ポルシェ ボクスター / ケイマン、名を改めて718ボクスター(+718スパイダー) / 718ケイマン、登場してから27年、内燃機関としてのモデルは982型で終了し、次期モデルはフル電動化することがアナウンスされています。

GT4 eパフォーマンス
写真はGT4 eパフォーマンス。次期型ではありません。メーカー配布資料より

振り返ればポルシェ 911と違い、1993年のコンセプトモデル誕生からこれまで、いろいろと紆余曲折しながらモデルチェンジしてきたボクスター / ケイマン。

これから数回に渡って、ボクスター / ケイマンのこれまでの変遷とこれからの行方を、販売台数の推移や市場環境、環境規制等を手掛かりに読み解いていきたいと思います。

1回目は718シリーズの販売台数の推移、そもそも売れているのかどうか、です。

もしかすると変な解釈や間違っているところもあるかもしれませんが、まぁそんな見方もあるかもね、くらいな感じで楽しんでいただければ幸いです。

718シリーズへの衣替え

718シリーズの目玉は環境対応の4気筒

3代目ボクスター / 2代目ケイマンである981型の登場からわずか4年。

厳しくなる一方の環境規制に対応しながら生き延びるべく、ボクスター / ケイマンは718シリーズに変貌を遂げました。

ポルシェ 718ボクスター
718ボクスター

環境規制への対応と、排気量による税制優遇がある中国マーケットでのシェア拡大(※)へのポルシェの回答は、水平対向6気筒エンジン(フラット6)をやめ、4気筒ターボ化したことです。

※中国の税制では、排気量2,000cc以下の優遇策がある模様。また、130万元を超える車には排気量によって大幅な税金が付加される(たとえば排気量1.5L超~2.0L以下は税率(生産【輸入】段階)5%、3.0L超~4.0L以下は税率(同)25%)。ちなみにBaiduで検索したところ、718ケイマンは56.5万元、718スパイダーRSは157.8万元でした。(2023年9月現在)

そのエンジン、ポルシェとしては914以来(フォルクスワーゲンとの共同開発)の水平対向4気筒エンジン(フラット4)。同モデルの1976年の終売以来、実に40年ぶりの復活です。

(直列4気筒モデルについても、968(1995年終売)からマカン(4気筒モデルは2014年に登場)まで20年近くラインナップがありませんでした)。

ポルシェ718シリーズに搭載される水平対向4気筒エンジン
ポルシェ718シリーズに搭載される水平対向4気筒エンジン

モジュール化したエンジンのフレキシビリティを生かして、2気筒をはぎ取り、代わりにターボチャージャーを積み込んで登場しました。

ポルシェの水平対向エンジン(9A2ファミリー)のモジュール化を示す図
エンジン(9A2ファミリー)のモジュール化を示す図

名前の変更に見るボクスター / ケイマンラインナップの位置づけの変化

718シリーズへの移行において、ネーミングに往年のミッドシップ・レーシングカーを持ち出してきたところからも、ポルシェの中でのボクスター / ケイマンの位置づけに変化が見えます。

そもそも718というのは、1950年代後半から1960年代前半に活躍したミッドシップ4気筒のレーシングカー。

ウィキペディアはこちら

ポルシェ 718 RS60
ポルシェ 718 RS60。小柄ながら速かった。Wikiコモンズより

ポルシェはボクスター / ケイマンの4気筒化という絶妙なタイミングでモデルのコンセプトに修正を加えてきます。

それは、

優雅に乗れるプロムナードカー / 気軽に乗れるスポーツカー 

→ ちょうどいいサイズのミッドシップ・ピュアスポーツカー

というポジショニングです(だいたいそんな感じだと思います)。

ガチなスポーツカーとして変貌を遂げました。

これが何を意味するのかは後ほど読み解いていきますが、とりあえず、モデルコンセプトの修正があったというところだけ確認しておきたいと思います。

初代ポルシェ ボクスター(986)
初代ポルシェ ボクスター(986)。
オシャレに乗る「プロムナードカー」だった
ポルシェ 718ボクスター
ポルシェ 718ボクスター。ガチなスポーツカーに変身してきた

718シリーズの世界販売台数推移

そんな、規制に翻弄されて、名前まで変え、ガチなスポーツカーとして変貌を遂げた718シリーズ(982)は、実際に売れているのでしょうか?

718シリーズの世界販売台数推移とポルシェの販売台数に占める割合

ここでは、ポルシェ全体の世界販売台数と、718シリーズの世界販売台数を比べ、モデル全体における718シリーズの構成比の変化を見てみます。

ポルシェの世界販売台数推移と718シリーズの世界販売台数推移のグラフ
出典:すべて公表資料による。718の2018年の世界販売台数は資料が見当たらなかったため、アメリカでの販売台数を元に推計。2016年と2019年についても翌年に発表された台数の「前年比」表記から計算した概算値。

981からバトンタッチされた2016年にポルシェ全車種の世界販売台数の10%くらいを占めていたボクスター / ケイマンですが、その後は徐々に下降線をたどり、6%程度に落ちています。
そりゃ、ポルシェはマカンやカイエンなどのSUVに力を入れているし、タイカンなども出てきているので仕方ないよね。・・・と思って911と比べてみました。

718シリーズと911の世界販売台数の比較

ポルシェ911の世界販売台数推移とポルシェ718シリーズの世界販売台数推移の比較
911の2019年の世界販売台数は資料を見つけられなかったため、アメリカの販売台数を元に推計。2018年は100の位が切り捨てられた値(発表資料による)

911は2018年、21年、22年と過去最高を更新しているのに対し、718は減少。一言でいうと、売れていない(涙)。もちろん、新型のデビュー年度が異なるものの、911はデビューから年数がたっても販売台数は上昇中。なかなか寂しいものがありますね。

もちろん2020年はコロナの影響、半導体を始めとする部品の供給不足等、いろいろあると思いますが、その中でも911や他の車種は堅調。

取り急ぎ、ここでは718の販売台数は順調に(?)落ちていることが確認できればよいかと思います。


それでは、そもそも718ボクスター / ケイマンが属する市場自体はどう推移していたのでしょうか?次回はそこに迫ってみたいと思います。(けっこう難しいのですが。)

(2)ライバルたちの動向を読む

今回使ったデータは下記にまとめています。

【資料】ポルシェの世界販売台数推移

【資料】ポルシェ ボクスター / ケイマン / 718シリーズの販売台数推移

【資料】ポルシェ 911の販売台数推移

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