いつかは買いたいと思っていながらまだ踏み切れていない車、スズキ ジムニー(JB64)。三井のカーシェアーズで半日借りることができました。(そもそも入った理由のひとつがこの車に乗ってみたかったから、です)
クロカン未経験者が乗ってみてどうだったか、感想をお届けします。ジムニーに関する知識はほぼ皆無なので、その点ご承知おきください。
スズキ ジムニー XL(JB64)で横浜の街を走り出す
なにもかも新鮮な車!
最近は街中でもよく見る車ですが、改めて見てみても、街中だとちょっと場違いな車だと感じます(街乗りしている人、すみません)。
よじ登るように乗り降りするところもそう。逆に、特別な車に乗っている感は、着座位置やAピラーの立ち方、大きなバックミラーからも漂ってきます。

おお、副変速機のトランスファーレバーがあるぞ(知ってるけど一応驚いてみる)。

大きなスイッチ類をみても、ヘビーデューティーな車だということがすぐわかります。
窓の開け閉めはセンタークラスターにあるスイッチで行います。いろんなものが「普通」でないため最初は戸惑いますが、それも予想していたことなので、あのスイッチはどこかなー、と探したりするのも楽しい。



ウィンカーのクリック音もすごく明瞭で頼もしい(もしかしたらスズキ車共通かもしれないけど)。
いちいちいろんなところに感心しながら興味津々で走り出します。
わ、リサーキュレーティングボール式だ!
街を走り出すと、私にとっては予想通りな乗り味。
それもそう、すぐに感じるのはリサーキュレーティングボール式(ボール・ナット式ともいう)のステアリング機構。私が乗っているメルセデス・ベンツ W126(1989年製)の機構がそれなので、なじみがあるのです。やっぱり似た感じなのでにんまり。
現代の乗用車はほとんどラックアンドピニオン式のステアリング機構を採用していますが、ジムニーは今でもリサーキュレーティングボール式を使っています。

概要は下記の記事をみていただければと思います。
【くるま問答・昭和編】RB式からラック&ピニオンへ。ステアリング機構の進化の過程を辿る【その16】(Webモーターマガジン)
機構上の特徴はステアリングシャフト(ウォームシャフト)と、実際の操舵機構(セクターギア→タイロッド)とつながっているボールナットの間にベアリングがたくさんあること。
これによって得られるメリットは2つ。
1.軽い操舵力で舵を切れること
2.操舵が滑らかでキックバックが少ないこと
1.の特長は、パワーステアリングが普及すると活かされなくなります。
一方、2.の特長は悪路を本拠地とする車にとってはメリットがあります。
デメリットは、
1.機構が複雑なこと
2.操舵にダイレクト感がないこと
このため、パワステが普及するとこの機構はほとんどの乗用車から姿を消した一方、オフローダーを中心に一部の車種に残ることになったようです。
ちなみに、操舵のダイレクト感がどれくらいないかというと、もう笑っちゃうくらいです(後述します)。ラックアンドピニオンの車とは全く比べられない独自の世界があります。
視界も最高!
この着座位置ですから、いうことありません。ちょっとした遊園地のアトラクションにでも乗っているような気分。

もうここまでで、ジムニー乗ってよかったー、楽しい、と思えてきます。
めちゃくちゃテンション上がってます!ってまだほとんど走ってないけど。。
逆にいうと、デザインがカッコいい乗用車だと思って乗ると、普通の車とはけっこう違うのでびっくりするかもしれません。
それぐらい思い切って特定の用途に特化した車という匂いがプンプンしてきます。
のろのろの東名高速道路。できれば避けたいシチュエーション
楽しいなぁと思ったところで東名高速道路へ。これから丹沢方面、ヤビツ峠に向かうので20㎞くらい高速に乗ります。
いつもの通り流れは悪く、時折渋滞しています。
良く走る方はご存知だと思いますが、この道路、横浜町田インターチェンジを超えると厚木に向かって少し下りながら右に湾曲しています。路面には1度から2度くらいのカント(傾斜)が付いています。
このカントのおかげで、普通のスピードで走る時はほぼステアリングを切らずに走れるのですが、車の動きが遅いと、ハンドルを曲がる方向と反対方向に切らないと思った方向に進まないのです。
リサーキュレーティングボール式のステアリング機構の場合、中央を中心に5度くらいずつ、ほぼ不感帯なんじゃないかという領域があり、微小な操舵が大変苦手です。しかもこのジムニーの電動パワーステアリング、不感帯を過ぎるとパワステがかなりの力で中央に戻そうとするため、常に腕にステアリングを戻す力が加わる状況になります。
つまり、道はゆるーく右に曲がっている。ハンドルは少し左に切らないとカントのおかげで右に行き過ぎる。左に切ると5度くらい不感帯なので暖簾に腕押し状態で、非常に気持ちが悪い。そして不感帯を過ぎるあたりで強烈な力でハンドルが右に押し戻される。。。
大げさにいうとこんな感じ。
早く抜けたいよー。と切に思うのでした。筋肉痛になりそう。
100㎞/h高速巡航、これもなぁ
厚木インター近くになると、流れが速くなり、時速100㎞/h以上の流れになります。
うわ、やっぱり遅い。笑
(私は43馬力の1959年の車にも乗っているので、遅い車には慣れていますが。)
新東名の盲腸区間で80㎞/hからの加速を試みた動画を載せておきます。
それよりも疲れを生むのは直進安定性。
ホイールベースも短く、横風を受けると真っすぐ進みにくいので、宇宙人のようなリサーキュレーティングボール式のステアリングと対話しながらあてずっぽうに修正舵を入れまくるかんじ。
毎日これは、疲れるかも。
ただ、風切り音は思いのほか少なく、さすが現代の車だなと感じました。
いずれにしても、用途を割り切った車なので、苦手なシチュエーションは思い切り苦手です。
でも、それでいいのです!(たぶん)
宮ケ瀬ダムへ。なかなか厳しい4速AT
おい、苦手なところばかり走ってないで、という声が聞こえてきそうですが、もう一つだけ。
4速AT。50㎞/h制限の上り坂ではなかなかきつい。2速と3速の間がかなり離れていて(2速1.566、3速1.000)、3速で失速しそうになっても2速にはなかなかキックダウンしません。
これは。。。こういうジムニーが「苦手」なところをたくさん走るのであれば個人的には5速MTに乗りたいかも、と思いました。
って、ここまで素人丸出しの感想。オフロードを走らないでジムニーについて書いているとこういう頓珍漢なことになってしまいます。
ヤビツ峠へ。ここが本拠地!
とっとと山道に行きましょう!といっても借りている車ですし、未舗装路には行きません。
ボコボコ道を乗り越える!何これ最高!
ヤビツ峠に向かう道(神奈川県道70号秦野清川線)は、林道といっても良いくらいの細くてボコボコの道。実際近くを走っている早戸川林道の方が走りやすかったりします。前日の大雨による通行止めが解除された直後だったので、それなりにワイルドでした。
まずにんまりしたのがボコボコの道を乗り越えるときの、絨毯のようなまろやかな感触。
普段だと気を付けなきゃいけないようなギャップも、乗り越えると、「えっ、ほんと?」というくらい小さな衝撃。
もっと凸凹きてー!と本当に思ってしまう自分がいました。変態か!?
木切れに乗り上げたときも、思わず笑ってしまいそうでした。
ふわっと乗り越えて、ステアリングからは本当に何の衝撃もこない。これだからリサーキュレーティングボールをつかってるんだなぁ(もっと違う理由もあると思いますが)、と納得したくなる手のひらへの柔らかな、それでいて確かな感触。
ヤバイ、なんか食レポみたいになってきたぞ!

対向車との離合。えっ、こんなんですれ違い出来るの!?
半ば変態みたいになっている自分がいますが、本当にすごいんです。
道路状況を見に来たお仕事の車と何度かすれ違ったのですが、もう未体験ゾーンでした。
対向車をみて、こりゃいかん、とバックしだすと、相手の車もバックしてくれます。そしてわずかなスペースを残して止まってくれます。「うっそー」と思いながら感謝と有難迷惑な気持ちがないまぜになって、とりあえず車を前に進めます。見切りがいいので攻められます。
ガードレールの少し外に張り出した部分を利用して離合します。
うわ、ほんとにすれ違いできた!
正直言って、もうポルシェや古いベンツで林道行くのはやめようと思いました。
道路にはその道路にふさわしい車がある、そう確信しました。
今までポルシェで林道に行っていたのは、スポーツウェアを着てイノシシ狩りに行くようなものだったのかもしれない(なんか例えがピンとこない)、かなり場違いな恥ずかしい行為だったんじゃないか、そんな風にも思いました。
ワインディングも楽しい!
思いのほか楽しかったのがワインディング。
何しろ車が小さい、しかもフロントのアプローチアングルをとるためにエンジンがフロントタイヤ前端よりも後ろにある。そしてFR(通常は2輪駆動で走る)。
リサーキュレーティングボールも中央があいまいなだけで、左右どちらかに絶えずステアリングを切っているような状況ではしっとりとしてなかなかいいフィーリングを持っています。
動画を一本載せておきます。(ちなみに、たまにスルスルという鼻をすするような音が入ってますが、これは手のひらとステアリングホイールの間の擦れる音などです。ご了承ください)
今の車はすごいもので、ラダーフレームであることはなかなか普通の状況ではわからないくらい。ロールも意外に少なく、かなり楽しかったです。
ということで、山道にいくと本当に楽しい、世界観まで変わりそう、そんな体験でした。
おまけ:ちょっと車を見てみる
話は前後しますが、ちょっと車を停めて見回してみましょう。
フロント。オフローダーの証。バンパーコーナーが切れ上がっています。

全景。


リア。

タイヤ。XLは鉄のホイールです。これいいなぁ。

ラダーフレームが見えます。それにしても、この、タイヤとホイールハウスの距離!

3リンクリジッドアクスルサスペンション。前輪のリーディングアームが見える。ごっつい!

後輪のトレーリングアーム。さらにごつい。

中に入ってみましょう。
少しよじ登る感じです。

フロントシート。板みたいでお世辞にも疲れにくいシートではありません。でも、上半身は当然、動かしやすい。

2列目を見ると、内張なし。荷室にすることも想定されているため、こうなっていると思います。いいなぁ、こういう感じ。

2列目からの視界。

もう一度外へ。エンジンルーム。吸気口は過酷な状況での使用を想定して耐水性能、耐雪害性能を担保するために上部に。それに合わせエアクリーナー(黒い四角状のもの)はエンジン上部に。そのほかにも水・雪・飛び石対策がいたるところに施されているようです。

荷室。2列目を使うと最小限。

もうひとつおまけ:四輪駆動について
ジムニーの四輪駆動は前輪と後輪を直結するタイプ。悪路走破に特化したタイプの四輪駆動なので、街乗りには全く適しません。
センターデフがないためカーブを曲がるだけでも前後の軌跡の差を吸収しきれず、タイヤが少しずつ滑ります。
ちょっとその感じを試してみました(4Hモードを使いました)。カーブを曲がる際にギリギリという音が聞こえます。普段は使わないようにしましょう。。
まとめ:この車があったら生活が変わりそう
そんなこんなで、やっぱりジムニーは山道が似合う、見事に特定の用途に特化した超本格的な車でした。道具に徹しているところも魅力的。
この車、買ったら林道とか意味もなく行ってしまいそうです。今まで行けなかったところに行けるって素晴らしい、こんな道具を手に入れたら生活も生活感も変わりそう。そういう体験でした。
いいなぁ、ジムニーに乗って山奥に入っていく生活したいなぁ、でもそのためには今の仕事何とかしないとなぁ。。。
・・・とそんな夢の広がる試乗でした。











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