ポルシェの2025年の世界販売台数が発表されました。年初の「今年は増加を見込む」との見通しとは裏腹に前年比10%減の失速。中国は2年で半減と非常に厳しい年となりました。中国の急激な内需シフト以外にも、ヨーロッパにおけるEV補助金削減とサイバーセキュリティ規制の影響ももろに受けた形(ヨーロッパ各国は2025年末からEV補助金を相次いで再開または再拡充に動いていますが)。

もはや構造不況といえるポルシェの販売台数減ですが、今後立て直すことはできるのでしょうか?

ポルシェの2025年(1月-12月)の世界販売台数:前年比10%の減少

世界販売台数:数値

ポルシェの2025年の世界販売台数は、279,449台(前年は310,718台。10.1%減)になったようです。世界販売台数の減少は2024年に続いて、2年連続。30万台割れは2020年以降初めて。

年度世界販売台数
2016237,778
2017246,375
2018256,255
2019280,800
2020272,162
2021301,915
2022309,884
2023320,221
2024310,718
2025279,449
出典:ポルシェ プレスリリース(各年度。以下同)。単位:台
ポルシェの世界販売台数推移(2016-2025年)

地域別販売台数:中国が2年連続激減、欧州も減少。日本は増加

中国市場向けは4年連続前年割れ。2024年に前年比-28%と減少したのに続き、2025年も-26%。ピークだった2021年と比べて、なんと56%減。

地域別販売台数:数値

 2024年2025年前年比
中国56,88741,938-26.3%
北米86,54186,229-0.4%
ドイツ35,85829,968-16.4%
ドイツ除欧州75,89966,340-12.6%
その他・新興国55,53354,974-1.0%
全世界310,718310,718-10.1%
ポルシェの世界販売台数推移(地域別)2021-2025年

地域別販売台数:中国と米国(アメリカ)を比較

どれくらい中国が落ちているかを、2023年に最大市場に返り咲いたアメリカと比較してみましょう。

 中国中国の構成比米国米国の構成比
2012年31,20522.1%29,02320.6%
2013年37,42523.1%42,32326.1%
2014年46,93124.7%47,00724.8%
2015年58,00925.8%51,75623.0%
2016年65,24627.4%54,28022.8%
2017年71,50829.0%55,42022.5%
2018年80,10831.3%57,20222.3%
2019年86,75230.9%61,56821.9%
2020年88,96832.7%57,29421.1%
2021年95,67131.7%79,16626.2%
2022年93,28630.1%79,26025.6%
2023年79,28324.8%86,05926.9%
2024年56,887 18.3%86,54127.9%
2025年41,93815.0%86,22930.9%
単位:台

一次、単一国では最大の販売先であった中国も、今やアメリカの半分以下。逆に、ポルシェの販売はアメリカ頼みになってきていることがわかります(世界販売台数の30%を突破)。

ポルシェの中国と米国における販売台数推移

中国での販売減は構造的なもの?

JETROは、中国での自動車販売台数は3,440万台で前年比9.4%増になったと発表しています。(※)

中国の景気減速は2025年も続きましたが、その中で自動車販売台数自体は10%近い大幅な伸び。

昨年も指摘した、中国経済の内需型シフトがもう取り返しのつかない流れになっていることが伺えます(この傾向はメルセデス・ベンツなどのドイツ車メーカーでも同じ)。

実際に、中国ではE to E(エンドツーエンド)モデルの搭載が当たり前になっていて、レベル2ながら事実上の「自動運転」機能がない車は見向きもされない世界になっているようです。E to Eモデルでは生成AIの学習に大量の学習データと計算量が求められることから中国国内メーカーが非常に力をつけてきていて、逆にこの分野で出遅れたドイツ車や日本車は「時代遅れ」とされ、ブランド力を急速に失っている状況のようです。

このような背景に加え、中国国内メーカーが急速にブランド力も身につけ、国内の富裕層向けにドイツ車キラーとなるような高級車を展開するなど、中国メーカーの躍進は凄まじいものがあります。

おそらくポルシェをはじめとするドイツのメーカー、日本のメーカーのここ数年の中国での苦戦は不可逆のもの。これらの国々のメーカーはどうやって世界で稼ぐのか、ポートフォリオの再構築が必要な状況になっているようです。

地域別販売台数:日本は2025年も過去最高を更新

日本市場における販売は増加。3年連続で過去最高です。

ヨーロッパの自動車メーカーの中には、ここ数年の中国の急減速によって販売戦略を見直しを余儀なくされ、その帰結として日本における販売に力を入れている会社もあるようです。もちろん中国と日本では10倍近い市場規模の違いがあるので日本は到底受け皿にはならないのですが、メーカーが地域別に調達網・製造キャパシティを持っている関係上、少しでも中国の周辺地域で需要を喚起したい、ということのようです。

日本に住んでいるとドイツメーカーの苦境ぶりは実感に乏しいのですが、それには上記のような背景があるのですね。

販売台数構成比
20166,8872.9%
20176,9232.8%
20187,1662.8%
20197,1922.6%
20207,2842.7%
20217,0092.3%
20227,1932.3%
20238,0022.5%
20249,2923.0%
20259,7673.5%
単位:台。構成比は、ポルシェの世界販売台数に占める日本市場のシェアのこと
ポルシェの国内販売台数推移(2016-2025年)

モデル別販売台数:カイエン失速、マカンが最量販車種に。911も過去最高更新

モデル別販売台数:数値

モデル別にみると、下記の通りになっています。

モデル2024年2025年前年比
カイエン102,88980,886-21.4%
マカン82,79584,3281.9%
91150,94151,5831.3%
71823,76018,612-21.4%
タイカン20,83616,339-21.6%
パナメーラ29,85727,701-6.4%
単位:台

モデル別販売台数:マカンが最量販モデルに。911は微増、その他モデルはすべて減少

2025年はカイエンの新車効果が一巡して、ほぼモデルチェンジ前の水準まで戻ってしまいました。

マカン(1.9%増)についてはヨーロッパを主戦場とするEV版が18,278台から45,367台と増加。ガソリンエンジン版が64,517台から38,961台と減少。なんとか合計数で前年並みまで持って行ったものの、当初はEVのみにする予定だったことからすると、EVシフトはかなり緩やかで、急遽ガソリンエンジン版を併売することで何とかピンチを乗り越えた、ということができそう。

パナメーラ(6.4%減)は新車効果がフルに現れる1年だったはずですが、主戦場の中国での減少が響き、3年連続減少。

タイカンは21.6%減と、2024年の半減に続いて縮小が続きます。この車はまさにポルシェの苦境を象徴するような車です。こういった「先進的な」車が売れなくなって、911のようなクラシックモデルばかりが売れてくる―――。なんだか昔ドイツのカメラメーカーが日本にやられて、だんだん骨董品のようなポジショニングになってしまったことを彷彿とさせます。

911は微増(1.3%増)。通年でマイナーチェンジ効果が出てくる年であったはずですが、何とか現状維持が精いっぱいのようです。

718は21.4%減。ついに2025年10月に生産終了。本当は昨年中にBEVの718が出てくるはずでしたが、大幅な戦略見直しの中で、まだ具体的な話は見えてきません。

下記に、911と718の世界販売台数の推移(グラフ)を掲載しておきます。

数字入りの詳細は下記にて掲載してあります。

【資料】ポルシェ 911の販売台数推移

【資料】ポルシェ ボクスター / ケイマン / 718シリーズの販売台数推移

ポルシェ911の世界販売台数推移(2016-2025年)
ポルシェ718シリーズの世界販売台数推移(2016-2025年)

ポルシェ、2026年は「量より価値」とのこと

ポルシェの2026年に向けてのステートメントでは、守りの時の常套句を述べています。

「『量より価値』戦略に基づき、需要と供給を管理したいと考えています。」

こんな言葉が出てくること自体、かなり深刻そう。

モデルチェンジの効果がフルに出る年として期待していた2025年が非常に厳しかったことを受けて、という面もあると思いますが、実のところかなり厳しく、前向きな見通しが立たないのだと思います。

中国向け販売の失速が構造的なものである上、ヨーロッパもおひざ元のドイツでEV補助金が2026年から再開されたものの、こうした補助金頼みの経営は運を天に任せるようなもの。

実際、EV化の波の中で、売上を維持できているのは「伝統の力」で差異化の可能なスポーツモデル。モデルラインナップを拡大してきた2010年代から逆行して、ポルシェの「911頼み」の傾向は2020年代に入ってから加速しています。

自動運転の波に乗り遅れつつあるドイツの古豪。「ブランディングに不可欠だから」と続けてきたモータースポーツの縮小も余儀なくされる中で、どのような立て直しを図るのでしょうか。

株式市場における時価総額がピーク時の3分の1まで落ちている状況は、他人事ながらとても心配です。こんな状況が続くと、「量より価値」を文字通り実行して、上級移行して一部の人しか買えない「(骨董品を慈しむ人向けの)高級ブランド」になってしまうかもしれません。何とかこの苦境から脱してくれることを祈っています。


(※)2025年の自動車販売台数は9.4%増の3,440万台、NEVの割合は47.9%(JETRO)

関連記事:【資料】ポルシェの販売台数推移

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