スバルのS210に対する、ファンの声をまとめた記事のおまけに「当選」したことをご報告しました。今回は、納車前の復習を兼ねて、S210に対する期待(と不安)を書いておきたいと思います。
2025年10月16日追記:納車されました!納車直後のレビューは下記をご覧ください。
スバル S210はスーッと口どけする超滑らかプリンの味わいでした(納車直後の印象)
改めて抽選を振り返る
今回の抽選スケジュールは下記の通りでした。
- 2025年5月22日~6月29日:申込期間
- 2025年7月10日:抽選発表
抽選発表は、昼頃ディーラーから電話がかかってきて当選を知り、16時ごろ当選通知メールが送られてくる、というものでした。
抽選の方法の特徴は下記の通り。
- 販売会社ごとに割り振りがあり、その中で抽選が行われました。
- 私の住んでいたところは神奈川スバルのテリトリーなので、その枠で抽選。ちなみに抽選はメーカーサイドで行われるとのことでした。
- スバル車を何台持っているとかそういったことは抽選には無関係で、たまたま当たったりたまたま外れたり、ということみたいです。
私はくじ運が全くなく、じゃんけんとかも弱いのでイベントでの景品はほとんど当たったことがありません。今回はどうせあたらないだろうと思って無心だったのが良かったのかもしれません。。。

ボディーカラーの選択について
抽選応募時に色を決めます。当選した後で色を変えることはできないようでした。
私が選んだのはマグネタイトグレー・メタリック。
個人的に今回は(クルマがけっこういかついので)渋い色にしたかったこと、フェンダーモールやバンパーとのコントラストを少なくしたかったことから、この色を選択しました。
私が持っているS401は第一世代のWRブルーで、同じ系統の色でそろえるのもいいかもしれませんでしたが、最近納車されたフェアレディZ(RZ34)も明るめのブルーなのであまりかぶるのもどうかと思い、違う系統の色にしました。
ま、当たるとは思わなかったのでS401とのペアルックなんて考えもしなかった、というのが正直なところです。

オプションについて
ほとんどの装備がついているので、選択できるオプションはほとんどありません。メーカーオプションはゼロ、ディーラーでの後付け品があるのみです。
ディーラーオプションは下記の通り選びました。
- ETCユニットとドライブレコーダー、フロアカーペット
- 実質強制でつけさせられます(スバルあるある。笑)
- ホイールナットロックとナンバープレートロック
- ホイールナットロックは普通のオプション品がシルバーしかないので、黒系ホイールのS210に取り付けると浮いてしまうので注意が必要です。
- 黒色は、工具付きのホイールナットロックセット44,000円しか選択肢がありません。→高いですが、もうこうなると誤差の範囲。つけることにしました。
- ナンバープレートベース
- 黒いようなのでボディカラーに合いそう→付けました。ほぼ思考停止状態です。
- コーティング
- WダイヤモンドKeePer→ガソリンスタンドでお願いした方が安そうですが、面倒なのでこちらで頼むことにしました。

装備品は以上です。
これとメンテナンスパックに入って、若干のおまけつきで約9,500,000円ほどでした。
価格について思うこと
ということで乗り出し1千万円近い車になりました。
ホンダ シビック タイプR(FL5)が乗り出し600万円いかなかったことを考えると高いとは思います。でも、このようなコンプリートカーは量産ラインと違って手間がかかるので割高になるのは仕方がありません。シビックもアクセスやMUGENのアフターパーツをつけたりするとかなりいい感じの値段になります。
ドイツ車(量販車)を見てみれば、だいたい下記のような価格帯です。いずれもオプションをつける前の価格です。
- メルセデス・ベンツ CLA AMG35(この前代車で借りました):866万円
- アウディ RS 3 セダン:925万円
- S3 セダンは771万円
- BMW M240i xDrive クーペは824万円
上記と比較してどうか、というところは人それぞれだと思いますが、個人的にはコンプリートカーでもあるし、ありだと思っています。
ちなみに、面白かったのはこの車の車両本体価格870万円(税込)が、私が乗っているS401の新車価格435万円(税込)のちょうど2倍だということです!何かの偶然!?

納期について
納期は未定だそうです。おそらく年末か年始ではないか、とのことでした。
※2025年7月23日追記
なんともう間もなく生産に入り、8月中には車が完成するだろうとのこと。9月登録にしたいといわれました。このところ注文から納車まで平均2年だったので、あまりの急さにびっくり。
関税の影響でアメリカ向け車両の生産計画が立てられず、その間に上期決算に間に合うよう単価の高い車の生産を優先したのかもしれません。急がねば!
スバル S210の何が魅力的だと思ったか?
とにかくいろいろ言われているこの車ですが、なぜ抽選に応募しようと思ったか、まとめたいと思います。もちろんスバルが出す純エンジンのコンプリートカーはこれが最後かも、という特殊な事情はあるにせよ、高価でも乗ってみたいなと思った理由は下記のとおりです。

・やっぱり水平対向エンジン+AWDとスポーツセダンというパッケージングは魅力的。伝統的に最低地上高も低くなく(参考値135㎜)、どこにでもいけそうな気分になる。
・ニュルブルクリンクでレースカーを走らせてきた知見がどうやって量産車にフィードバックされているか見てみたかった。スバルの車づくりはしなやかで車の動きが素直、かつ安定志向(特に今回はリアが安定)だと思うので、そうしたスバルらしい車作りが現代にどう生かされているのか興味深い。特にフレキシブルパフォーマンスホイールには興味津々!
・スバルと言えばやっぱり実用性。ファミリーカーのように使えながらいざとなると運転も楽しいのは、レガシィのころからの美点。もはやレガシィサイズのWRXも、こうした「スバルらしい」ポジショニングの車と考えればむしろこの大きさが魅力かも。たまには家族を後席に乗せて、ファミリーカーのように使いたいと思った。
まぁ、後から考えた御託みたいなものですけど。。。
スバル S210に期待すること(と不安)
改めて、スバル S210に対する期待を書いておきます。
センター付近のステアリングフィールはぜひとも良くなっていてほしい
すべてを差し置いて、一番の期待(と不安)はこれです。
WRX S4のレビュー(GT-H EX)でも書きましたが、この車で一番気になったのはここでした。センター付近のステアリングフィールの「違和感」はこの車(ベース車)の最大の弱点ではないかと思ったりしています(オーナーの方には申し訳ないですが)。

いろいろ後から考えてみましたが、この「違和感」は水平対向エンジンフロント縦置きという配置からくる特有の構造的な弱さ(タイロッドの配置が「Y字」型になり剛性が確保しにくい)よりも、「車が物理的に動き出す」タイミングと「EPS(電動パワーステアリング)のアシスト特性が変わる」タイミングの「ずれ」に起因するものなのでは?と思っています。
具体的には下記の通り:
- WRX S4はレヴォーグに比べてハンドルを切った時の車の動き出しが速い(主にタイヤのサイドウォール剛性の違い。ほかにボディ形状なども影響)
- それにもかかわらず、EPSの操舵反力(いわゆる手応え)が出始める切れ角はレヴォーグと同じ―――つまり、車の動き出しよりもちょっと大きい角度―――であるため、「車は動いているのに手応えがなくふらふらと感じる」過渡領域が残っていて気持ち悪く感じてしまう
- しかも、WRX S4はレヴォーグよりも「スポーティ」さ(ハンドルのしっかり感)を強調するため操舵反力が急に立ち上がるので、一層その「ずれ」が強調されてしまう。
―――これが現時点の個人的な結論です。
メカ側と制御側のセッティングのすり合わせがいまいち煮詰まっていないのでは、と思わなくもない、そんなもやもやした感じがあります。
今回、S210では、フレキシブルドロータワーバーやドロースティフナー、リアスタビライザーブッシュの変更、そして個人的に大注目のフレキシブルパフォーマンスホイールなど、車の「動き出し」に影響するような箇所にかなり手が入っています。




それに合わせてECU、EPSやダンパーのセッティングもやり直しているとのことです。

これらの総合的なチューニングで、ハンドルの切り始めが「すっきり」した車になっていることを祈るばかりです。
この「動き出し」の感覚は、車を楽しく感じるかに直結しますし、何よりも疲労感の違いにも表れてくると思っています。
脳は予測しながら手などの運動器官にいろんな指令を出すわけですが、その時の車からのフィードバックが予想外(≒裏切られる)だと、脳は予測をやり直して手に再度指令を出さなくてはなりません。このようにクルマから「裏切られる」ようなことが続くと脳は混乱してしまい、どんどん疲れてきてしまうのだなぁと感じています。
たかが「動き出し」ではあるのですが、そんなこんなで一番ここが期待と不安の入り混じる点、ということで一番に持ってきました。
ここさえクリアできれば、もう後はどうでもいい、という気もしています。
スバル・パフォーマンス・トランスミッション(SPT)のフィーリングももっと良くなっていてほしい
これもベース車の試乗記で書きましたが、ベース車ではオートモードでのダウンシフトの際に、トランスミッション側がこちらの動きを「待つ」感じがあるのがちょっと気になりました。トランスミッションの保護ではなく、ダウンシフトを決定するための閾値(縦・横の加速度(G)など)が高いか、Gの絶対値に加え時間の要素が入っていて、一定時間(といってもコンマ1秒とか)そのGが続かないとダウンシフトを決行しない、とかなんかそういうロジックが入っているのかも、と思います。
結果として、ワンテンポ遅いダウンシフトが入る感じでちょっともどかしかった(しかも一瞬動力が切れる「空走感」もある)、というのが個人的な感想です。

S210ではSPTの制御にも手が入っているそうなので、この辺りが「スパッ」と決まってくれることを祈っています。
スバルのような量販車メーカーでは、いろんな人がいろんな乗り方をすることを想定して、マージンが大きめの設計をしていると思います。
例えば:
- 減速Gのかかり方を見てすかさずダウンシフトをすると、運転が上手でない人が意図せずブレーキを強く踏みすぎた時などに強烈なエンジンブレーキがかかり、動きがギクシャクしてると取られてしまう
- CVTによるギアの変速・固定を速くやりすぎるとシフトショックが出すぎてクレームが出る
- 高回転時のダウンシフトにキャンセル領域を作っておかないと乱暴な扱いを受けた時にトランスミッションの耐久性に悪影響が出る
―――その結果、「なんかなぁ」という変速フィールになったりすることもあります。
ただ、S210はれっきとした「改造車」。それであれば開発側も少し思い切ったチューニングができるのでは、なんて期待しています。
ちなみに、トランスミッション保護のために発進加速時のトルクを絞るような制御もなくなっているといいなぁと思いました(スバル車の加速タイムが悪いのは変速時間の長さではなく、この制御のせいだと思っています。実際に発進加速はもたつく感じがします。)
ブレーキには期待しかない!
以前出たWRX S4 STI Sport #にも、ブレーキは標準のものを使っていました。街乗りにはもちろん不足がないものの、やはりスポーツモデルで「いいな」と思う走りをする車はブレーキのフィーリングにグッとくることが多いです。
その点、S210はしっかりと手を入れてきてくれたようです。
今回はかなりフィーリングにこだわって(電動ブレーキブースターを含め)チューニングした、とメーカーの方もおっしゃっていましたし、佐々木選手や久保選手もYouTubeで、「このブレーキは本当にいい」と絶賛されていたので、すごく期待しています。



ポルシェのブレーキも大好きですが、ストロークが短めで、細かいコントロールをするには相当な腕(足)が必要です。残念ながら私には難しい。
スバルのブレーキはもう少しストロークが大きそうなので、私のようなちょっと不器用な足でも、踏力コントロールによる車の動きの変化を味わえるのでは?と期待しています。
エンジン音とフィーリングにも期待!
FA24エンジンは、やや濁りの多い音で、個人的にはややときめきを感じないなぁというのが正直なところでした。トルクの盛り上がりも非常にリニアで、逆に言うとドラマがなく頭打ち感も強い。
が、今回はそのあたりにも手を入れているようです。吸排気系を見直し、マフラーも低背圧のものにして「抜け」が良くなっているようです。
エンジンもピークトルクはそのままながらその発生回転数が上側まで伸び(ピークトルク発生回転数が4800rpmまでだったが、S210では5600rpmまで伸びた)、ピークパワーの発生回転数も100rpmだけですが上がっています。スポーツカーにはやっぱり高回転の「一押し」が欲しいので、これで十分と感じられるかどうかはともかく、いい方向にはなっているだろうと思います。

エンジン音も、YouTubeで聴く限りなのでまったくあてにはなりませんが、心なしかクリアでくぐもりの少ない音になっているように感じました。



シートにもひそかな期待
カーボンバックのシートで、電動でシートヒーター付!?、と最初見た時はちょっとどうかと思ったのですが、よく考えるとこの車でバケットシートだったら私、買わなかったかも。サーキットメインで走らせるつもりではないためです。
そういう意味で、ある意味すごくよく練られたチョイスだと思いました。シートは合う、合わないがあるのでどうしようもない部分はありますが、少なくともシートの重要性に着目して作りこんできた、という点にはとても共感するものがあります。

この辺りも、スバルが今回の車を作るにあたって、「誰がどこで乗っても意のままに操れる」というコンセプトがしっかり通っていて、そこから各アイテムにブレークダウンしていく、という正攻法のアプローチをとっている感じが伝わってきます。
シートは運転者の姿勢を保持するとても重要パーツである一方(フレーム剛性はS208比で約3倍だそう)、拘束しすぎると拷問みたいになって長時間は辛い。シートクッションが厚ければ快適ですが、かなり重くなる。いろんなトレードオフがあるなかで仕様を決め込むので、車の性格をとても素直に表しているように思います。
それを考えると、この「一見矛盾した」シートにはとても興味を惹かれます。
早くこのクルマのコンセプトがどう具現化されているかを確かめてみたい、と思っています。

そして、なによりも「普通に走って気持ちいい」が実感できる車になっていることを期待!
今まで触れたところは、一つ一つをみれば「ちょっとした違い」でしかありません。
でも、車づくりの設計品質も製造品質も上がって、良くできた車が「当たり前」の現代、車の違いはこういう細部にこそ宿ってくると思いますし、その積み重ねが大きな違いを生むかなと思っています。
そして、何よりも重要なことは、そうした細部の違いが、一台の車として一つのコンセプトのもとにまとまっているかどうか。STIで言えば、先ほどの、「誰がどこで乗っても意のままに操れる」が実現できているか、です。

動画を見る限りリアの安定感をしっかり出している車のように見えるので個人的には期待大です。私は運転があまり上手でないこともあり、リアの安定感がある車が好きです。しっかりリアを安定させながら旋回していく、そんな車が自分の好みには合っているなぁと思います。
この記事では触れていませんが、空力もしっかりと手が入っていて、乗れば違いを実感できそうです。

正直、車のポテンシャルが高そうなので400馬力くらいのエンジンを積んでほしかったなぁと思わないこともありません。でも、ないものは仕方ない。

それであれば、徹底的に「安心で気持ち良い」車を作ってほしい。
高津益夫氏をヘッドにした開発チームは、そういった「走り」にものすごいこだわりを持っていると思うので、今から乗るのが楽しみです。
地味に「安楽さ」の極致も魅力かも
この車、アイサイトXもフルフルについていますし、ハーマン・カードンのサウンドシステムもついてます。少なくともベース車は遮音がそこそこなので、そこは惜しいところですが、単なる「安楽な車」としてもかなりいい線行っているのでは?という期待もあります。
けっこう走るけど実はかなり快適で楽、ということであればこの車、なかなかいいポジショニングかも。そんな二面性にも期待する部分もあります。
(シビックタイプRも快適性と実用性には期待した部分がありましたが、実際は家族乗せも「何とかできる」レベルだった(しかも乗車定員4名は5人家族の我が家にはそもそも向かない)ので、そこは比較してみたいなと思います。)

まとめ:期待が強くなってきた!
ともかく最初の印象がそれほど良くなく、しかも応募しても当たらないだろうと思っていたので横目にしか見ていなかった車。でも、ないものねだりをやめて冷静にいいところを味わってみよう、と心変わりしてみると、なかなかこの車、面白そうに見えてきます。
しっかり5人乗れて、スポーツカーなのに最低地上高も低くなく、4輪駆動でどこへでも気兼ねなく行けて、運転支援もついていて安楽。
一方、走ればおそらくタイヤが路面をつかみながらリアが粘り、車の動きが穏やかで予測しやすい。4輪駆動なので特にカーブ脱出時の安定感は完璧だし、後輪への駆動配分も大きめなので「蹴りだし」感もある。官能的とは言えないまでも、スバル独特の水平対向4気筒サウンドもする。
とても運転が楽で、それでいて速い。スパイスも効いている。そんなイメージです。
運よく当てていただきましたので、ぜひ楽しみたいなぁと思います。

納車直後のレビューは下記:










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