走らせると、動きがピーキーになるのかもしれませんが、その手前だと走らせるのに本当に何のコツもいらない感じです。
・・・続いては、ちょっと、と思うところ。
超ハイスピードではもう少しダウンフォースが欲しいかも
富士スピードウェイのストレートを200㎞/hくらいまでで抑えて走っていた時は気づかなかったのですが、一つ上の速度制限無制限のクラスで走ってみたところ、230㎞/hくらいからやや車の揺れが大きくなり、そこからのブレーキング時に少し車が動いたことがあったことは、以前報告しました。このように、超高速域に入ると、もう少し上から風で車を押し付けてくれたらなぁ、と思いました。
やはり、それもあって718ケイマン GT4やGT4 RSがあるのだと納得。
そういう意味で、GTS 4.0は、街乗りもこなしながらサーキットも目を吊り上げない程度であれば(といってもあれだけ直線の長いサーキットはほかにあまりないんだと思います)何の改造・強化もなしに走れてしまうオールマイティな車、というところを狙っているのだと感じます。
サーキット走行:718GTS 4.0がいい!(たぶん)
やはりこのエンジンの気持ち良さはスゴイ。あと、サーキットでは安心感が気持ち良さよりも優先されるコーナーリングにおいても、おそらくGTS 4.0の方が安心感があるのではと思います。

一方で目を吊り上げて頑張るのであればGT4やGT4 RSが欲しくなるのも事実でした。私としては、富士スピードウェイのツーリングクラス(一番遅いクラス)でのんびり流すぐらいに走るのが最高かも!と思いました(でも本当はヘルメットなしで楽しみたい!)。そもそもオープンカーですしね!!
おまけ:車両安定制御支援(PSM)
サーキット走行では車両制御の機能をすべてONにしておくように言われます。
実際にこうした車両制御装置がどのように機能しているのか、動画を2本載せておきます。
1本目は車両安定制御。ポルシェでいうとPSM(ポルシェ・スタビリティ・マネジメント)。プロの方がわざと滑らせてくれています。制御はPSMスポーツモードなので最後の方まで介入しませんが、これを切ると車は簡単にスピンします。
もう一つはABS。タイヤがロックしそうになった時にABSが作動して、車が揺れているのがわかります。こうなった場合は踏力を保ったまま機械任せに止まるのが一番です。動画だと平穏そうに見えますが、実際に運転しているとタイヤがグリップしていないのがわかるのでオーバーランするんじゃないかとけっこう不安でした。笑
こうして体験すると、車両制御技術の進歩はすごいなぁと実感させられます。
まとめ
シーン別に、718ボクスター GTS 4.0と718ボクスター(ベースグレード)の違いを書いてきました。
ポイントだけ見れば、718ボクスターの2勝1敗2引き分けと、718ボクスターが勝ちをおさめました。

じつは個人的にはどっちがいいかなんてどうでもよいのですが、言っておきたかったのは「4気筒、かなりいいですよ!」ということ。出た当時から4気筒はけっこうネガティブなことがいわれていたのですが、先入観で車を見ないように心がけている私としては「乗ってみなきゃ損です!」といいたい。
とはいえ、ここまでやってきて言うのもなんですが、車なんて好きなものを乗ればいいのです!人によっては6気筒エンジンじゃなきゃヤダ、と思うでしょうし、4気筒の音が大好きでたまらないという人もいるでしょう。トルクベクタリングとLSD(リアスリップデフ)がなきゃヤダという人もいるでしょうし、そんなのない方が楽しい、という人もいると思います。
ポルシェはそういった顧客層に対してきちんと車を作り分けているので、本当に好きなグレードに乗ればよいと思います。オプションでほとんどのものはつけられるのでなおさらです。
やっぱりポルシェはグレードごとに美味しいところを作り込んでくるなぁと感じます。結局、どのグレードに乗ってもやっぱりいいなと思いますし、用途によっては他のグレードも欲しくなってしまう。
食わず嫌いだったポルシェに乗り始めて7年(とはいえ、911には乗っていない。笑)、今では手放せない存在になりました。「これからも長いことよろしくね」と3年目に入った相棒に声をかけたい気分になりました(マンションの駐車場で声をかけていたらヤバい人なのでしませんが。。)











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