前々からニュルブルクリンクでの公式タイムアタック動画を見ていて、車によってステアリングやドライバーの頭の動きなどに違いがみられるのが気になっていました。

そこで、まずは主要コーナーを中心に通過タイムをとってみよう、と思ってYouTubeとにらめっこしながら記録してみましたので共有します。

なお、各地点の通過タイムは、私がYouTubeの車載動画(カメラの設置位置や画角、さらにコースも改修されて異なっています)をもとに、各地点に目印を決めてそこを通過したであろうタイムを採っていくという、非常にアナログな方法をとっておりますので、多少の誤差がある可能性は否めません。あくまでも参考程度にしていただければと思います。

各車の車載動画URL

まずは、公式タイムアタック動画のURLを掲載しておきます。

コースマップ

ニュルブルクリンク北コース(Nordschlife) コースマップ(2013)
ニュルブルクリンク北コース(Nordschlife) コースマップ(2013)(Wikipediaより転載)

各地点でのタイム(独自計測)

ポルシェ 911 GT3(992.1)と718 ケイマン GT4 RS

 911 GT3(992.1)718 GT4 RS
地点名通過速度タイム通過速度タイム差異
Sabine-Schmitz-Kurve79 79  
Hatzenbach1120:24.11110:24.60.5
Hocheichen1070:37.91000:38.60.7
Flugplatz1900:53.11870:53.80.7
Kottenborn※2751:10.7※2741:11.60.9
Schwedenkreuz216 212  
Aremberg1041:22.7841:23.91.2
Fuchsrohre※2701:35.2※2591:36.61.4
Adenauer Forst831:42.7801:44.31.6
Metsgesfeld1842:00.21802:02.01.8
Kallenhard942:14.9882:17.22.3
Wehrseifen742:35.6692:38.83.2
Breidscheid118 113  
Exmuhle1222:53.31142:56.73.4
Bergwerk1123:08.71003:12.53.8
Kesselchen※2533:33.8※2523:37.73.9
Multkurve200 181  
Klostertal2033:48.21893:52.54.3
Karussell924:05.7864:10.54.8
Hohe Acht1464:26.71414:32.55.8
Wippermann147 148  
Eschbach1354:47.51244:53.96.4
Brunnchen1224:59.01165:05.86.8
Eiskurve1115:11.71155:18.77.0
Sprunghugel1575:22.81475:29.97.1
Stefan-Bellof-S※247 ※241  
Schwalbenschwanz1135:55.11026:03.28.1
Galgenkopf1536:04.41436:12.98.5
Audi-Brücke 6:17.8 6:26.68.8
Antoniusbuche※2866:40.9※2836:49.78.8
ゴール 6:59.93 7:09.309.37
単位:速度は㎞/h。タイムはm:ss.0。差異はs.0。※は最高速。その他はコーナーでの最低速を記載。718における「差異」は、911とのタイム差。独自に目印をつけて通過タイムを計測しているため、公式のスプリットタイムとは異なる。なお、地点名も大まかな目印として記載

VW ゴルフ エディション50とホンダ シビック タイプR(FL5)

 GTI エディション50シビック タイプR(FL5)
地点名通過速度タイム差異通過速度タイム差異
Sabine-Schmitz-Kurve76  77  
Hatzenbach970:26.21.6960:26.60.5
Hocheichen940:41.42.8960:41.80.4
Flugplatz1760:58.44.61740:58.90.5
Kottenborn※2551:17.55.9※2491:18.30.8
Schwedenkreuz207  196  
Aremberg881:30.56.6911:31.51.0
Fuchsrohre※2461:44.27.6※2371:45.51.3
Adenauer Forst761:52.68.3711:53.71.1
Metsgesfeld1632:11.79.71562:12.81.1
Kallenhard852:28.511.3912:29.20.7
Wehrseifen572:51.712.9602:52.00.3
Breidscheid101  107  
Exmuhle1043:11.514.81113:11.70.2
Bergwerk963:28.516.0733:29.00.5
Kesselchen※2233:56.919.2※2323:57.10.3
Mutkurve170  167  
Klostertal1874:12.920.41894:13.00.1
Karussell784:31.921.4684:32.20.4
Hohe Acht1214:55.523.01274:56.10.6
Wippermann135  136  
Eschbach1235:18.724.81155:18.6-0.1
Brunnchen1005:31.725.91155:31.5-0.2
Eiskurve1005:45.727.0985:45.5-0.2
Sprunghugel1375:57.627.71385:57.70.1
Stefan-Bellof-S※224  ※221  
Schwalbenschwanz916:33.430.2866:33.50.1
Galgenkopf1426:43.730.81446:43.5-0.2
Audi-Brücke 6:58.531.9 6:58.2-0.3
Antoniusbuche※2657:24.034.3※2587:24.20.2
ゴール 7:44.52335.22 7:44.8810.358
単位:速度は㎞/h。タイムはm:ss.0。差異はs.0。※は最高速。その他はコーナーでの最低速を記載。ゴルフGTIにおける「差異」は、718とのタイム差。シビック タイプRにおける「差異」は、ゴルフGTIとのタイム差。独自に目印をつけて通過タイムを計測しているため、公式のスプリットタイムとは異なる。なお、地点名も大まかな目印として記載。タイプRのコーナリング速度は著しく低く測定されることがある印象。

各車両のスペック

911 GT3(992.1)

  • 全長×全幅×全高: 4,573 × 1,852 × 1,279 mm
  • ホイールベース: 2,457 mm
  • 車両重量: 1,435 kg(DIN空車重量 / PDK仕様)
  • 最大出力: 375 kW (510 PS) / 8,400 rpm
  • 最大トルク: 470 Nm / 6,100 rpm
  • 使用タイヤ・サイズ:
    • ミシュラン パイロットスポーツ カップ2 R(ミシュラン社共同開発の承認タイヤ)
    • フロント:255/35 ZR20 / リア:315/30 ZR21
  • 前後重量配分: 約39:61

718 ケイマン GT4 RS(982)

  • 全長×全幅×全高: 4,456 × 1,822 × 1,267 mm
  • ホイールベース: 2,482 mm
  • 車両重量: 1,415 kg(DIN空車重量)
  • 最大出力: 368 kW (500 PS) / 8,400 rpm
  • 最大トルク: 450 Nm / 6,750 rpm
  • 使用タイヤ・サイズ:
    • ミシュラン パイロットスポーツ カップ2 R
    • フロント:245/35 ZR20 / リア:295/30 ZR20
  • 前後重量配分: 約44:56

フォルクスワーゲン ゴルフ GTI エディション50

  • 全長×全幅×全高: 4,284 × 1,789 × 1,441 mm(標準GTI比、パフォーマンスpkg適用で約-20mmローダウン)
  • ホイールベース: 2,631 mm
  • 車両重量: 1,394 kg(オプションの「パフォーマンス・パッケージ」適用による最軽量状態 / DIN空車重量 約1,419kg)
  • 最大出力: 239 kW (325 PS) / 5,500 – 6,700 rpm
  • 最大トルク: 420 Nm / 2,000 – 5,400 rpm
  • 使用タイヤ・サイズ:
    • ブリヂストン ポテンザ レース(セミスリックタイヤ)
    • 235/35 R19
  • 前後重量配分: 約61:39(FF駆動方式)。
  • 特記事項: 電子制御フロントデフ「VAQ」に加え、ネガティブキャンバーを-2°に強化した専用ハブ、およびアクラポヴィッチ社製チタンマフラーを含む「パフォーマンス・パッケージ」を装着

ホンダ シビック タイプR(FL5)

  • 全長×全幅×全高: 4,595 × 1,890 × 1,405 mm
  • ホイールベース: 2,735 mm
  • 車両重量: 1,410 kg(欧州仕様「タイプR-S」:エアコン等を省いた軽量モデル、日本仕様は1,430kg)
  • 最大出力: 243 kW (330 PS) / 6,500 rpm
  • 最大トルク: 420 Nm / 2,600 – 4,000 rpm
  • 使用タイヤ・サイズ:
    • ミシュラン パイロットスポーツ カップ2 コンバート(共同開発の特注タイヤ)
    • 265/30 ZR19
  • 前後重量配分: 約62:38
  • 特記事項: 国内仕様より約20kg軽い欧州限定の「Type R-S(Sグレード)」に、ディーラーオプション扱いの「カップ2」タイヤを装着してタイムアタックを実施

走りに関する主観的な差異

ポルシェ(MR、RRモデル)vs FFモデル

  • MR、RRモデルは修正舵が小さく、FFモデルの方が相対的に大きく見えます。

FF車ではフロントタイヤが駆動するため、トルクステアが出て進路が乱されやすいなどの影響もあるかもしれません。その他車に固有の要因(後述)がありそうです。

  • タイヤの泣きに関してはFFモデルが大きく、次いでRR、MRの順になっているようです。

FF車は重量バランスが前に偏り、さらにフロントタイヤでコーナリングからトラクションまですべてを担うためにフロントタイヤの負荷がかなり高いと思われます。

  • ドライバーの頭部の動きは、車種による違いが大きいものの、概してFFモデルの方が相対的に大きく見えます。

エンジンが前にないMR、RRの場合はフロントサスペンションのスプリングが担う荷重が小さいため、比較的脚を柔らかめにして路面の荒れを「いなす」ことができるのが効いているように思います(911 GT3の前前軸重はおそらく560㎏前後、タイプRは870-880㎏前後)。

911 vs 718

  • すべてのセクションでほぼ同じようなタイム差を刻んでいます

同じエンジン(排気の取り回しの関係でピークパワー、ピークトルクは若干異なる)、同じタイヤ、同じような空力セッティングのためだと思われます。

  • ほぼ全コーナーで911の方がコーナリング速度が高くなっています。特にアップダウンを伴う高速コーナーでは、911の方が速いように見受けられました(例:上り直線後に現れる緩やかな右コーナーKlostertalでは911 203km/h、718 189km/h)。

サスペンション形式とタイヤ幅、トレッドの違いが効いていそうです(リアタイヤ幅は911が315、718は295)。

  • トップスピードは911と718でそれほど変わりがないようです(最後の直線の最高速は911 286 km/h、718 283㎞/h)。

似たような空力セッティングのためかと思われます。

(ただし、前半に出てくるすり鉢状に下りながら右にカーブを描くFuchsrohreのようなコーナー(911 270km/h、718 259km/h)と、アップダウンがミックスするような区間(Pflanzgartenの後半など)では911の方が速いようです(911 247km/h、718 241km/h))

ゴルフ GTI vs シビック タイプR

  • 全体に、ゴルフ GTIが前半の下りでリード、後半の複合コーナーでタイプRに逆転され、最後の直線で逆転するというスリリングな展開になっています。
  • ストレートでの最高速を見ると、車が不安定になるツイスティな「半直線」ではタイプRに軍配が上がるものの、最後の直線を含む全開加速区間では明確にゴルフGTIの方が最高速が高くなっています(例:最後のストレートAntoniusbuche付近の最高速はゴルフGTI 265km/h、タイプR 258km/h)。
  • 一方でコーナリング、特に下りでの中高速コーナリングではタイプRの方が速そう。(例:Brünnchen(別名YouTubeコーナー)ゴルフGTI 100km/h、タイプR 115km/h)ただし、タイプRは何が原因かわかりませんが、コーナリング速度が実際よりかなり低く出る時があるように感じました。ゴルフGTIでもやや異常値のような値がみられました)

おそらく、ゴルフGTIはダウンフォースは小さめ(外見上も大きなリアウィングがないなど、空力パーツは控えめ)。その代わり直線での速度の伸びを利用してタイムを稼いでいる印象。7速DSGのギア比設定と変速スピードも効いていそうです。

対してタイプRはダウンフォースで車を路面に押し付けながら速く安定したコーナリングを引き出しているようです。トレッドの広さ、極太タイヤもコーナリングスピードに効いていそうです。

もう少し細かく、両車の違いを見てみます。

  • 上り坂ではタイプRの方が有利のよう。

ゴルフGTIの方がピークパワーがちょっとだけ小さいことも影響しているかもしれません(ゴルフGTI 325PS、タイプR 330PS)

  • 上り坂ではゴルフGTIの方がコーナー脱出時の速度の回復が速いように見えます

フロントタイヤの位置も関係しているのか(ホイールベースも違う)、タイプRの方がトラクションがかかりにくいのかもしれません

  • 頭部の揺れはゴルフGTIの方が小さく、修正舵はゴルフGTIもタイプRも(MR、RRの前述2車に比べて)多めに見えます。

ゴルフGTIには「スペシャル(Special)」プロファイル(またはニュルブルクリンク・ドライビングプロファイル)が搭載されており、ニュルブルクリンクに最適化された(減衰力が弱めの)ダンパーセッティングモードがあります。この効果のためか、タイプRに比べて明らかに「跳ねる」動きが少ないように思います。その結果、頭部の揺れが小さく見えるのかもしれません。

修正舵については、ゴルフGTIの方もシビック タイプRも多めですが、修正舵を入れる理由は少し異なるかもしれません。

ゴルフGTIはリアを少しムズムズさせることで回頭性を上げるタイプの車と聞いています。おそらく制動力の伝達とそのあとのトラクションでいっぱいいっぱいになっているフロントタイヤに、様子を見ながら少しずつ修正舵を入れてリアの流れ(実際に流れるわけではないが)をコントロールしているように思います。

一方のタイプRは、硬い脚のため、たまにトラクションが抜けたりしていそうです。そのたびに、修正舵を入れて進行方向の微修正をしているのかな、というふうにも思います。

―――タイムはかなり似通った車でも、特性はけっこう違う。その点がみられる面白いオンボード映像でした。

それにしても両車後半になっても速度が遅くなることもないところを見ると、熱対策はやっぱりすごいんだなぁと感心しました。

そして、どちらも見ているこちらが疲れてしまうほどの激しい音と動き。リアルの世界でこのスピードで走るドライバーのすごさをまざまざと見せつけられました。

まとめ

ポルシェ 911 GT3(992.1)、ポルシェ 718 ケイマン GT4 RS(982)、フォルクスワーゲン ゴルフ GTI エディション50、ホンダ シビック タイプR(FL5)の、ニュルブルクリンク北コースでのタイムアタック映像を見てみました。

タイム以上に、車の動きなど、いろいろな違いがみられたところがとても面白かったです。

え、なんでタイムアタックの分析にこの車を選んだのかって!?その答えは、きっと2年ほど後に。笑

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