メルセデス・ベンツ GLB 200d 4MATICの納車6か月後点検に行った際、代車としてメルセデス・ベンツ C200(W206)を貸してくださいました。ディーラーへの行きにGLB、帰りにC200、ディーラーへの車の引き取りにC200、帰りにGLBと交互に乗れましたので、比較した印象を書きたいと思います。
我が家のメルセデス・ベンツ GLB 200d 4MATIC(X247)の紹介はこちら(カテゴリページが開きます)。納車直後の試乗レビューはこちら。
貸してもらった代車、メルセデス・ベンツ C200(W206)4MATICに前回乗った時の印象はこちら。
メルセデス・ベンツ CクラスとGLBの立ち位置
試乗比較にいく前に、少しだけ市場のトレンドなど、この2台の車づくりに影響を与えうる要素を見ていきたいと思います。


メルセデス・ベンツの販売の中心はSUVに移りつつある
いま、メルセデス・ベンツで最も売れている車種はSUVであるGLCです。2022年のメルセデス・ベンツの乗用車販売台数2,040,500台に対して、GLCは342,900台と約16.8%を占めています。対するCクラスは299,100台。占有率は14.7%。(※1)
長らく一番の売れ筋だったCクラスも、SUVであるGLCにその座を奪われています。
EクラスとGLEを比べても同様らしく、メルセデス・ベンツの販売の中心はSUVに移っています。(アメリカでは2022年にGLEはEクラスの3.4倍売れている)
世界的に見ても、SUVの販売比率は増えている
調査会社であるJATOによると、2022年のSUVの販売台数比率は41.3%。(※2)
すでにセダン(20%)、ハッチバック(16%)よりも圧倒的に売れるセグメントになっているようです。
技術的には、「背が高くても高い操縦安定性と乗り心地を確保できるようになった点が大きい」とどこかの記事で読んだことがあります(主に足回りの制御技術)。
また、社会背景としてもカーシェアリングなど、「所有」以外の車の利用方法が増えてきていること(→足車は所有せずに「利用」するため、(足車に利用されることが多い)コンパクトカーの販売比率が低下し相対的に大きな車が売れる)、車に求める要素の変化(フォーマルさよりも自由さや解放感を求める)やカンパニーカーのあり方の変化など様々な要素がありそうです。
CクラスとGLB、それぞれのポジショニング
Cクラスは長らくメルセデス・ベンツの最量販モデルとして、世界各国のビジネスカー需要を取り込んできました。そういう意味では「超・保守」の車。

しかし、もはやセダン自体がニッチなカテゴリになる中で、Cクラスと言えども保守的なだけでは生き残れなくなっているようです。よりパーソナルで趣味性の高い方向にも色気を出しているように思います。具体的には「走りの良さ」を、SUVとの対比で押し出そうとしていくしかないのかな、と。
そういう意味で、Cクラスはもう昔のままではいられないため、「脱・保守」。
GLBはメルセデス・ベンツの屋台骨となったSUVのフルラインナップ戦略の一環。Cクラスの置き換えがGLCとすると、GLBはその下のファミリー層を取り込む役割で、そのままBクラスの置き換えになります。ただ、GLBはメルセデス・ベンツとしては初めて本格的にファミリー層をターゲットにして作られた車。Aクラスはほかに車を持っている家庭のセカンドカーとしての需要が多く、Bクラスは(ファーストカーとしては)ややニッチすぎる感じ。そういう意味ではGLBはメルセデス・ベンツとしては初めて、トヨタにおけるカローラクロスくらいの立ち位置を狙ってきているように思います。

そういう意味では、こちらは「新・保守」。ある意味今の車づくりの王道を詰め込んだ車であることが求められそうです。
そんなこんなで、こんな立ち位置の違いがどう車づくりに現れているのか、そんな2台の比較、楽しみです!
※Cクラスと、「格下」のBクラス派生の車(しかもそれぞれFRとFFベース)を比較するなんてド素人が!と怒られそうですが、私はもともと車選びをする際に「階級の上下」の概念をあまり持っていないのと、同じメーカー内で異なる立ち位置の車を比較するのは個人的に興味深いので書いています。「格下」の車と比べられて気分を害された方がいたら申し訳ございませんが、当ブログの一種の性癖と思って笑ってスルーしてくださいませ。
メルセデス・ベンツ C200(W206)とGLB 200d 4MATIC(X247)の比較:走り出す前
エクステリア:わりと攻めてるCクラス、実用性重視のGLB
エクステリアは、Cクラスが「わりと攻めてる」感じです。トヨタ プリウスほどの驚きはもちろんありません。それでも、けっこう寝ているAピラー(しかもかなり後ろの方まで傾斜が続いている)、かなり絞り込まれた四隅と、空力マシンとしての面目躍如。Cd値はセダンで0.24。今でこそそんなに驚く数字ではありませんが、それでも優秀。

対するGLBは、多人数を無理なく乗せるためにスクエアにせざるを得ません。それゆえAピラーやDピラーもけっこう立っています。そこでGクラスっぽい無骨さを借りてきて、お化粧している感じ。

それでもファミリーカーですから燃費に直結する空力性能もおろそかにしてはいけない、ということで、各部のデザインはかなり空力を意識している(フロントヘッドライト付近の絞り込みなど)。なかなか不思議な、妥協の産物みたいなデザインをしています。まぁカッコいいですかどうですかと聞かれたら、「好き好きですかねぇ」とお茶を濁す感じですかね。(私はこういう機能優先のデザインは好きです)
乗降性:やや乗り降りしづらいCクラスと、何の問題もないGLB
CクラスとGLBのこうした方向性の違いは、乗降性にも表れています。
昔からメルセデス・ベンツのセダンと言えば機能性の固まりで、前席・後席ともに乗降性は抜群でした。日産 GT-Rの開発で有名な水野 和敏氏も、メルセデス・ベンツとBMWのセダンの比較をするときによく後部ドアの形状を持ち出しているようです。
が、そんなメルセデス・ベンツも今は昔。前席に乗り込もうとすると、Aピラーから伸びる天井部に頭をごつん、とぶつけました。Aピラー、かなり寝てますものねー。
GLBはもう楽ちんすぎます。どっちが乗り降りしやすいですか、と聞かれたら圧倒的にGLBです。
インテリア:キラキラなCクラスと、無難なGLB
インテリアはともにAMGラインの比較。
Cクラスはキラキラ!派手だなぁ。。。シートは赤のレザーシートオプションがついているため、こちらもなかなか派手です。そして、いやらしいアンビエントライト。GLBよりも点灯部が多く、間接光も多く全体に凝ってはいます。恥ずかしいけど。
好き嫌いはあれど、ビジネスカーにはない華やかさがありますね。

ダッシュボードの素材などはやはりCクラスの方が上質。ソフトパッドが全面に張り巡らされています。一方、W205ではセンタークラスターを覆っていた本木目はなくなり、W206ではキラキラのメタル調(メルセデス・ベンツではメタルウィーブと呼んでいます)になりました。このあたりも立ち位置の変化を表しているのでしょうか。

一点気になったのは中央のディスプレイ。大きいのは良いのですが位置が下にあり、運転中の視線移動は大きめ。見た目は良いですが機能的とはいえず、メルセデス・ベンツらしからぬ配置です。エアコンの吹き出し口を中央に持ってくると、モニターはその上か下かとなってしまうのは仕方ないですが、ここはテスラやスバルのように、モニターの位置取りを最優先にして、エアコンの吹き出し口はモニターの左右など、別のところにした方が良かったのではと思います。
GLBは良くも悪くも、無難です。少なくとも、「おしゃれ」とかそういう言葉からは程遠い感じはします。まぁ、ドイツ車にそれを求めても無駄な気はしますね。。

モニター類の配置は見やすく、太陽光によって見えにくくなることも皆無で、個人的にはこちらの方が使い勝手は良いと思いました。

シート:シート全体で体を固定するCクラス、腰回りで体を固定するGLB
シートは、新しい世代のCクラスと、ひと世代古いGLBで違いがみられました。
Cクラスのシートはヘッドレスト部分がすごいです。何のためかはいまいちわかってませんが。。。あと、肩回りのホールドは弱いもの、肩より下の上半身から下半身まで比較的ホールド性の高いシートになっています。W206はいまどきの車らしく横の張り出しがそこそこ大きく、ホールド性が高くなっていました。


対するGLBは、SUVのお約束で肩回りのホールドがほとんどない形。SUVのシートの肩回りにホールド性がないのは、悪路などでは肩回りを自由にしておくことで身を乗り出しやすくしたり、上半身を動かして左右・後方を目視しやすくするためのようです。オンロードでの使用が前提のGLBですが、こうしたところはファッションなのか機能性を重視しているのか、わりと「お約束」を守っている感じです。

一方で、腰回りにはやや圧迫感があります。
もともとメルセデス・ベンツは腰回りで身体を固定することで身体の揺れを抑制する、という考えでシートを作ってきたようです。私が乗っているW126にもその傾向は如実に表れています。腰回りにはウレタンの硬い層を入れて、骨盤をホールドする。
GLBにはそうした「メルセデス・ベンツ」の系譜が流れているように思います。
Cクラスはその流れが断絶し、新世代に踏み入れた、そんな感じがしないでもありません。このように、シートはクラスによるつくり分けというより、世代間の違いを感じます。変わりゆくメルセデスを感じます。
視界性能:どちらもあまり良くないが、GLBはより死角が大きい
視界性能はどちらもあまり変わりません。
メルセデス・ベンツに対する個人的な不満のひとつは、左前方視界の悪さです。理由はドアミラーの取り付け位置。取付位置とAピラーの間に空間がなく、大きな死角ができてしまうのです。これは使用環境の違いなんですかね。日本車は交差点と歩行者の多さを考慮してか、この点は細かい配慮がされている車が多い気がします。
ただ、メルセデス・ベンツの両車ともにAピラーの位置と形状は良く工夫してあり、太い割にストレスにはなっていません。
Cクラスは、やはり左前方向の視界は悪い。そしてこの車はかなりのエアロボディになっており後方視界もあまりよくありません。それでも、GLBに比べるとストレスは少ないです。

GLBは、これにボンネットの高さが加わるため、左前方の低い所がほとんど見えません。SUVになると視点は高くなるものの、局所的にこうした死角ができやすい点は注意したいところです。

また、後方のDピラーもかなり太いため、後方視界も良くないです。このあたりは衝突安全性能をとるために仕方がないと割り切っているようです。後方はカメラを使って視界を確保する、という考え方になっているようです。
最近のメルセデス・ベンツは、衝突安全等で厳しくなる視界性能はセンサー等の電子デバイスで補う、という考え方が強いと思います。衝突安全性能(パッシブな性能)は電子デバイスではどうにもならないのでしっかり確保したいが、その一方でその犠牲になる視界性能は電子デバイスで補完すればいいじゃないか、という発想だと思います。
こうしたところにも明確な優先順位がついているのはメルセデス・ベンツらしいところだと思います。

ユーザインタフェースやスイッチ類:あれっ?
意外なところで両車の違いを見つけました。
Cクラス(W206)は新世代MBUX、私のGLBはマイナーチェンジ前なので旧世代です。ちょっと見、新世代になって物理ボタンはだいぶ減ったのかなと思います(GLBはセンターコンソールのタッチパッドと付近のボタン類一式がなくなりました。直感的にはややわかりづらくなった感じはあります。
しかし、驚いたのはレバーの操作感の変化。ステアリングホイールのスポーク上のボタン類が静電容量式になったことは知っていたのですが、気になったのはそこではなく、ウィンカーレバーなどの物理レバーの操作感が変わったこと。以前からメルセデス・ベンツはクリック感が少しネトっとしていて心地よかったのですが、W206のレバーは普通に「カチッ」となりました。この点は個人的にはちょっと残念に感じる部分です。
こうしたところにもCクラスは新世代感があります。これはびっくり。この操作感の変更が何を意味するのかはまだ分かりません。が、伝統的な操作感(じつは40年以上前に設計されたW126とGLBにも似たような操作感があります)を変えてきたのには理由があるはずです。
Cクラスには代車として乗ったことしかないため記憶があいまいでもしかしたら違っているかもしれませんが、この辺りもわかったらまた追記したいと思います。
後席居住性:Cクラスに5人乗りはやや厳しい
後席居住性にも、両車のポジショニングによる違いが表れていました。
年々大きくなるCクラスですが、それでも後席の居住性はそんなに良くなっていません。特にFRベースでセンタートンネルが高く張り出しているため、真ん中のシートは絶望的。着座位置が高く、シート座面も硬いため、我が家のような5人家族にはちょっと厳しいです。セダンはファミリーカーからパーソナルカーとしての立ち位置に変わってきていることが、こんなところからも見えてくるような気がします。5人も家族がいてセダンなんか乗ってるんじゃないよ!という時代になったのだなぁと思います。
GLBは、その点はファミリーカーとしてのツボが押さえられていると思います。これも「新・保守」ならでは。居住性という王道を極める、という感じがします。

C200とGLB 200d 4MATICの比較:走り出してから
なんか走る前にお腹いっぱいになってきてしまいました。やっと走り出してからの比較です。ちなみに、FFベース vs FRベース、セダン vs SUVといったハードウェアの違いからくる「当たり前の違い」はあまり書いても仕方がないので、そのあたりは思い切り省いています。
ステアリングフィール:Cクラスは独特
ステアリングフィールに関しては、CクラスとGLBで世代によるメルセデス・ベンツの考え方の変化が表れていると感じました。
Cクラスは別の記事でもお伝えした通り、センター付近がシビアなくらい遊びがなく、しかもステアリングレシオが超クイック。かなりパワーステアリングのアシストが強めで路面から伝わる情報が少ない。バイワイヤ(電気式)かと思うほどです。まったくと言っていいほどステアリングを曲げ始めるときのフリクションがなくスッと車も曲がり始める。それでいて直進安定性は非常に高い。
この一連の動き、めちゃくちゃ滑らかと言えば滑らかで、「えっ!?」と戸惑うほど「新しい」感覚です。ちょっとすごいなぁと感心してしまうレベル。一方、好きか嫌いかは別問題。個人的にはちょっと人工的すぎるかな?と思います。ゲームみたいな感じで運転している感覚は希薄です。感覚が新しすぎて消化しきれない自分がいました。

対するGLBはパワーステアリングのアシストはやはり強めで、全体的に「軽い」部類ではあるものの、キックバックはそれなりに普通にあり、アナログな感触が残っています。センターに戻そうとする力もCクラスほど強くなく、ナチュラル。Cクラスと同じくセンター付近は遊びが少なく、かつクイックですが度肝を抜かれるほどではありません。ああ、普通の車だわぁ、という安堵感があります。

Cクラスはかなり「新しい」感じ、GLBは昔ながらの操舵反力を少しは感じ取れる、という味付けの違いがありました。
それもそのはず、メルセデス・ベンツは2020年(日本は2021年)に登場したW223型Sクラスから、レベル3自動運転に対応する車両プラットフォームを展開させています。基本的には、自動運転を前提とした車両制御をしていく、という考えです。
基本的には操作の入力主体は人であることも機械であることもある、という前提に立っています。もはや人は操作の主体ではないかもしれない(というかそうでないべき)、という前提に立ってくるため、「返すべき必要な情報」も変わってきます(路面の揺れなど、次の操作に必要な情報はもはや「返す必要のない」情報になる?)。
Cクラスはこの辺りを、確信犯的にいろいろと実験(模索)してきている感じがします。
GLBはそういう意味では、「人が主たる運転者」であることを前提とした最後の世代の車なのかもしれません。
乗り味:デジタルなCクラスとアナログなGLB
こちらもステアリングフィールと並んで世代間の違いを感じた部分。
Cクラスは、最初に乗った時にけっこう度肝を抜かれました。サスペンションストロークは当然ながらGLBよりも小さいのですが、スプリング・ダンパーともに柔らかく感じました。ダンパーは特に伸び側も減衰力が低めな感じ。フラット、というよりはゆらりゆらりとゆっくりした周期で少し上下に動くのですが、フリクションを全く感じないためなのか、接地感がほとんど伝わってこない。こちらもすごく「新しい」感覚でした。
前の試乗レビューでも書きましたが、デジタルな感覚なんだけど浮遊しているようなフワフワ感があって、それでいて段差での衝撃はそれなりに伝えてくる感じで、なんとも不思議な乗り味です。
この辺りももう、タイヤやサスペンション、ボディ、シートなどを通して車の動きが伝わってくるのがいい、みたいな価値観はほぼ捨て去られています。
人が運転しないならそういう振動って単なるノイズですよね?といわれているような感覚。
対するGLBはSUVらしくロングストロークでありながら、横方向の揺れ、縦方向の揺れともにうまく収束させていて、それでいてストロークの長さがあるので不快なコツコツも我慢できるレベル。
ロールをしながらも路面を絶対に放すまいとするような「粘り」のある感じは昔のメルセデス・ベンツから健在で、サスペンションが仕事をしている感じも伝わってきます。そういう意味ではちょっと昔ながらのベンツの味もあって、個人的にはけっこう好きです。
こうした、新しいCクラスとひと世代前のGLBの乗り味の差にも、メルセデス・ベンツが新時代の車がどうあるべきか、根本から考え直して変えていこうという意思を感じます。
メルセデス・ベンツって保守の大御所みたいな感じがする人もいるかもしれませんが、実は自動社界のリーダーとして、つねに車の新しい像を切り開いてきたメーカーです。
ABSやエアバッグのような安全装備や、あえてクラッシャブルゾーンを作る衝突安全構造もそうですし、環境への配慮のため空力を極めたボディデザイン、二重ガラス、ESP(自動安定化装置)、アダプティブクルーズコントロール、自動緊急ブレーキ、音声を使ったUIの統合(MBUX)などもそうです。
その宿命として初期不良も多いですが、必要と考えれば新しいもの(かつ本質的なもの)をどんどん取り入れようとするメーカーです。
メルセデス・ベンツ的な重厚な乗り味(!)をユーザーがありがたがっている間に、当のメルセデス・ベンツは、「そんなのもういいから」と次のモビリティのあり方を考え、それをいち早く実践しようとしているみたいです。
そうした「未来への動き」が新しいCクラスに表れている、そんな気がします。今は違和感だらけでも、10年くらいたつと、GLBに乗って、「昔の車ってあんな感じだったよね」という人が現れてくるのかもしれません。
ブレーキ:こちらもデジタルなCクラスとアナログなGLB
ブレーキも同様、世代による違いを感じる点。
なんというかこちらもCクラスは踏みごたえがあまりなく、非常にデジタルにボタンを押している感じ。反力が少なく、こちらもゲームをやっている感じ。個人的にはサーボが効きすぎのような気がします。きちんと効くのは間違いありません。
また、踏みはじめに若干大きめの「遊び」があるところ、その後急にブースターの働きでブレーキ圧が高くなる点も気になりました。Cクラスのユーザの運転特性を反映しているのでしょうか?ドイツ車には昔からあまり見られなかったセッティングだと思います。

GLBもややサーボが効きすぎている感じではあるものの、こちらの方が自然でコントロールしやすいです。

ブレーキももうユーザの足裏に情報を返して次のアクションの手助けをする、というよりは自動運転との相性を重視し、制御の整合性が取れればよい、そういう考えに変わってきているように思います。
エンジン: どちらも黒子。C200のエンジンは静か、GLBは普通
エンジンはハードウェアの違いはあれど、基本的には共通の方向性に向かっているように感じさせる部分です。
Cクラスのエンジンは直列4気筒1.5Lターボで、スペックは、最高出力204PS/5,800-6,100rpm、最大トルク300Nm/1,800-4,000rpm。それに、ISG(インテグレーテッド・スターター・ジェネレーター)による15PS、208Nmのパワーアシストがつきます。車両重量1,720kg(C200のAMGライン装着、パノラミックスライディングルーフ装着車)。
エンジンからの音はかなり小さいです。もともとエンジンも1.5Lしかないコンパクトなエンジンですし、エンジン周りの遮音も行き届いている感じ。
エンジンの始動はセルモーターではなく、ISGにより行います。エンジンのスタートボタンを押したり、アイドリングストップからアクセルを踏むと瞬時に、まったく振動なく始動します。この感覚はけっこう新鮮です。
加速はスムーズ。モーターによるアシストとターボがついているものの、ギクシャクした感じはかなり抑えてあり、段付きの少ない加速をします。一方でドラマティックな加速フィールはありません。こうしたところはメルセデス・ベンツらしいストレスフリーな味付けだと思います。

GLB 200d 4MATICのエンジンは直列4気筒1.9Lディーゼルターボで、150PS / 3,400~4,400rpm、最大トルク320Nm / 1,400~3,200rpm。車重が1,870kg(AMGライン装着、パノラミックスライディングルーフ装着車)
ディーゼルではありながら音は現代的な水準でかなり抑え込んであります。それでもガソリンエンジンに比べると全体の音量は大きい。
ディーゼルターボにしてはトルク変動は少なく、非常に扱いやすいエンジンです。もちろんガソリンエンジンほどの伸びやかさはないものの普通に良く回り、まさに必要十分といったところ。
エンジンについてはどちらとも、扱いやすく疲れないことを第一に考えられている感じで、このあたりは最もメルセデス・ベンツらしいと感じるところです。

メルセデス・ベンツは環境負荷も考えてエンジンもどんどん小型化していますが、同時に人が運転しない時代にはエンジンの透過音も単なるノイズ、と考えているのかもしれません。そういう意味ではエンジンの存在感が無になる(最善か無か、が転じて無が最善になる?)、というのが究極の目標なのかもしれません。こうした観点からも、メルセデス・ベンツのエンジンの進化は興味深いものがあります。
トランスミッション:両車ともパドルシフトはついているが。。。
トランスミッションも同様。両車の方向性に違いはあまり感じられません。
C200のトランスミッションはトルクコンバーター式の9速AT、GLB 200d 4MATICのトランスミッションは8速デュアルクラッチトランスミッション。形式は全く違えど、シフト変速のマナーはどちらも同じ。一言で言ってけっこうトロイです。メルセデス・ベンツとしてはマニュアルモードに運転の楽しさは求めておらず、トランスミッションの耐久性を第一に考えているのでしょう。そのような設定になっています。
なお、GLBの場合はインディビジュアルモードでマニュアルモードをプリセットしておかない限り完全なマニュアルモードにはなりません。通常はパドルシフトでマニュアル操作をしてもそのうちオートモードに復帰してしまいます。

正直どちらの車もパドルシフトを使ってシフト変速を楽しもうという気分になることは皆無。私の場合、あくまでも下り坂や前走車との車間調整のために一時的にエンジンブレーキを効かせるための機能だと割り切っています。
この辺りはメルセデス自体、(AMGを除けば)運転する楽しみ、操作する楽しみは追求しない方向(基本は自動運転を目指す方向)なので、そういうものだと割り切って乗るほうが精神衛生上もよいと思います。
高速走行:両車とも風切り音対策は優秀
風切り音対策もメルセデス・ベンツ共通の考え方に基づいて行われている印象。
Cクラスの高速道路での走行は短い距離しか試していませんが、やはり全体的な空力対策が効いているため風切り音が少ないです。
GLBは、Aピラーが立っている形状でドアミラーも大きいため、ゴーっという風の音は聞こえてくるものの、車の形状を考えるとこちらも風切り音対策は優秀だと思います。
メルセデス・ベンツは1970年代から大きな風洞実験装備を導入し、空気抵抗と騒音の研究を続けてきています。やはりこれも「無」を目指しているのだろうと思います。

静粛性:Cクラスはエンジン音が静か、GLBはロードノイズが少ない
静粛性に関しては、グレードごとのつくり分けを巧みに行っているメルセデス・ベンツであるものの、部分的にはパッケージングの関係で格下のGLBのほうが静かに感じる部分もありました。
前述の通り、C200はコンパクトなガソリンエンジンのため、エンジン音が静かです。エンジン透過音対策もCクラスの方がしてある感じ。ただ、ロードノイズは比較的大きく感じます(BRIDGESTONE TURANZA T005を装着)。
GLB 200d 4MATICはエンジンがディーゼルのため、エンジン音は比較的大きめ。エンジン透過音対策もCクラスほどには感じません。ただ、SUVで車体(ホイールハウス)とタイヤの間に空間があることからロードノイズは小さめです(ピレリ P ZERO (PZ4)を装着)。
全体としては気になる音のレベルという意味ではどっちもどっちという感じです。Cクラスの圧勝かと思ったらそうでもないところが面白かったです。
取り回し:Cクラスは非常に良い、GLBも優秀
取り回しの良さはメルセデス・ベンツの美点の一つ。FRベースのCクラスはもちろん良いですが、FFベースのGLBでもそこはきっちり担保していました。
C200のボディサイズは全長4785㎜、全幅1820㎜、全高1435㎜(AMGライン装着車)
最小回転半径は5.2m(四輪駆動モデルは5.4m)。リア・アクスルステアリングがついていると5.0mになります(四輪駆動モデルは5.1m)
今回の車はリア・アクスルステアリング非装着車ですが、とにかく小回りは利く印象です。
対するGLB 200d 4MATICは全長4650㎜、全幅1845㎜、全高1700㎜(AMGライン装着車。マイナーチェンジ前)です。
最小回転半径は5.5m。この手の車にしては小回りは利く方だと思います。実際に運転していても、以前乗っていた日産 セレナ ハイウェイスター(C26)よりもけっこうコンパクトに回れるという印象。
補足:Cクラス、FRと四輪駆動(4MATIC)で違いはある?
違うタイミングで、走行距離も違う個体に乗っているので何とも言えませんが、普通に走っている分にはFRと四輪駆動の違いに気づくことは難しいかもしれません。最近はステアリング機構の進歩もあり、四輪駆動だからといってハンドリングのすっきり感がない、などということはなくなっていると思います。
もちろん、段差を超えての発進、前後で異なるサーフェースでの発進(ダートから舗装路へなど)、コーナーリング中の急加速、ウェット路面や雪道での走行などをすればすぐに違いは分かるであろうものの(代車では試していません)、街中で流すくらいでは駆動方式の違いを感じられることはけっこう少ないかも。
ただ、前後の重量の違いからくる乗り味の違いはあるかもしれません。今回車の動きが落ち着かない感じがしたのは、4輪駆動に比べてFRの方がフロントの重量が軽くなっていることが影響しているかもしれません。
そんなこんなで、4輪駆動かFRかは、フィーリングというよりは必要かどうか(雪道を走ることが多いかどうか)で決めればよいと思いました。
まとめ
どちらの車も、非常に模範的に車は動くし、とびぬけた要素がなく全体にまとまっていて、長時間運転していて疲れない、とにかく「安全に人をA地点からB地点まで移動させるんだ!」というようなメルセデス・ベンツらしさを感じさせてくれました。
一方で違いもありました。
Cクラスは、電動化・自動運転化時代を見据えた新しい感覚の車になってきていると感じました。車のハードウェアとしては正常進化しながら、ドライバーに何を伝えるか、というところではガラッと変わってきているような印象です。ドライバーに車の動きを伝えない方向に舵を切っているように思います。
メルセデス・ベンツがこうした「新世代の感覚」をミドルクラスに展開する実験場として(GLCではなく)Cクラスを選んでくるところも、セダンがもはや「脱・保守」であることと関係している気がします。
それに対して、GLBはいわばアナログな感覚を残した車。メルセデス・ベンツは2010年頃に意図的に(BMWを意識して?)スポーティできびきびした動きに振っていた感じですが、この車はSUVでサスペンションストロークが大きいこともあり、それよりも前のゆったりしたメルセデス・ベンツが戻ってきたような感じすらします。
そんな2台の違いを見ても、セダンというニッチになりつつあるカテゴリで、「脱・保守」の様々な試みをできる(逆にしなくては生き残れない)Cクラスと、ザ・ファミリーカーとして、ある意味無難にまとめなくてはならない(それゆえ、とてもメルセデス・ベンツらしいともいえる車づくりになる)「新・保守」としてのGLBの立ち位置の違いを感じ取れるような気がしました。
(※1)2022 (Full Year) Global: Mercedes-Benz Sales Worldwide by Region and Model










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