前回のWRX S4の試乗に続き、レヴォーグ(VN5)で箱根を走ってきました。現在3代目レガシィ(S401)に乗り、かつては家族の車として4代目レガシィツーリングワゴン2.0GT(AT)に乗っていた私がどう感じたか、レポートしたいと思います。
ちなみに、現在の家族の車はメルセデス・ベンツ GLBですが、7人乗りでないといけないという事情がなければこの車が筆頭候補でした。
- 着座位置。WRX S4とほとんど変わらない
- 前方視界はとても良い
- センターディスプレイへの映り込みが少し気になる
- CB18エンジンを始動!おおっ!
- 上品で優しい乗り味!
- 場面によっては足回りが柔らかすぎる、かも
- WRX S4で気になった点が、レヴォーグではそれほど気にならない!
- レバーの操作感が気持ち良い!
- エンジンを味わう
- エクステリア、インテリアを改めてみてみる
- 中速ワインディングでリニアトロニック(CVT)のフィーリングを味わう
- アクティブトルクスプリットAWD、2.4Lモデルと違う?
- 安全運転支援を試してみる
- 燃費は?
- どのグレードがいいか悩ましい?!
- まとめ
着座位置。WRX S4とほとんど変わらない
レヴォーグの着座位置の高さは下記の通り。
WRX S4に比べると10㎜高くなっていますが、違いはほとんど感じられません。
| ヒップポイント | 530㎜ |
| リフト量(上側) | 40㎜ |
| リフト量(下側) | 20㎜ |
ちなみに、私が乗っている3代目レガシィはセダン(B4)487㎜、ツーリングワゴン492㎜。その前に乗っていた4代目レガシィはセダン(B4)482㎜、ツーリングワゴン487㎜。
4代目レガシィのツーリングワゴンに比べると着座位置は4㎝強高くなっています。
スポーツワゴンらしく低い着座位置だったレガシィと比べると、「普通」の高さになりました。
4代目が出た当時は、年々衝突安全性の要求が厳しくなってくる中で、いかに工夫して着座位置を5㎜下げたか、というような開発者インタビューを目にしたものです。そうした時代がちょっと懐かしくなります。

前方視界はとても良い
前方視界はこんな感じです。WRX S4と同じく、とても良好。一方、フロントウィンドウへのダッシュボードの映り込みはやや気になります。

右前方の視界は非常に良いです。ドアミラーとAピラーの間にしっかり空間があること、ウィンドウ下端が先端に向けて少し下がっていることなどがその要因。Aピラーの形状も相変わらず良く工夫されています。

左斜め前方。ウィンドウ下端が前方に行くにつれ少し下がっていることが良くわかります。

センターディスプレイへの映り込みが少し気になる
走る前からちょっと気になったのが、センターディスプレイへの映り込み。環境によってはけっこう見にくいです。(この写真は少し視線より下から撮っているのでことさら映り込みが強調されている点はありますが、それでも映り込みは多めです)。

CB18エンジンを始動!おおっ!
CB18エンジンはこの代のレヴォーグから搭載された、スバルの中では最も新しいエンジン。排気系の取り回しの関係でエキゾーストが不等長になったことでも話題になりました。
エンジンをかけてみます。
おおっ、けっこう粒のはっきりした、水平対向特有の音がします。音のにごりも少なく、なかなかいい感じです!
上品で優しい乗り味!
さて、走り出します。三井のカーシェアーズで借りた車はレヴォーグ GT-H EX。電子制御ダンパー非搭載のグレードです。
スバルグローバルプラットフォーム(SGP)第2世代ボディをまとったレヴォーグ、ボディがミシリとも言わない感じは以前にもレポートしました。
フルインナーフレーム構造と構造用接着剤の多用、サブフレームとボディの溶接方法の変更などの効果が出ているのでしょう(実際接着剤樹脂によって微振動が吸収されるそうです)。
不思議とこういった部分は何度も乗っていると「これが普通」になってしまって、改めてすごいなぁと思わなくなってしまうのですが、それでもやはりこの車の良いところだと感じます。
剛性の高いボディに柔らかめのサスペンションと減衰力が低めのダンパー、アタリの柔らかなタイヤ、柔らかめのブッシュ等で、乗り味はとても穏やか。車の動き出しもスムーズで、とても上品。
一方、ロワアームとナックルを新設計し、キングピンオフセットを少なくすることで操舵感を改善したり、サブフレーム取り付けブッシュをロール方向のたわみを抑える軸向きに配置することで、横力によって発生するクルマのロールを抑えたりと、構造的に雑味が少なくなるような工夫も凝らされているところがスバルらしいところ。(このことを「連成(coupling)しない=非連性」と言うそうです。ロール方向への力を抑えられれば結果としてブッシュを柔らかくできるので乗り心地が良くなる。これを「非連性サブフレームブッシュ」というそう。)
そうした工夫の積み重ねで、「上品」さを手に入れているようです。
最近の車は、このレヴォーグのように「剛」だけではなくて「柔」の要素が加わって、優しい乗り味の車が多くなっているように思います(かつては「剛」の代表格だったドイツ車も含めて)。
・・・とにかくいい車に乗っているなぁと感じます。スバル車からこんな「上品さ」を感じるとは思っていませんでしたが、ほんと感心するほど「いい車」感が漂ってきます。
電子制御ダンパーなしの、コンベンショナルなダンパーを搭載したグレードでもこの乗り味ですから、電子制御ダンパー付きのSTI Sportはもっとしなやかでしょう(私は1年以上前、一度ディーラーで試乗しただけなので確固たることが言えません)
前述の視界の良さも相まって、運転もしやすくストレスフリーです。

優しい中にも正確な車の動き
とはいえ、優しくて上品だけで終わらないのがスバル。
やっぱりスバルらしいなぁと思うのは、車全体の動きが優しくなっているにもかかわらず、車の動きがとても素直で正確であること。先ほどのSGP+インナーフレーム構造でしなやかながらしっかりしたボディを手に入れたことに加え、先ほど見たような工夫もあります。また、サスペンションが縮んだ時のジオメトリー変化も少なく(リアサスのトー変化特性はインプレッサから変更したようです)、デュアルピニオン式のEPSになったおかげで操舵感はすっきりとしていますし、味付けにも過剰な演出がありません。
素直に車がじわっと動く、というのはスバル、中でもSTIの真骨頂だなぁ、と思います(※今回は開発の初期段階からSTIのメンバーが加わっているそうです)。ターゲットとする速度域や、快適性と正確な車の動きのバランスは当然違えど、こういったところはポルシェなどとも似たような考え方で作っているなぁと思います。(ついでに言えば最近納車されたシビック タイプR(FL5)も。)
どちらも、ドライバーの操作に(唐突なノーズの入りなどの演出はせず)正確に反応し、しっかりと情報を返してくれるのでドライバーが安心して次の動作に移れる、そんな感覚です。
ポルシェはサーキットなどでの使用も想定しており操舵と車の動きにできるだけダイレクトな関係が必要なので、いろんな部分(例えばサブフレームとボディシェルの結合とかエンジンマウントとかタイヤの締結とかその他諸々)が「剛結」していて柔軟性が少ない。そのため、反応遅れがなくダイレクトだけど乗り心地は硬い(それでも驚異的なしなやかさはありますが)。
スバルはもっと普通の走行シーンをターゲットにしているけれど、やはり運転しやすさには「素直」な挙動の車が必要と考えて、それぞれの機構や結合部には若干の柔軟性を持たせつつも反応遅れや揺り戻しは最小限にする、唐突な動きは極力排してじわっと車を動かす。そしてドライバーには必要な情報は伝え、過剰な演出はしない。そんな感じで、とても実直なのでした。
場面によっては足回りが柔らかすぎる、かも
と、ひとしきり感嘆したところではありますが、GT-H EXの足は、小田原厚木道路のようにやや波打っているような路面の良くない自動車専用道を走ると、個人的には少しダンピングが足りないように感じました。縦のゆっくりしたゆらゆらとした振動が少し後まで残る感じ。やや収束が悪いように感じました。
アイサイトによって顧客層が広がる中で、他の国産車の乗り換え組の方を中心に、「スバルの足は硬いからイヤ」という声は大きいようです。スバルは、それに対処するために相当苦心しているようです(レイバックはそういった層の受け皿にもなっているとか)。
その結果がこの柔らかい足だと思いますが、逆に輸入車、特にドイツ車からの乗り換えを検討するような人たちや歴代スバルオーナーからすると、「日本車っぽいちょっと頼りない足」と感じるかもしれません。
WRX S4の電子制御ダンパー非搭載車の足は、いまどきにしてはかなり「硬く」て、家族を乗せるのに躊躇するくらいです。一方、レヴォーグの同グレードはかなり「柔らかい」です。兄弟でも非STIグレードについては味付けの方向性がほぼ真逆です。これはちょっと注意したほうがいいポイントかもしれません。
個人的には、レヴォーグの場合普段乗りはこのセッティングでもいいなと思いますが、山道とか高速道路ではもう少し硬い方が好みでした。そういう意味では電子制御ダンパー付きのSTI Sportを選びたくなるかも、と思いました。
WRX S4で気になった点が、レヴォーグではそれほど気にならない!
WRX S4の試乗では、特に2点気になると書きました。1つ目はステアリングのセンター付近の手ごたえがあいまいであるということ、2つ目はロードノイズが大きいこと。
以前から確認していたことではありますが、これがレヴォーグだとあまり気になりません(少しは気になりますが)。
これはタイヤのおかげ?!
レヴォーグの履くタイヤのサイズ・銘柄は下記の通り。
サイズ:225/45R18(前後)、横浜ゴム BluEarth-GT AE51(ブルーアースGT)
最初はなぁんだ、エコタイヤ履いているの?と思っていたのですが、じつはこのタイヤによってWRX S4で感じた「2つの違和感」がともに少なくなっているように思いました。(ちなみに、ブルーアースGTは1.8L用も2.4L用もレヴォーグ専用チューニングとのこと)

WRX S4はスポーツタイヤを履いていて「固い」(ケーシング剛性が高い)。ボディもガッチリしていて、サスペンション・ダンパーのセッティングもハード(試乗したのは電子制御ダンパー非搭載車)で力を逃がしてくれないため、もともとあまり強くないステアリング系にしわ寄せがきてしまうようです。
(ちなみに、もともとフロント置き水平対向エンジン車はステアリング系の剛性を確保するのは難しいそうです。エンジン・トランスミッションとステアリングラック・タイロッドが干渉しないように取りまわすのが大変だそう。)
対するレヴォーグは、タイヤが適度に柔らかく、サスペンション・ダンパーのセッティングも柔らかめなので、全体的に「いなし」が効いている感じです。その結果、ステアリングセンター付近のあいまいさがあまり感じられなくなっているようでした。

さらに、このタイヤのおかげでWRX S4で気になったロードノイズもだいぶ軽減されているように感じました。
タイヤが変わるだけで、気になった2大ポイントが解消しているのは、ちょっとしたうれしい驚き。逆に、WRX S4もタイヤを変えてあげれば印象が結構変わるかも、と思いました。
レバーの操作感が気持ち良い!
走っていて気に入ったのがウィンカーレバー。なかなか重厚なタッチとクリック感です。
レバーの塗装も艶消しでなかなかいい感じ。太さもしっかりあります。
一方のウィンカーの室内音はけっこうかわいい音。このギャップはちょっと面白かったです。

その他のスイッチ類もけっこう質感がありました。それだったらパドルシフトの操作感はもう少しこだわってほしかった(ぼそっ)。

エンジンを味わう
エンジンはCB18・水平対向4気筒ターボエンジン。最高出力177PS/5,200-5,600rpm、最大トルク300Nm/1,600-3,600rpm。かなり低回転よりの実用エンジン。レギュラーガソリンで走れます。
新世代型のエンジンで、軽量コンパクト。FB16に比べてエンジン全長が44㎜も短くなったとのこと。ボアピッチが113㎜から98.6㎜とかなり小さくなっている(気筒間の間隔が狭い)そうです。

コンパクトぶりは見た目でもわかります。エンジンとラジエーターの間に結構なすき間があります。何か別のユニットを入れられそうなくらい(将来的にはハイブリッドユニットの搭載を見込んでいる?!)

ちなみにボア×ストロークは80.6㎜×88.0㎜のロングストローク型。EJ20が92.0㎜×75.0㎜の超ショートストローク型エンジンだったことを考えると、隔世の感があります。
WRX S4、レガシィ(BP5、AT)とパワーの出方を比べてみる
試しに、レヴォーグ GT-H EXと2.4LモデルのSTI Sport R、そして私が昔乗っていた4代目レガシィ2.0GTの5ATと各速度でのパワーの出方を比較してみます。
(数値はエンジン性能曲線(一部推測含む)から各車速でのパワーを割り出したものなので、誤差はご容赦ください。(単位:PS))
ルールは、一番パワーが出るギアを選択すること。ただし1速での加速はあまり実用的ではないため、1速を使わないことにしています(アミオ的勝手ルールです)
まずは出力の数値から。
| 車速(㎞/h) | レヴォーグ(1.8) | レヴォーグ(2.4) | レガシィBP5 | |||
| 40 | 139 | 2速 | 157 | 2速 | 123 | 2速 |
| 50 | 163 | ↓ | 196 | ↓ | 154 | ↓ |
| 60 | 173 | ↓ | 235 | ↓ | 184 | ↓ |
| 70 | 176 | ↓ | 264 | ↓ | 215 | ↓ |
| 80 | 170 | 3速 | 273 | ↓ | 233 | ↓ |
| 90 | 176 | ↓ | 253 | 3速 | 251 | ↓ |
| 100 | 176 | ↓ | 267 | ↓ | 260 | ↓ |
| 110 | 172 | 4速 | 273 | ↓ | 256 | ↓ |
| 120 | 175 | ↓ | 257 | 4速 | 229 | 3速 |
レヴォーグの1.8Lモデルは、ギアが変わってもほとんどパワーの落ち込みがありません。まぁ、CVTなので、パワーが落ちないように疑似的な固定ギアを割り出しているため当然と言えば当然ですが。。。
次に、車重差を考慮して全部1,500kgの車だとした場合の理論的なパワーに補正して比較してみましょう。
| 車速(㎞/h) | レヴォーグ(1.8) | レヴォーグ(2.4) | レガシィBP5 | |||
| 40 | 133 | 2速 | 144 | 2速 | 124 | 2速 |
| 50 | 156 | ↓ | 180 | ↓ | 156 | ↓ |
| 60 | 165 | ↓ | 216 | ↓ | 187 | ↓ |
| 70 | 169 | ↓ | 243 | ↓ | 218 | ↓ |
| 80 | 163 | 3速 | 251 | ↓ | 236 | ↓ |
| 90 | 168 | ↓ | 233 | 3速 | 254 | ↓ |
| 100 | 168 | ↓ | 246 | ↓ | 263 | ↓ |
| 110 | 165 | 4速 | 252 | ↓ | 259 | ↓ |
| 120 | 167 | ↓ | 237 | 4速 | 232 | 3速 |
| 車重(kg) | 1,570 | 1,630 | 1,480 | |||
レヴォーグの2.4Lモデル(FA24Fエンジン)は全域で1.8Lを大きく上回っています。それでも40㎞/hまでは1.8Lも頑張っています。
4代目レガシィは、なんと40㎞/h付近ではレヴォーグの1.8Lモデルに負けています。なぜかというと2速のギア比が全然違うからです(CVTは物理ギアがないため多段化しやすく、ギア固定モードでの2速・3速はかなりギアが低めに設定されています)。
その後50㎞/hでやっと1.8Lを捉え、80㎞/hちょっと超えて2.4Lモデルが変速した時に追い抜く、そんな感じです。
上記のように、CB18エンジンのレヴォーグ1.8Lモデルは、高速域での伸びこそ期待できないものの、実用域ではしっかりとパワーが出ている扱いやすそうなエンジンだということがわかります。
実際に走ってみるとどうか
全開加速をしてみます。音は2.4LのFA24Fエンジンに比べてやや高めで、水平対向エンジン特有のビートが強め。ちょっとワイルドな音をさせて加速していきます。個人的にはFA24Fよりもこちらの音の方が好みでした。取り回しの関係で、排気が不等長になっていることも関係しているのでしょうか。
ターボが効いて加速するまではやや時間がかかり、ブーストがかかっていることも明確に分かります。そういう意味では少し古典的なフィーリングです。
さすがに4,500回転から上は頭打ち感があり、特に上り坂での加速は緩慢でした。
一方で、街乗りなどでは十分速く、トランスミッション(後述)のゆっくりした変速さえ終わってしまえば快適に走れました。
エクステリア、インテリアを改めてみてみる
改めてエクステリア、インテリアを見てみます。
エクステリア
デザインの源流は2018年のジュネーブショーで公開された、VIZIV TOUARER CONCEPT。好評だったこのコンセプトカーのエッセンスを取り入れながら量産車に落とし込んでいったようです。
目を引くのがサイドビュー。
サイドビューは、欧州車などがリアウィンドウの下端を下げることで伸びやかさを出している中、後ろに行くにしたがってウィンドウ下端が切れ上がるスタイル。後部の剛性をあげることが一番の目的だと思いますが、なかなかインパクトがあります。
※ちなみに、この車のボディカラーはサファイアブルー・パール。我が家の718ボクスターのゲンチアンブルー・メタリックにニュアンスが似ていて(赤が強い紺色)大好きな色でした。





なかなか彫りの深い顔立ちです。

開発者インタビューを見た時、全長を伸ばした分(先代4680mm→現行4755mm)のうちフロントオーバーハング延長分(40㎜)は全部デザインに使った、と書いてあったので、機能的デザインを信条としていたスバルもそうなっちゃったのか、と残念に思ったのを覚えています。
ただ、ワゴンがすでにニッチなカテゴリになった今、改めてデザインを見てみると、これくらいノビノビとしたほうがいいじゃん!と思えるようになりました。笑
リアの造形もご覧の通り。

個人的にこのリアのデザインは好きです。車で走っていてレヴォーグの後ろにつくと、「かっこいいなー」と思ってみています。

インテリア
インテリア。WRX S4と基本は共通ですが、グレードによってステッチの色が違ったりするようです。


後席、荷室
後席への乗り込みは、少し注意が必要
後席の乗り込みで少し気になったのは、いまひとつな乗降性。リアのホイールハウスが近くまで張り出しているので、その分開口部の後端が切れ上がっています。足の悪い方を乗せる機会が多い方は、ちょっと気にした方がいいポイントかもしれません。
レヴォーグのホイールベースは2670㎜。この値、4代目レガシィと全く同じ。レガシィの2代目で2630㎜になっていますので、それ以来あまり変わっていないことがわかります。
近年の車は居住性を重視してホイールベースも長めですが、レヴォーグは頑なに昔ながらのホイールベースを守っています。回頭性を重視しているためか、同一プラットフォームでインプレッサからアウトバックまですべてをカバーするための必然か、今となってはよくわかりませんが、そういった基本設計がリアの乗降性に少し影響しているようです。

座ってしまえば快適な後席空間
リアにはエアコンアウトレットと共にUSBポート、シートヒーター等が設置されていて、多人数乗車時の快適性はしっかり確保されているようでした。WRX S4の記事でもふれたとおり、センタートンネルの張り出しも大きくなく、中央席の座面も硬くなくない点は5人家族にとってはうれしいポイント。

リアシートからの前方視界。個人的には大きなサンルーフが欲しいところですが、この車には小さいサンルーフしかオプション設定されていません。4代目レガシィまでは、ワゴンには大きいサンルーフがあったんですけどね。。

後方視界。さすがに剛性確保のためにDピラーに厚みがあり、またリアウィンドウ後端も切れ上がっているため後方視界はあまり良くありません。

ラゲッジスペースは広々
ラゲッジスペース。レガシィの頃からほとんど変わってない感じです。4代目レガシィは5年ちょっと乗っていましたが長いものも積めるしほんと便利。開口部が大きいのも良いです。きっとこの車も積積みやすさはよく考えられていると思います。


中速ワインディングでリニアトロニック(CVT)のフィーリングを味わう
さて、また走り出しましょう。
1.8Lモデルは旧来のリニアトロニック(CVT)が搭載されています。これは、2.4Lモデルとの大きな違いです。先代からのキャリーオーバーではなく、2019年に出たアウトバック(北米モデル)用を持ってきて、トルクコンバーター等を専用設計したもののようです。レシオカバレッジが6.3から8.1に広がり、より省燃費な回転域を使えるようになったとのこと。

マニュアルモードを試す
まずはマニュアルモードを選びます。マニュアルモードにすると、8速のステップ変速になります。
良いのは、エンジントルクに余裕があるため変速回数が少なくて済むこと。1,600rpmから300Nmのトルクを発生するので、かなりずぼらな運転をしても加速していきます。アクセルを踏み込んでみると2速、40㎞/hからでも余裕でスルスルっと加速します。
ただし、変速はけっこうトロイです。ここがスバルパフォーマンストランスミッション(SPT)を搭載している2.4Lモデルと大きく違うところ。パドルシフトを操作すると、はいちょっとお待ちを、と車から返ってきて、それからちょっと待っていると「よいしょ」と変速する感じです(少し大げさです)。
ただし、そもそも回転数をあげてもそこまで出力が高くなる車でもなく、全域トルクが太いためギアチェンジをする意味があまりないので、そういう意味では変速のトロさは個人的には気になりませんでした。
続いてオートモード
試乗した車は非STIグレードのため、走行モードは「S」と「I」の2つのみです。「S」を選んでもステップ変速にはならないようです。ワインディングで走らせてアクセルをちょっと強めに踏むとゆっくり変速して、ターボチャージャーによる加給が始まるまで一瞬の間があってからドーンと加速し、カーブ手前でアクセルを離すと一気に回転が下がる、といったCVT車によくある動きをします。
・・・「気持ち良いか?」と聞かれると「あまり気持ち良くない」と答えたい、というのが個人的には正直な気持ちです。
ワインディングでのモード選択は悩ましい
そんな感じで、オートモードは基本的にはあまりワインディング向けではないと思いました。一方、マニュアルモードは変速速度が遅く、あまりギアチェンジが楽しくはありません。個人的にはマニュアルモード一択ではありますが、2.4LモデルのSPTの気持ち良さを知ってしまうと、ワインディングを楽しむなら2.4Lモデルが欲しいかもなぁと思いました。
アクティブトルクスプリットAWD、2.4Lモデルと違う?
四輪駆動システムはどうでしょうか。
1.8Lモデルは全グレードアクティブトルクスプリット型のAWDです。2.4L向けのVTD-AWDとちがって、こちらは前後トルク配分のデフォルト値が60:40。前後車両重量配分に合わせてあります(2.4Lはややリア寄りの45:55)。
実際に走ってみると、カーブの脱出時に、VTD-AWDは「後輪から蹴り出す」感じが少し感じられるのに対し、こちらは、ある意味普通のAWD。
ただ、制御は新しくなったようです。以前の、エンジンマップから発生トルクを予測して後輪への駆動配分を増すタイプから、アクセル開度から直接後輪への駆動配分を増すタイプになったそう。この変更によって、駆動配分制御遅れによる挙動変化(カーブ途中、制御が始まるまではアンダーステアで、リアへの駆動配分が増すとオーバーステアになる)を少なくしたそうです。
ハードに走っていないこともあり、このあたりは実感できませんでした。

安全運転支援を試してみる
ちょっと気になる点3連発
レヴォーグをはじめスバルの車は、近年安全運転支援に力を入れています。「ぶつからない車?」をキャッチフレーズに、アイサイトに力を入れてきました。
そんなスバルなので期待値が高まります。
が、、、安全運転支援機能を試す前にちょっと気になるところを3連発。個人的な感想なので話半分でお願いします。好きな車なのでつい気持ちが空回りして辛口になってしまう、そんな感じです。
その1
ドアミラー。縦に長いものの横についてはあまり広い範囲を捉えてくれません。ドイツ車の多くはミラーの外側が凸型になっていて、広角に斜め後方の車を捉えるようになっているのですが、その感覚で乗ると横の死角はけっこう大きく感じました。

これはドアミラーの取り付け位置に起因する問題。最近のスバル車は広い視界を作るためにAピラーの付け根が前に張り出しています。ドアミラーはそこから少し後ろに取り付けられますが、特に多くの欧州車と比べると相対的にドライバーから遠くに設置されています。
視線の移動が少なくなるメリットは大きいものの、その分光の反射角が小さくなり、車のすぐ斜め後ろの車を捉えるのが難しくなります。ここはミラーを広角にして死角を減らしてほしいと思いました。
※追記:調べたところ日本では法規上、運転席側は湾曲不可(JIS D5705(道路運送車両法による技術基準))であることがわかりました。輸入車は特例でOKになっているようです。

その2
リアビークルディテクション(後方から車が近づいてくると点灯するアラート)。この色がウィンカーと同じで、かつドアミラーの内側のかなり大きな範囲に表示されます(他の車はもっと小さいのが普通)。
一方ドアミラーウィンカーはドアミラーの外側。
一瞬これを混同してしまい、自分のウィンカー点灯をアラートだと勘違いして慌ててレーンチェンジをやめたことがありました(逆じゃなくて良かった)。
慣れればいいのかもしれませんが、どうして性質の違う灯火類をかなり近い位置に並べ、同じ色で表示するのかはわかりませんでした。
その3
リアカメラの画角のひずみ。初めての時、真っすぐ後退するときに危うくぶつかりそうになりました。


やっかいな居眠り警告
じつはこの車、乗り始めて30分の間に5回、居眠り警告が発せられました。
居眠り警告、正式名はドライバーモニタリングシステム。「専用カメラでドライバーを常に見守り、(省略)走行中、一定時間以上目を閉じていたり、顔の向きを前方から大きく外したいするなど、ドライバーに眠気や不注意があるとシステムが判断した場合、警報音や警告表示で注意を喚起します。」とあります。
最初、室温あげるのどうするんだろう、とかいろいろわからないことがありちらちらと視線をカメラ側(監視カメラ(笑)はセンターモニターの上にあります)を振り向いていたのが悪かったのかもしれません。
が、予期しないタイミングで何度も警告され、滅入りました。トンネル出口で眩しくて目をそらした時も警告が出ましたし。
警告音はかなり大きく、メーター画面の外枠も赤く点滅し、物々しい雰囲気に。自信満々に「はいー、君、今目をそらせただろう!!」と言われているような感じで、30年以上前に通っていた教習所を思い出しました(笑)。
ずっと監視されているようで、また音が鳴るんじゃないかとびくびくしてしまったことを白状します。
個人的にはこうしたお節介はしてほしくないので、これだけで「この車とは友達になれないかも」と思ってしまいました。
※気になって調べてみたところ、この機能は設定で解除できることがわかりました。ただ、解除するとシート位置やドアミラーの鏡面位置などの一括呼び出しもできなくなってしまうようでした。警告だけ解除したいのですが、できないものですかね。
※もしかしたら前回借りた人の設定が残っていて、別人と認識してた、とか?ありますかねー。
アイサイトXを試す
やっと本題のアイサイトとアイサイトX。使ってみます。
まず、ボタンの配置。上の左側がハンドル操作支援、上の右側がクルーズコントロール、その下がトグルで下に倒すとセット、上が復帰。その下の左が車間調整、下の右がアイサイトX(特定の場所でのみ使える)。
アイサイトXを除く2つの機能を作動させるには、上の左、上の右をそれぞれ押してスタンバイにした後トグルを下に倒す、であっているのでしょうか?
あー、めんどくさい、というのが正直なところです。
(私の家族の車がメルセデス・ベンツ GLBなので比較してしまって申し訳ないですが、メルセデス・ベンツの場合、トグルを1回上に倒すだけですべての機能が作動開始します。)

ステアリング・フィールが変わる!
ハンドル操作支援をオンにすると、ステアリングのセンター付近に抵抗が発生し、ステアリングフィールががらりと変わります。一言でいうと、ハンドルを切りにくくなります。おそらく、不意にハンドルを動かすことを防止するための配慮でしょう。が、ハンドルを少し切ると「ぐにゃ」っとして操舵反力のない不感帯が現れる感じはちょっと違和感があります。
意地悪にハンドルを左右にクイックに動かすと、制御系が解釈に困るのか、ハンドルを切る動きが増幅されます。
そんな感じでハンドル操作支援が動作を開始すると、けっこう違和感のあるステアリングフィールになりました。このあたりは制御系の介入が本当にうまいメルセデス・ベンツとの差を感じました(必要な時以外は作動してるかどうかわからないくらい黒子に徹している)。
※2024/12/12追記:2024年の年次改良でこの安全運転支援作動時のパワステの設定に変更が入るようです。やはりちょっと不評だったのですかね。。
運転は上手!
いろいろなジャーナリストも褒めているように、運転は上手です。特に渋滞の中で前の車が車線変更でいなくなった時の動きなど、細かく煮詰められている点はとても良いと思いました。ブレーキも急ではなく、日本の交通環境にあった制御になっていると感じました。使ってみてはいませんが、加速レベルの調節もできるようです。
ただ、ちょっと怖い動きもある
ただ、これは安全上いかがなものかという動きもありました。2点、気になりました。
1つ目は、首都高のカーブなどでハンドル操作支援がぷつりと切れるときの動き。カーブがきついと曲がっている途中に何の予兆もなくぷつりと操作支援が切れます。「俺、知らんからね」という態度が見え隠れして、ちょっと腹立たしいです。あっさりと諦める感じもあります。もちろんレベル2の安全運転支援なので、あくまでも支援。でも、だからと言って開き直らなくてもいいじゃん!と言いたくなります。
メルセデス・ベンツはこの点もうちょっと律儀で、頑張って支援を続けようとして、ダメだとなるとちゃんとわかりやすい警告を出して制御を終了します。
2つ目は、先行車が変な動きをしている時の制御。先行車が車線から一部はみ出して蛇行している場合や、右からの出口車線をずっと半分本線にまたがったまま走っている場合(それはそれでちょっと迷惑ですが)、アタリ判定が甘いためか、先行車がいなくなったと判断して猛然と加速を始めることが2度ありました。先行車がいなくなったのに加速をしないとそれはそれで(車の流れを止めてしまい周りに迷惑)、という配慮なのでしょうが、シンプルに危険に感じます。
スバル車以外でこうしたことに出会ったことはないので、アイサイト特有の動きだと思います。ブレーキを踏んでなだめましたが、ちょっとこれは危ないのでは?と思いました。
渋滞時ハンズオフアシストは?
個人的にとても興味あった渋滞時ハンズオフアシスト(自動車専用道で0-50㎞/hで走行時、一定条件を満たすとハンドルから手を放すことができる)は、残念ながら試すことはできませんでした。東名高速の渋滞時、アイサイトXは作動しているものの(青色のインジケーターが点灯)、なぜかハンドルを離すとすかさず警告が出てきてしまい、ハンズフリーはできませんでした。使い方が間違っていたのかもしれません。。
小まとめ:ちょっと言いたいところのあるアイサイト
スバルのアイサイトならびにアイサイトX、期待値が大きかったからかもしれませんが、個人的にはやや違和感が大きいシステムでした。特に気になったのは警告系。「数打ちゃ当たるでしょ。ないよりはあったほうがいいでしょ?」という開き直りすら感じてしまいました。
例えるなら、工事で対面通行になっているところで反対車線に出る際に「危ないじゃないか!」と叫んだり、トンネルの出口で眩しくて瞬きしたら「今居眠りしただろう」とイチャモンをつけてくるような、できの良くない教習所の教官を常に助手席に座らせて運転している(それが義務化されている!?)、そんな感覚に似ています。
こうなってしまうと、運転が「楽しく」なくなってきてしまいます。
スバルのように走りの楽しさを大切にしていたブランドにとっては、「支援」をどう「楽しさ(スバルは「愉しさ」と表現している)」と両立させるかは死活問題のはずです。
が、このままいくと、スバルは「楽しくないけど安心?」なブランド(もっといえば「安心と我慢!」)になりかねないように思いました。
実際にスバルはアイサイトを含む安全運転支援機能を深化する過程でかなり「安心」に軸足を移していて、ブランドの認知のされ方も「安心」となんだっけ?という感じになりつつあるように思います。
そういう意味では、スバルはブランドとしての方向性をしっかり固めてほしいと思いますし、本当に「安心」と「愉しさ」を両立するつもりであれば、それぞれの技術の深化だけでなく、それ(=両立)に必要な技術とノウハウの蓄積もしっかりやってほしいと思いました。
具体的にはいわゆる「コーナーケース」問題、つまり稀にしか発生しない特殊な(異常な)交通状況に対する取り組みの優先順位を上げ、AIの誤認識や過干渉を減らすように努力しないといけないのでは?ということです。
この点については機会があれば別の機会に書いてみたいと思います。
燃費は?
スバル車の鬼門、燃費。レヴォーグの燃費はどうでしょうか?
オンボードコンピュータの値は11.8㎞/lを示していました。WLTC総合が13.5㎞/lなので、ざっと13%低め。
確かに流れの悪い道が多かったので仕方なかったかもしれませんが、ちょっと期待外れ。リーンバーンの領域になれば燃費は良くなるのかもしれませんが、少しでもそこを外すと急速に燃費が悪くなるようでした。

どのグレードがいいか悩ましい?!
今回試乗したのは1.8LモデルのGT-H EX。素の状態で400万円以下のプライスタグが付いていて、乗り味はかなり上品で優しい。ほとんどのシーンでは不満もなく、値段以上の価値はあるなぁと感じました。
一方で、高速道路でもう少しかっちりした足にしたい、と思うとSTI Sportを選ばないといけません。個人的に電子制御ダンパーは魅力ですが、それがほしくてSTI Sportを選ぶとレザーシートなども全部ついてきてしまいます。値段は55万円アップと、なかなか高いハードル。
さらに、山道を気持ちよく走りたい、となるとトランスミッションがSPTの方が断然良い。そうすると必然的にエンジンは2.4Lになります。2.4Lは必然的にSTI Sportになるので、さらに68.2万円プラス。120万円以上違うんだ。。
個人的にはそこまで飛ばさなくてもいいと感じるので、GT-H EXや、それをベースとした特別使用車がコスパが良くていいなぁと思いました。これなら家族の他の人も運転しやすそうですし。
本当のところは1.8Lに電子制御ダンパーとSPT(だけ)がついているグレードがあれば最高だなと思いました。STI Sportはむしろそういう走り系のアイテムだけを追加したモデルにしてほしいと感じるのは私だけでしょうか。。(高額グレードだからレザー!というのはちょっと時代に逆行している気もしています)
まとめ
個人的には気になるところが少なからずありましたが、全体としてみるとやっぱりレガシィの伝統を受け継いで、運転しやすくストレスのない車だと思いました。
確かに水平対向エンジンの独特の「味」が薄れ、着座位置が高くなったこともありスポーティさは薄れ、ビルシュタインのダンパーを筆頭に硬い中にもしなやかさのある足回りが「普通の日本車」っぽくなり、4代目にはあった軽快感もなくなりはしたものの、特にNVH(Noise=騒音、Vibration=振動、Harshness=ハーシュネス)が格段に洗練され、上品な乗り味の車になったなぁという印象を持ちました。
個人的には、燃費と、やや癖のある安全運転支援機能を受け入れることができれば、とても「賢い選択肢」としていろんな人に勧めたい車だと思いました。











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