ポルシェ718ボクスター GTS 4.0の詳細レビュー、2回目は「走り(走行性能)」について、718を6年間乗り継いだ現オーナーが、ベースグレードとの違いを織り交ぜながら紹介したいと思います。
718ボクスター GTS 4.0についての全般的な魅力紹介はこちらをご覧ください。
718ボクスターの走り(全般インプレッション)
前回はエンジンについて書いたので、今回はそれ以外の走り(走行性能)全般について書きます。
ことわりがない時は718ボクスター全般について、GTS 4.0に特有の性能の場合には明記します。
718ボクスターは、とにかく素直な、良く曲がり、良く止まる車、というのが全体の印象です。重心が低く、路面にへばりついたように曲がる。それでいて直進安定性も低くなく、高速道路でもべったりと路面に吸い付いているよう。
ミッドシップエンジンですが、鼻先が軽すぎて怖い、ということもないですし、かといってアンダーステア過ぎて曲がりにくい、というわけでもない。基本は限界域に行くまではいたってニュートラルです。
限界域ではどうでしょうか?GTS 4.0で、ドリフトサークルで試してみました。少しずつ加速していくと、フロントがムズムズしだしてアンダーステアになり、そのあとお尻がきゅっと出てオーバーステアになります。限界付近に来ているというサインは非常にわかりやすいです。

ただし、オーバーステアになるときは急に来るので注意。ミッドシップならではの、限界までは非常にコントローラブルだけど、限界を超えると難しい、という感じでした。とはいえ、あまり多くの車で限界域を試したことがないので、今後もう少し経験を積みたいと思います。
(同じ場所で911と718を同時に試した友人から、「911の方が簡単にドリフトできましたよ」との報告を受けました。私も試してみたいです)
ボディ骨格
981型からアルミニウムを多用したボディ骨格に
718シリーズ(982型)のボディ骨格は基本的に先代981型(2012年)からのキャリーオーバー。軽量化のためにアルミニウムの使用比率を46%(ホワイトボディ)まで高めています。

外板パネルはフロントボンネット・リアトランクリッド・ドアパネル・フロントフェンダー、構造材としてボディ前半部の大半・フロアパン・バルクヘッド・ドアフレーム・ロールオーバーバーの取り付け部など、広範囲にアルミニウムが使われています。
ただ、ポルシェに限らず最近は適材適所で素材を組み合わせるマルチマテリアル化が進んでいます。鉄の性能も相当上がり加工精度も高いことから、鉄も再評価されているよう。必ずしもアルミニウム使用比率が高いことが良いということでもないようです(カーボン等、もっと軽い素材もありますしね)。30年前にホンダNSXがオールアルミボディで登場した時はセンセーショナルでしたが、今はちょっと進化の方向は違うようですね。
ちなみに、981型、982型でもサイドシルインナーからドアのインパクトプロテクション、Aピラーなど、衝突安全性の担保が必要な箇所には鋼板(性質も様々)が使われているようです(図の黄色、ピンク)。
ボディ剛性は981型で大幅向上
もともとオープンボティにしては剛性の高かったボクスター(987型では、静的ねじり剛性は幌を閉じた状態で12,200Nm/deg)。981型では40%向上したとのこと(982型については見つけられず)。ちなみにケイマン(981型)の静的ねじり剛性はこの2.5倍、曲げ剛性で2倍とのこと。屋根がいかに剛性にかかわっているかがわかります。
ただ、ミッドシップのため座席のすぐ後ろに構造材を入れられることからオープンカーにしては剛性は出しやすいようです。
前後重量配分は986型に比べてリアヘビーに
718ボクスターの車検証の重量を比較してみます(いずれもPDK)。
GTS 4.0が前軸重650kg、後軸重820kgの合計1,470kg。前後重量配分は44.2 : 55.8 。
ベースグレードが前軸重620kg、後軸重770kgの合計1,390kg。前後重量配分は44.6 : 55.4。
718シリーズはトランスミッションがかなり後ろにあることもあり(911とレイアウトが反転している)、ミッドシップの車の中でも比較的リアが重くなっているようです。
特に、981型からはホイールベースが60㎜拡大し、どちらかというと重量物のある後ろ側が伸びていたり、後部の衝突安全対応で大きな部品の材料を鉄に戻したりしているため、徐々にリアヘビーになってきています(初代986ボクスターの前後重量配分は47:53)。

シャシー
走り(走行性能)に大きな影響を与える足回りは、フロント・リアともにストラット式サスペンションに、PASM(ポルシェ・アクティブ・サスペンション・マネジメント。電子制御ダンパー)が組み込まれています。GTS 4.0は標準、ベースグレードはオプション。(私はベースグレードにもオプションでPASMをつけていました)
前後マクファーソン・ストラット式サスペンション
ポルシェはサスペンションとして、伝統的にフロントにマクファーソン・ストラット式、718シリーズはリアも同形式を使っています。
メリットは、構造がシンプルで軽量なこと、縦方向のストロークが大きくとれること、横方向にコンパクトなことと言われています。
もともとボクスター(986型)は軽くて(何せユーノス(マツダ)ロードスターが軽量なオープンカーという市場に火をつけたので、みな躍起になっていた)、オープンで走りを楽しみながら旅行にも行ける車、というところから始まっているので、軽さ、荷室の確保のメリットを優先したように思います。
ポール・フレール署「ポルシェ ボクスター ストーリー」には、ボクスターが前後マクファーソンストラット式(の変形)を採用した理由として下記の記載があります。
(1)前後方向のコンプライアンスが大きいため、ハーシュネスの軽減能力に優れ、かつそれに過度なキャスター変化を伴わない
(2)前後のラゲッジスペースへの張り出しが少ない
(3)路面からの小さな入力に対する応答性が良好で、低速度での快適性に優れる
(4)クロスメンバーを車体の前部および後部への衝撃を吸収する構造体の一部として使用できる
(5)サスペンション全体をひとつの自立したモジュールとして生産できる
またストラット式サスペンションの構成部品の少なさと重量の軽さも重要な要素である
リアサスペンション周りをもう少し細かく見てみる
ストラット式サスペンションは横方向の力に弱いとはよく言われます。しかし、ポルシェは718シリーズにおいてはGT4カーである718ケイマンGT4RSクラブスポーツまで同形式を使っています。
982型のリアサスペンションは、基本的に981型のキャリーオーバー。
982型のリアサスペンションの図解が見当たらなかったので、981型のものを掲載しておきます。パッと見ただけでも、987型よりも「ゴツい」感じです。

サスペンション各部の名称は人によって違うのでややこしいのですが、私の理解した範囲だと下記の通り(「981型から」、という記述は981型で新規に採用、という意味です)。以下、「ポルシェ・ボクスターのすべて」や前述の「ポルシェ ボクスター ストーリー」など複数の書籍などを元に、私の理解に基づいて書いています。
なお、サスペンションは単体よりもその取り付け側の剛性が性能に大きく影響するらしいため、サブフレーム等取り付けられる側についても触れています。
・①クロスメンバーパネル:リアサブフレームを構成するかなり大きな部品。この上にクロスメンバーやサスペンションの取り付け部が載る。面で横方向の動きを規制している。981型から板厚を増して剛性を強化
・②ダイアゴナルストラット:前方からクロスメンバーパネルを支える2本の太い棒状の部品。981型から、衝突安全の要求により987型までのアルミ合金から鋼板に変更(鉄のほうがアルミより衝撃吸収力があるそう)
・③アームマウント(サイドセクション):アルミ合金製。981型から新形状になり、ここに取り付けられる④トーコントロールリンクと⑤ラテラルリンク(I型をしている)の取り付け剛性を強化(横変形を抑制)
・ラテラルメンバー:図にはありませんが、982型からリアスタビライザーを覆うようにラテラルメンバー(リアスタビライザーを覆うように横方向に伸びる棒状のもの)が追加された。両側で③アームマウント(サイドセクション)下部に締結されて、アームマウント(サイドセクション)の横変形を防いでいる。(981型にも後付け可能)。このように、981型、982型になるにつれ、特に横剛性の強化が行われている。

・④トーコントロールリンクと⑤ラテラルリンク(トランスバースリンク、ロアリンクなど、呼び方多数):ともに横方向の動きを規制する部品。トーコントロールリンク(アルミ鍛造)とラテラルリンク(アルミ鋳造)の長さを変えることで(前者は330㎜、後者は300㎜)、外輪のサスペンションが縮んだ際にわずかにトーイン方向に向かせてコーナーリング時の安定性を高める(※)。981型からトーコントロールリンクの取り付け位置を後方にすることでラテラルリンク取り付け部との間隔を稼ぎ、横剛性を強化
※この動きについては、ホンダの公式サイトの下記説明がわかりやすいです(これはブッシュを使った例です)。
Sports Drive Web Vol.3 実はリアタイヤもちょっとだけ「切れて」いる?

・⑥トレーリングリンク:600㎜くらいの長さで前方から支持、ラテラルリンクの前後の動きを規制する。取り付け部で前後コンプライアンス(柔軟さ)を確保。

ブレーキング時には(タイヤ周りのサブフレームはブレーキの力で止まろうとするため)トレーリングリンクがボディを後ろに引っ張る形になり(=トレーリングリンクは前に引っ張られる)、それにつられてラテラルリンクが前に引っ張られることでトーインになり姿勢が安定する、ということだと思います。
・⑦ストラットケースとハブキャリアの締結部:981型から締結部のボルトを1本追加して2本に(図の左側のものを追加)。

また、前後輪ともにハブキャリアを強化(ハブキャリアは、ホイールを取り付けるハブを支えるサスペンション部品のこと。987型から、従来の砂型鋳造品に代えて中空構造の加圧鋳造品に。直径も75㎜から80㎜に変更)するなど、剛性を高める工夫を長年積み重ねてきているよう。
こうしてみてくると、サスペンションはその形式だけで良い、悪いという議論をしても意味のないものだということがわかるように思います(そもそも、各サスペンション形式が「純粋」な形で使われていることすらない)。
ストラット式の弱点と言われる、横方向からの入力でダンパーのロッド動きが渋くなり、、、という弱点に対してはオフセットスプリング(ダンパーの周りにあるコイルスプリングが偏心している)という方式が出てきたり、前述のように横剛性を高める試みが随所に取り入れられたりと、いろいろ他のサスペンション形式の良いところを原理的に取り入れたりして進化しているからです。
マクファーソン・ストラット式サスペンションについての解説はこちらでどうぞ。
GTS 4.0を下から覗いた動画(Savagegeese(英語))6’42”頃から。
「ポルシェ 718ケイマン試乗インプレ&下回りチェック!その②」視聴者さん持込企画で今回もポルシェの下回りを観察してみたんですが、…(大林モータース)
足回りの軽量化
上記のように、足回りはほぼ全面的にアルミニウムが使われています。先ほどの図を見てもわかる通り、肉抜きもかなり行っていて複雑な形状の部品が多くなっています。
このあたりの手の入れ方はやはり長年スポーツカーを作り続けているだけのことはあると思います。

PASMとPADM
PASMは、ベースグレード、Sグレードではオプション。GTS 4.0では標準です。この威力はやはり大きく、特に街乗りでの快適性が大幅に上がります。(そうはいってもPASMなしの標準モデルの乗り心地も決して悪くないです)
そのほか、スポーツクロノパッケージについているPADM(ポルシェ・アクティブ・ドライブトレイン・マウント)が標準で装備されています。これは、走行状況に応じて(加速度や操舵角等15項目のパラメーターを使用)、磁力の力で瞬時に磁性粘性流体の粘度を変えることで、ドライブトレインのマウントを固くしたり柔らかくしたりして最適な振動吸収力を発生させるもの。ハードな運転の時にはマウントが固くなりエンジン・トランスミッションなどの重量物の揺れを最小限にし、逆に流している時は少し緩くして、乗り心地を改善する、そんなかんじですね。
この機構は良いと思うのですが、故障が多く、泣き所の一つとなっているようです。

ステアリング
バリアブルギアレシオ
ステアリングは先々代の987型から可変ギアレシオ(バリアブルギアレシオ)になっています。
ポルシェはもともと超高速走行での安定性を考慮して、中立付近はあえて舵の効きをスローにするセッティングをしているようです(超高速でハンドルを少し切っただけで車が過敏に動くと危ない)。そのため、ポルシェが可変ギアレシオを採用するのは当然だったのかもしれません。
通常の可変ギアレシオは車速と舵角に応じてステアリングギア比が変わり、駐車など極低速でハンドルを切った時に少ないステアリング舵角で車を動かすために採用するようです。
ホンダ S2000の可変ギアステアリング(世界初搭載)の解説はこちら
が、ポルシェの場合はどちらかというと中立付近を鈍くするのが目的のような気がします。987型ではラックギアの中央から両端に向かうにつれて歯のピッチが広がる形をとり(めちゃくちゃ機械的。笑。一般的にはラックピッチ可変型というそうです)、車速にかかわらず中立付近のギアレシオが17.11:1、フルロックで13.76:1。約30度の舵角から徐々にギアレシオが変化していくようです。
982型では仕組みが変わっているのかわかりませんが、テクニカルシートを見ると「Center Position」という記載が見られるので、おそらく同じコンセプトの機構だと思います。
718:中立15.0:1、フルロック(と思われる)12.5:1
718 GTS 4.0:中立15.02:1、フルロック12.25:1
実際に運転してみると、中立付近の遊びは全くないと言っていいレベルですが、切り始めて車がぐわっと動く感じは皆無で、「ゆったり、しっかり」と切れていく感じ。ポルシェを運転したことがない人には意外かもしれないですが、これはポルシェのステアリングセッティングの特徴と言えそうです。(実際GT4カーなどのギアレシオも16.0:1くらいになっていることが多いことからもわかるとおり、センター付近があまりクイックだと安全に飛ばせない)
なお、981型に比べて中立付近のギア比がクイックになりました(981型は中立16.6、フルロック12.5)が、これも先ほどのサブフレームの強化などが効いているものと思われます。

ステアリングホイール
ステアリングホイールは標準とGTステアリングホイールのどちらか。標準のハンドル径は375㎜、GTステアリングホイールは360㎜(公式サイトでは369㎜と表記されていますが誤植と思われます)。
径は多くの日本車に比べるとやや太めですが、メルセデスベンツやBMWと比べればかなり細い。静電容量のセンサーなども入ってないため、かっちりとした握り心地です。
電動EPS(パワーステアリング)の方式
電動パワステはラックアシスト式EPS(ラックギアをボールナットでアシスト。デュアルピニオン式を含むピニオンアシスト式ではカバーできない高出力車や大型車などに採用される方式)。981型から採用されています。小型で高出力、応答性が高く(=ダイレクト感が高く)キックバックの抑制もしやすい、モーターがステアリングから遠いため(=タイヤに近いため)違和感が少ない、などのメリットがあるそう(モーターのコストは高い)。
ポルシェ 718シリーズのEPSは電動になっても情報量が豊か。かなりぶるぶると振動を返してきます。最近の車にはなかなかない、アナログな感じがあります。
余談:ステアリングジオメトリー
言わずと知れた(?)パラレルステアリングジオメトリーを採用。走行性能の高さを示すアイコンにしやすいのか、けっこう良く話題に上るので効果等はほかのサイトで見てみていただければと思います。とはいっても別にパラレルステアリングジオメトリーかアッカーマンジオメトリーか、というゼロとイチの話ではないので、どの車もその中間で妥協ポイントを見つけている、ということだと思います。
冬場のコールドスタートでステアリングを切ると本当に車が壊れたように「ゴリッ、ゴリッ」となり、周りの人も振り向くくらいです。涙
スポーツ走行での効果は、どんなもんなんでしょう。同じボディでステアリングジオメトリーを変えて比較したことがないもので。でも効果があるから採用しているんでしょうね。コーナーリング能力の構成要素ひとつにはなっているのでしょう。
コーナーリングは?
まず、ミッドシップというレイアウト上最大の重量物であるエンジン・トランスミッションが車軸より中にあり、そのほかの重量物も全体に中心の低いところに集まるようレイアウトされているため、とにかく無理なく曲がります。フロントにエンジンがないこため、フロントエンジンの車に乗り慣れていると、曲がり始めの感覚はけっこう感動する部類の気持ちよさかもしれません。Z軸周りのヨーモーメントが小さいというのはこういうことを言うのか!と実感。また、リア寄りの重量配分のためトラクションがかかりやすく、コーナー脱出の加速も気持ちよいです(これが普通と思ってしまうとほかの車に乗った時に危ない)。
そんな共通の魅力を持ちながら、グレードごとに少し違いはあります。
GTS 4.0は機械式LSD(多板クラッチ式LSD)とトルクベクタリング(PTV)がついていて、車の方で曲げてくれる感じ。コーナー入口でLSDが左右の回転差を抑えることで不安定な動きを抑制し、PTVが内輪を少し「つまみ」曲がりやすくし、コーナー脱出時はLSDがトラクションを確保。(納車2年後レビューで触れています)
一方のベースグレードはオープンデフ (LSDがついていない) で、車の素性の良さで曲がる感じです。
安心感があるのはGTS 4.0の方ですが、車の素性の良さを実感できるのはベースの方かもしれません。これは好き嫌いあるかも。
あと、見た目キャンバー角はGTS 4.0のほうがかなりついているように見えます。特にリア側。なので、GTS 4.0の方がより積極的にコーナリングをすることを想定したセッティングになっていると思います。
タイヤ
GTS 4.0のタイヤサイズはGTS 4.0の標準が前235/35ZR20、後265/35ZR20。最重量モデルでも1.5tを切るため、それほど幅は大きくありません。
タイヤ銘柄は、基本ピレリP ZERO PZ4のポルシェ認証タイヤ。グリップは良いですが、わりと減りが速いのでコストパフォーマンスはあまり良くない、という評判のタイヤです。個人的には履きつぶしたらミシュラン・パイロットスポーツ4Sに替えたいと思っています。
(2025年2月に履き替えました→ポルシェ 718ボクスター GTS 4.0、初タイヤ交換。ミシュランパイロットスポーツ4Sはどんな味?)

ベースグレードのタイヤサイズは標準が前235/45ZR18、後265/45ZR18。幅は同じです。
タイヤ銘柄もピレリP ZERO PZ4のポルシェ認証タイヤ(当時)。
GTS 4.0、ベースグレードともに5穴、ボルト締結、ホイール取付トルク160Nmです(取扱説明書による)。Pitch Cycle Diameter(P.C.D.)は130㎜(!)です。
ブレーキ
概要
ブレーキディスク、キャリパーのサイズは異なりますが、どちらも申し分のないタッチと効きです。ディスクはそんなに大きくないんですけどね。まだ試してませんが、フェードもなかなかしないそうです。ポルシェは厳格な耐フェード性の基準を持っていることで有名で、基本的には良い意味でオーバースペックだと思います。
何しろ、ポルシェは大型のディスクを入れたいためにタイヤの扁平化を進めたという話もあるくらいで、そのことからもブレーキ性能をいかに重視しているかがわかります。
718ボクスター GTS 4.0:
ブレーキディスク:フロント350㎜、厚さ34㎜、リア330㎜、厚さ28㎜(ドリルド)
キャリパー:フロント対向6ピストン・リア対向4ピストンアルミニウム製モノブロック

ベースグレード:
ブレーキディスク:フロント330㎜、厚さ28㎜、リア299㎜、厚さ20㎜(ドリルド)
キャリパー:対向4ピストンアルミニウム製モノブロック(フロント・リアとも)

実際にフルブレーキングを試してみる
GTS 4.0、クローズドコースでフルブレーキングを試してみます。だいたい100km/hからのフルブレーキング。ABSが介入しますが、2、3回控えめにキックバックをしてスッと止まります。あっけないくらい。ただし、ベースグレードもGTS 4.0も、止まる際にかくっとなりやすく、止まる直前に少しブレーキを緩めてやるようなコントロールをした方が気持ち良く止まれます。
追記:富士スピードウェイに行って何度かフルブレーキングをさせましたが、何ともありません。
ちなみに、GT-Rの開発で有名な水野和敏氏がYouTubeで「(ケイマンTの)ブレーキバランスはもう少し後ろ寄りの方がいい」とおっしゃっていました。しかし、ポルシェはメーカーとして出すときはかなり安定志向のセッティングで出してくるので、それはなさそう、と思います。笑
ブレーキバランスをリア寄りにした方が速く前輪が自由になるので(タイヤが横方向への力を使えるようになるため)、より姿勢変化が速くなるでしょう。でもその分運転に技量が要求される。それはメーカーとして出す場合にはやりません、というのがポルシェかな、と(素やGTSなどの「街乗りグレード」というのもあると思います)。
私みたいにあんまりうまくない人でもきっちりブレーキングできる、そんな方向性だと思います。
シート
GTS 4.0の標準シートはスポーツシートプラス、ベースグレードの標準シートはスポーツシートです。
GTS 4.0のシートは肩回りのホールド性が高くなっていて、けっこういい感じです。それもあってなのか座面のクッションの違いだけなのか、なぜかGTS 4.0のシートの方が長距離乗っても疲れにくいです。もともと718シリーズの座面のクッションは薄く、ロングツーリング向きとは思いませんが、それでも比較するとちょっと長距離にも耐えられるかも。
ちなみにシートは993型の911まではレカロ製でしたが、今は標準のシートは内製のようです。(間違ってたら教えてください)


乗り心地
全体にしっとりしているものの、718ボクスター GTS 4.0の方がベースグレードよりも固く感じます。最初はダンパーの初期フリクションかと思いましたが、そうでもないかも。ジャーナリストのレビューを見るとGTS 4.0はベースグレードより乗り心地良いとかそういうこともいわれてましたが、そうかなぁと。
私が乗っていたのはベースグレードでノーマルサイズのタイヤ(45扁平の18インチ)、それにオプションで電子制御ダンパー (PASM) をつけていました。一方広報車で18インチの電子制御ダンパー付きってあったのかな?と考えると、ジャーナリストの方はベースグレードにオプションの20インチ履いた車に乗っていたのでは?という疑念が。
とはいえ、GTS 4.0は35扁平の20インチとしてはとても良い乗り心地です。さすがフロントにエンジンがないだけあってフロントサスペンションを固める必要がないのは有利かも。腰はあるけどすごくうまくいなしてくれて、跳ねるといったことは皆無です。電子制御ダンパー (GTS 4.0では標準装備) の効果も大きいと思いますが、とにかくびっくりするほど乗り心地はしっとり、と言ってもいいと思います。現代のスポーツカーってすごいな。。


ソフトトップ
987型まで一部手動開閉操作が必要だったソフトトップは981型で全自動に。オープン / クローズの所要時間も9秒になりました。防音材にフリース系の素材を使用、100㎞/h走行時の車内騒音は74dbから71dbに改善(=透過音のエネルギーは半分になった)。構造変更によってバタつきも少なくなっているようです。
フレームは両サイドにマグネシウム合金、クロスバーにアルミニウム、強度の必要がないところにプラスチック、強度の必要があるところには鉄を使用。987型に比べて12kgの軽量化をしているとのこと。
以前、中谷明彦氏が718ボクスターS、718ケイマンSをそれぞれ富士スピードウェイで走らせたときに、「ストレートでの最高到達スピードはケイマンより1km/h速い254km/hに達したが、それはルーフが軽いことが最終コーナーの旋回脱出速度を若干有利にしたのだろう。」と書いているように、ルーフの軽さは速さにも効いているようです。
ケイマン/ボクスターは4気筒でも十分!! 富士スピードウェイ全開走行で判明
軽快感
718ボクスター GTS 4.0は良く言えばどっしりしているものの、オプション装備含めて80kg車重が重くなっている (車検証で1470kg)こともあり、ベースグレードが持っていた軽快感はちょっと薄れました。ターボエンジンの有無による初期加速の違いもあると思います。ベースグレードはひらひらした感じが少し残っているのに対し、GTSはレーシーで速く走ることに特化している感じで、少し味わいが違います。
レーシーさ(雰囲気)
ベースグレードはスポーツモードにするとアフターファイヤのような音がバリバリするところがあったのですが、わざと足した音という感じで、個人的にはそんなに興味ありませんでした。GTS 4.0は、意外にメカニカルノイズ(特にLSDの作動音)が残っていて、ちょっといいんじゃないのーという感じがあります。スポーツカーに乗っているという実感はGTS 4.0の方があるかもしれません。
燃費
718ボクスター GTS 4.0は今のところ10.1㎞/l。ベースグレードは5年平均が11.5㎞/l。やはり15%位の差。排気量が倍なのでしかたないかと思います。が、ベースグレードの燃費の良さは、気兼ねなく走りに行きたくなるという点ではなかなか捨てがたい魅力だと思います。
ちなみにPDKは、7速のみギア比が違います。(GTS 4.0が0.71、ベースグレードが0.62)
あと、ベースグレードはオートマモードでも良く自動的にコースティング (クラッチが切れ、惰性で走っている状態) してましたが、GTS 4.0は気筒休止モードにはなるものの、自動ではコースティングしないように思います。
次回は「ここはちょっとなぁ」と思ったところです。










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