私の一番の愛車、ポルシェ 718ボクスター GTS 4.0の紹介をします。718ボクスターは私の人生を変えたと言っても過言ではない車で、最初に買った素の718ボクスターを含めて足掛け6年乗り続けています。

ポルシェ 718ボクスターとの初めての出会い

ポルシェ 718ボクスターは、一念発起して初めて買った自分の趣味の車です。

2017年、仕事を変えた私は、そろそろ仕事一辺倒の人生から趣味も楽しむ人生にしたいと思っていました。昔から車が好きだったこともあり、2台持ちの生活に踏み入れようと決心しました。

最初は家族も乗れるオープンカーを探し、BMW4シリーズやベンツCクラスのカブリオレを検討していたものの、妻から「オープンカーの後ろの席なんて風が強くて誰も乗らないよ」の一言。家族は5人なので、そもそも4人乗りでも全員乗れないし。。

ポルシェは、1980年代のプロトタイプカーのレースなどで強かったこともあり、当時日本車を応援していた私にとっては、ちょっと憎い敵みたいな感じがしてみました。でもせっかくだからと718ボクスターに試乗したところ、筆頭候補になってしまいました。

ポルシェ 718ボクスターのエクステリア。ホームページより。
ホームページより

初めて試乗した時の感動

ポルシェ718ボクスターに初めて試乗した時、駐車場から出るだけでタダ者でないことが伝わってきました。着座位置はスポーツカー然として低く、水平対向4気筒のビートのきいたエンジン音がシートのすぐ後ろからする。そして走ってみると、サスペンションのような緩衝材なしに路面にへばりついているみたい。そしてハンドルを少し切ると車がすっと向きを変える。慣性なんてないかのよう。それでいて乗り心地もいい。なんか矛盾の固まりみたいに、すべてが良い。ブレーキのタッチもすごくよくてもう天国にいるみたいでした。それが718ボクスターとの最初の出会いでした。

「これこそが私が乗りたかった車では?」と感激してしまい、妻の「好きな車に乗ればいいよ」という後押しもあり、念願の趣味の車として我が家に迎え入れたのでした。

ポルシェ 718ボクスター。納車前のカバーがかかった状態
718ボクスター、納車前の雄姿。まだカバーをかけられた姿を見てワクワクしたものです。

718ボクスターを手に入れて

5年間、本当に大活躍してくれました。2020年からはコロナになった関係で、リモートワーク中に東京にある職場に通勤するようにもなりました。ドライブに通勤、買い物、家族の送迎と何かあれば引っ張り出し、乗っていました。

ポルシェ 718ボクスター。高ボッチ高原にて
ほんとにいろんなところに行きました。写真は高ボッチ高原。

一生乗ろうと思っていたのですが、4年経った頃、いよいよ718ボクスターがこのモデルで終わり、次はEVになるという情報が入ってきました。迷った挙句同じ718ボクスターの6気筒モデルに乗りかえることにしたのでした。

(注文から生産枠確定、納車までの経緯はこちらにまとめています)

718ボクスター GTS 4.0:どんな車?

さて、そんな718ボクスター GTS 4.0を少し詳しく見ていきたいと思います。まずはボクスターの歴史をちょっとだけ。

ポルシェ・ボクスター(986):ポルシェを救ったオープンカー

ポルシェ・ボクスターのコンセプトモデルが発表されたのは1993年。当時ポルシェは深刻な経営難に陥っていて、その起死回生策として、911と多くの部品を共用したモデル、ボクスターが企画されたようです。当時ユーノス・ロードスターが火をつけた、オープンスポーツカーのブームに乗る形で登場しました。911に先駆けて水冷エンジンが発表されたところもセンセーショナルでした。

市販化は1996年。911に比べてかなり安い価格設定もありヒット、ポルシェの経営を救ったのでした。

ポルシェ・ボクスター(986)。かっこいいですなー!メーカーホームページより。

718ボクスター(982): 物議をかもした4気筒化

718ボクスター(982型)は、986型から数えること4代目で、2016年に発売されました。2012年に発売された981型の改良型といってよいモデルです。ボディシェルは981型で大幅にリニューアルされ、ボディの46%程度(ホワイトボディ)がアルミニウムになり、軽量化されました。(ポルシェはオールアルミにはせずに、超高張力鋼板なども適材適所に使う、マルチマテリアル化の方向に舵を切っている。詳しくはこちらで紹介しています)。

ポルシェ718ボクスターのエクステリア。プレスキットより

982型の一番のポイントは、エンジンが水平対向6気筒自然吸気エンジン(NA)から、同じく水平対向4気筒ターボエンジンに代わったことです。当時は特に長年のポルシェファンから否定的な意見が多く出て話題になりました。笑

ポルシェ356とか、4気筒だったんですけどね。。

718ボクスター GTSは、2018年に追加されたグレードです。基本的にはGTSというグレードは、走り系の装備を一通り標準装備して、エンジンをちょっとだけチューンしたモデル、という位置づけです。当時は718ボクスターSの2.5L4気筒ターボエンジンを少しだけチューンし、走りの装備を中心に充実させて発売しました。

718ボクスター GTS 4.0: 6気筒を積んだ万能選手

その後、2020年に、先に出ていた718ケイマンGT4/718スパイダー用の4.0L水平対向6気筒NAエンジンをデチューンしたエンジンを搭載したモデルに切り替わりました。718シリーズに再び6気筒エンジンが積まれる、しかもNAエンジンということで、メディアは総じて歓迎ムードでした。

位置づけとしては、GT4/スパイダーほど走りに振らない(たとえばGT4/スパイダーはミシュランパイロットスポーツカップ2タイヤを履いている)一方で走り用の装備は一通り標準装備し、サーキットから街乗りまでオールマイティにスポーツ走行できる万能選手、という感じです。もっともポルシェらしい(?)グレードかもしれません。

ポルシェ 718ボクスター GTS4.0のエクステリア。プレスキットより

718ボクスター GTS 4.0:スペック

簡単にスペックを見ておきましょう。

全長×全幅×全高(㎜)4390×1800×1275
ホイールベース(㎜)2475
トレッド 前/後(㎜)1525 / 1535
車両重量 前/後/合計(kg)650 / 870 / 1470
前後重量バランス44.2:55.8
最小回転半径(ⅿ)5.2 (5.5の表記もあり)

注目してほしいのがボディサイズ。全長4,390㎜×全幅1,800㎜×全高1,270㎜。けっこうコンパクトだと思います。スバル BRZ / トヨタ GR86よりちょっとだけ大きいくらい。

初代ボクスター(986世代)のサイズが全長4315㎜×全幅1780㎜×全高1290㎜ですので、20年の間に全長で75㎜、全幅20㎜と、それほど大きくなっていません。初代ボクスターの方が丸くてかなり小さく見えるのですが、じつは718(982世代)になってもあまり大きくなっていないのです。

また、幅も1800㎜と現代のスポーツカーにしてはかなり細身。これが普段使いの楽さにつながっています。普段使いのレビューは別途しています

小回り性能もなかなかで、いわゆるパラレルステアリングという機構のため極低速(数km/h)でゴリゴリという、外から聞いてもびっくりするような音を立ててしまうものの、コンパクトカー並みの小回り性能を持っています。

つづいてエンジン関係。こちらは別途詳しくレビューしています

エンジン形式9A2 evo
エンジン種類水平対向6気筒
ボア×ストローク(㎜)102.0×81.5
総排気量(cc)3995
最高出力400ps(294kW)/7000rpm
最大トルク430Nm(43.8kgm)/5500rpm

GTSモデルは、2020年まではSグレードと同じ水平対向4気筒2.5Lターボエンジンを搭載し、若干チューンアップして搭載していましたが、2020年末から水平対向6気筒4L自然吸気(NA)エンジンに変わりました(税制の異なる中国ではそのままターボモデルが継続販売)。

単純に速さだけを比べればほぼ同等のようで、自然吸気でターボと同等の速さ(ピークパワーだけでなく中間トルクも含める)を得ようとすると1.5倍以上の排気量を用意しないといけないのですね。

続いて足回り。こちらも別途詳しくレビューしています

サスペンション形式(前)マクファーソン・ストラット
サスペンション形式(後)マクファーソン・ストラット
ブレーキ(前)ベンチレーテッドディスク+対向6ポットキャリパー
ブレーキ(後)ベンチレーテッドディスク+対向4ポットキャリパー
タイヤ(前)235 / 35 ZR 20
タイヤ(後)265 / 35 ZR 20
駆動方式ミッドシップ

718ボクスター GTS 4.0:エクステリア

デザインを見ていきましょう。

718ボクスター(982)は、2012年に登場した981型ケイマン/ボクスターの進化版となっていて、好きな人でないとあまり違いは判らないかもしれません。

ポルシェは伝統的にクラシックなフォルムをしていて、718ボクスターもそのデザインのコンセプトを持っています。バウハウスのミニマルなデザインの影響は強いようで、昔からあまりごてごてしたプレスラインとかを使わないのが特徴です。

個人的には、ポルシェらしいシルエット、クラシックなラインを残しながらも、直線的なプレスラインからは現代的な印象も受け、適度にモダンな感じがするところが好きです。

スポーツカーメーカーらしく空力はいつも凝っていて、718の中でもグレードにより少しずつリップスポイラーそのほか細かいところまで形状が違っています。どちらかというと空気抵抗を極限まで減らすというよりは、ダウンフォースを稼ぐ方向にデザインしているので、Cd値だけを見ると0.31〜0.32と、それほど良くありません。ただ、前面投影面積が小さいため、全体としては空気抵抗は小さいようです。

ちなみに、私の718ボクスター GTS 4.0のボディーカラーは「ゲンチアンブルーメタリック」です。なかなか見ない色ですが、個人的には見る時間や天気によって表情が変わるところが大好きです。718ボクスターのボディーカラーは「ナイトブルーメタリック」。こちらは渋い、黒に近い紺色です。

ポルシェ718ボクスターGTS 4.0:「ゲンチアンブルーという色」を見る)

ポルシェ 718ボクスター GTS4.0のエクステリア
全体的に丸みを帯びたデザイン。要所要所にプレスラインが入りますが、どれもが空気の誘導を考えた合理的なもの。無駄がないなぁ。
ポルシェ 718ボクスター GTS4.0のエクステリア。左斜め後ろから。
ポルシェ 718ボクスター GTS4.0のエクステリア。リアビュー。
リアも全体に丸みを帯びてフェンダーが張り出しているのですが、上部には2本鋭いプレスラインがあります。これがあるのでクラシック過ぎないのかも。
ポルシェ 718ボクスター GTS4.0のエクステリア。リアのプレスライン
プレスライン(トランクリッドに並行した縦のライン)が入ったところ

718ボクスター GTS 4.0:インテリア

乗り込んでみましょう。

着座位置はスポーツカーとしてはたぶん普通くらいで、マツダロードスター(ND)よりはちょっと高く、BRZ/GR86よりは少し低いくらいだと思います。ただ、座面の高さの調節範囲は広く、チルト・テレスコピックの可動範囲も大きく、誰でもかなり良いポジションは得られると思います。

見渡すとエンジンが前にない分、前方視界がとても良い。ミッドシップならではの良さだと思います。幅も1800㎜とそこまで広くないため、扱いやすいと思います。このあたりの実用性はポルシェの良さだと思います。

室内空間は、適度にタイトですが、ロードスターに比べるとかなり広々。(※ロードスターより良い、と言っているわけではないですよ)。Aピラーとの距離もそこそこあるので、オープンにした時の解放感もまずまずです。

ステアリングホイールは、非常に触感が良く、太すぎず握りやすいです。前車は3.6万km乗りましたが、表面がてかてかになることもなくとてもいい状態を保っていました。5年しか試せてないので断定はできませんが、耐久性についても比較的良いのではないかと思います。

その他内装については、非常にシンプル。走ることを中心に考えられています。ただ、使い込んでいくとこれが感心するくらい良いのです。これは別の機会に触れたいと思います。

ポルシェ718ボクスター GTS 4.0:「ここがいい」編(納車1年後レビュー)を読む)

ポルシェ 718ボクスター GTS4.0のインテリア。メーター
ポルシェ 718ボクスター GTS4.0のインテリア。シート
ポルシェ 718ボクスター GTS4.0のインテリア。コックピット
ポルシェ 718ボクスター GTS4.0のインテリア。ステアリングホイールとメーター

718ボクスター GTS 4.0:走り

低速コーナリング、高速コーナリングどれも的確にこなしてくれます。ベースグレードとGTS 4.0だとLSDの有無などで若干の差はあるのですが、何より前後重量バランスやホイールベースなど、素性の良さが際立っていると思います。なので、曲がりやすいですよー、という演出なども皆無でとにかく自然。非常に姿勢も安定していて、安心してコーナーを駆け抜けることができます。(もちろん911と比べると劣る、という話はあるのですが、それはニュルブルクリンクをプロが限界走行した時に感じる違い、と思ってよいと思います)

高速も、2475㎜という短いホイールベースの割に直進安定性は良いです。もちろんロングホイールベースのセダンに比べると若干落ちるかなとは思います。やはり風の処理が上手だからでしょうか。高速での長距離移動はとても楽です。

水平対向6気筒エンジンのフィーリングはとても良いです。これについても書き出すと長くなりそうなので、詳細は納車後1年のレビューで書きますね。

(エンジンの詳しい紹介はこちら

ブレーキ。これは本当に良いです。クローズドコースでフルブレーキングを何度か試してみましたが、まぁ何事もなかったようにスッと止まります。ブレーキキャリパーのたわみなども全く感じられず、とにかくしっかりしている、という感じがします。

あと、特筆すべきは雨の日の走行で、非常に安心感があることに驚かされます。先にも書いた視界の良さ、前後重量バランスの良さなどによって、けっこうリラックスして走れるのです。実際に某雑誌連載のつくばのタイムアタックでも、雨の中結構なタイムで走っていました。

(走行性能の詳しい紹介はこちら

ポルシェ 718ボクスター GTS4.0のインテリア。コックピット
コックピット。無駄がなく運転に集中できます

まとめ:すべてが「ちょうどいい」車

ポルシェに乗っているうちに気づいたのは、ポルシェのすごいところはどこか一点すごい、ということではなく、すべてがとても良くバランスしている、ということです。ポルシェはレースの世界でも、昔からプライベーターのアマチュアに車を提供してきて、その中で「誰でも安全に、安心して速く走れる」ことを追求してきたメーカーなんだと思います。それもあってなのか、エキセントリックなところが全然ありません。

速くて走行性能が素晴らしいのは当たり前で、その上で視界もよい、誰でも運転しやすい、乗り心地もよい、安定感もある、運転して疲れにくい、壊れにくい、そんな優等生的なところがあると思います。これが逆に「刺激が足りない」「面白みがない」と言われる所以なのかもしれませんが、私はポルシェの、こうした優等生的なオールマイティさ、何より安心して速く、を追求する姿勢に共感を覚えます。

全体として、化学調味料を使わずに、素材を丁寧に料理していくとこんな感じになるんじゃないか、と思うような、自然な、素材の味で勝負しているような車です。マツダロードスターもそうですが、同じコンセプトの車を長年つくり続けてくると、すべてのものが「ちょうどいい」感じになって馴染んでくるんじゃないかなぁ、そんな気にさせられました。

ポルシェ 718ボクスター GTS4.0のエクステリア
これからも末永く付き合っていきたいと思います

なお、納車1年後レビューとして、エンジンや走行性能など、各要素を掘り下げた詳細レビューをしています。よろしかったらぜひこちらもご覧ください。

ポルシェ 718ボクスター GTS 4.0詳細レビュー:

エンジン編

「走り」編

「ここはちょっと」編

「ここがいい」編

選んで良かったオプション(番外編)

718ボクスターと718ボクスター GTS 4.0の比較

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