最近、「安心」一辺倒だったスバルに変化が出てきました。
2026年1月のオートサロンで、新しいWRX S4 STI Sport♯が出展されました。待望のMTです。
今回は、スバルS210持ちの私が、この車のご紹介をいたしましょう。
うらやましいと思ったのかどうかについても明かしていきます。
スバル WRX S4 STI Sport♯の概要
2026年1月16日現在、スバルからリリースが出ておりますので、詳細はそちらをご確認ください。
スバル WRX S4 STI Sport♯に関するプレスリリースを読む

標準車(WRX S4 STI Sport)との違いは?
さっそく、標準車との違いを見ていきましょう。
パワートレイン・駆動系
- 6速マニュアルトランスミッション(MT)を搭載
足回り・シャシー
下記装備を追加
- STIチューニングのZF製電子制御ダンパー(専用チューニング)
- STI製フレキシブルドロータワーバー(フロント)
- STI製フレキシブルドロースティフナー(前後)
ブレーキ・タイヤ・ホイール
- brembo製18インチフロント対向6ポット&リヤ対向2ポットブレーキキャリパー(ゴールド塗装)+ドリルドローター
- 245/35R19 ブリヂストン ポテンザ S007装着
ちなみに、標準車は245/40R18 ダンロップSPORTMAXX GT600Aを装着。
内装他
- Recaro製フロントシート(ウルトラスエード+イエローパーフォレーション)
- 本革巻きMTシフトノブ&ハンドブレーキレバー(STI仕様)
なんといってもこのモデルの特徴はMTであるということ。
あとはブレーキの強化(後述)とおなじみのSTIパーツが装着されていること。
おそらく車両本体価格は650万円強くらいの設定かと思います。
2024年スバル WRX S4 STI Sport♯との違いは?
ご存じの方も多いと思いますが、スバルは2024年にもオートサロンにWRX S4 STI Sport♯を出展し、その後500台限定で販売しています。そのモデルとは何が違うのでしょうか?
(当時のWRX S4 STI Sport♯の概要は下記にまとめてあります)
スバル WRX S4 STI Sport♯(VBH)、抽選エントリー締切。どんな車?

簡単にまとめておきたいと思います。
トランスミッション
| モデル | 変速機 |
|---|---|
| 2026 STI Sport♯ | 6速MT |
| 2024 STI Sport♯ | CVT(スバルパフォーマンストランスミッション) |
→ここが違いのすべて、といっても良いかと思います。
足回りとシャシーパーツ
| モデル | 足回りとシャシーパーツ |
|---|---|
| 2026 STI Sport♯ | 電子制御ダンパーの専用チューン |
| 2024 STI Sport♯ | 標準 |
共通点
- いずれもSTIパフォーマンスパーツを装備している(例:フレキシブルドロータワーバー、フレキシブルドロースティフナー等)
タイヤ・ホイール&ブレーキ
| モデル | タイヤ/ホイール |
|---|---|
| 2026 STI Sport♯ | 245/35R19 ブリヂストン ポテンザ S007 マットグレイ塗装のアルミホイール(8.5J) |
| 2024 STI Sport♯ | フレキシブルパフォーマンスホイール(フロント) BBS製鍛造アルミホイール(8.5J) |

| モデル | ブレーキシステム |
|---|---|
| 2026 STI Sport♯ | brembo製18インチフロント対向6ポット&リヤ対向2ポットブレーキキャリパー(ゴールド塗装)+ドリルドローター |
| 2024 STI Sport♯ | 標準車に準ずる |

→ここがトランスミッション以外では一番の違い。2024年は初めてフレキシブルパフォーマンスホイールを導入、目玉としていましたが今回は非採用。その代わり2026年は要望の多かったブレーキの強化を実施。ある意味「分かりやすさ」を狙った商品設計だと思います。
スバル S210との違いは?
スバル S210はエンジンや吸排気系、トランスミッション制御や空力まで全部「チューンしなおした」こともあり、立ち位置の全く異なる車ですが、一点注目しておきたいのがブレーキ関係。
S210と2026 WRX S4 STI Sport ♯ではリアブレーキが違う
S210:フローティングタイプ
WRX STI Sport ♯:対向2ポット
なぜでしょうか?
おそらくですが、3点あります。
理由①:MT車は「Fun」な味付けを重視
スバルはMT車では、ブレーキで姿勢を変えるような、「少し遊べる」ような動きを実現しようとしたのかもしれません。具体的には、トレールブレーキング(ブレーキを残しながらハンドル操作を行う操作)をした時にリアを制動限界側に近づけて積極的な姿勢変化をしたい場合に、フローティングブレーキの初期の噛み方だとちょっと不足、と考えたのだろうと思います。いわば、リアブレーキを「挙動を作る」装置として使っている。
逆に、S210(やホンダ シビック タイプR)は、旋回中の姿勢変化をできるだけ起こさないためにフローティングブレーキを使っているのかな、と。あくまでもフロントで姿勢を作り、リアは減速を「助ける」、そういう役割に徹しているのかと思います。そういう意味では、リアブレーキは「挙動を乱さない」装置。(ポルシェも後軸寄りの重心バランスにも関わらずリアブレーキが相対的に小さいのは、リアのヨーの立ち上がりによってドライバーが車の姿勢を「誤解する」のを極端に嫌うから、というのもあります。ここら辺がBMWのMシリーズと決定的に違うところ)
理由➁:ビスカスLSD付センターデフ方式AWDとのマッチングがいいから
MT車に搭載されるAWD方式は、スバル伝統の「ビスカスLSD付センターデフ方式」。トルクの移動がパッシブ(受動的)で、前後のトルク差は、「出てから必要があれば解消」するし、そもそも「あまり解消しようとしない」。ブレーキ中の前後の回転差が出てもあまり介入してこないようです。その特性を使えばリアのブレーキングで向きを作りやすい。
逆にCVT車に搭載される、VTD-AWDはトルクの配分を連続的に可変にする方式で、ブレーキング時に生じる前後回転差も極力解消しようとするようです。そこに来てリアに強いブレーキがかかると、前後の回転差が不安定になる。それに対してVTD-AWDは前後トルクを能動制御する特性上、ブレーキング時に生じる回転差を安定側に収束させようとするため、ブレーキと綱引きしてケンカをしてしまう。なので、この方式の場合は役割分担して、できるだけリアブレーキは邪魔をせずにフロントで減速するのを「助ける」だけのほうがいい、(前後トルク配分による)姿勢制御はAWDシステムの方で行う、ということになるのかと思います。
理由③:マーケティング上の理由から
2024年の限定車やS210に対して、限定車なのにブレーキがプア、bremboなんだからフローティングブレーキはやめて、みたいな声は実際にあるようです。
技術的にどちらでも成立する前提の中で、見た目の分かりやすさや商品力の観点から対向2ポットが選ばれた可能性も、おそらくマーケティングの観点からはあったのだろうと思います。
限定車WRX S4 STI Sport♯は「魅力的」か?
この問いに対する答えは、「人による」でいいと思います。
応募を検討するにあたって(限定であることだけは告げられているので、おそらく抽選などが行われると思います)、一応ポイントになりそうなところだけ書いておきます。
トランスミッションは、先代までのWRX STIのものとは違う
ご存じの通り、今回のトランスミッションは北米やオーストラリアの仕様と同じもの(それでもサイドブレーキを右側に持ってきてくれたのはうれしい)。

TY75という、レガシィなどで使っていたものの発展形です(もともと5速のものを6速化)。
許容トルクが360Nmと言われているため、エンジンもおそらくCVT用よりもデチューンした350Nmのスペックで登場すると思います。
このトランスミッション、軽快な操作感がある点は魅力ですが、歴代のWRX STIに搭載されていたTY85とは感触にそれなりの違いがあります。
TY85の硬質な感じこそWRXだ、という方にはちょっと物足りないかもしれません。
エンジンのピーク出力・トルクも控えめなことからも、WRX STIからの乗り換えを考えている方には注意が必要かもしれません。
DCCD(ドライバーズコントロールセンターデフ)はついていない
歴代WRX STIのファンの方には、DCCDがあるから好き、という方もけっこういると思います。

今回のMTに組み合わされるビスカスLSD付センターデフは、それとはかなり違ったもの。通常50:50の前後トルク配分を、スリップを検知した時だけ可変制御するものです。積極介入しないこともあり、感覚的には「あんまり曲がりやすくない」車、という印象になるかなと思います。
WRX STIではフロント、リアにそれぞれ搭載されていたLSD(フロントはヘリカル、リアはトルセン)もありません。
これはこれでオープンデフのような自然の動きが楽しめるので私自身は大いにありだと思いつつ、少なくとも曲がる感覚はかなり違うのは確かなので(ちょっと昔でいえばWRX STIとレガシィのMTモデルの違いに相当)、そのあたりは注意した方がいいポイントかもしれません。
ほかにも魅力的なMTモデルはある
最初からWRX S4のマニュアルに乗りたい、という方であれば迷うことはないと思いますが、このクラスのMTには、ほかにも魅力的なモデルがあるのも確かです。
最右翼はシビック RS / タイプR。
シビックRSの場合、440万円(2026年1月現在)からとかなり魅力的な価格で、シビックタイプRと兄弟のトランスミッションを味わえます。ボディもタイプR前提のかなり強固なボディ。とにかくMTの感覚を味わいたい、というのであればかなり魅力的な選択肢だと思います。

タイプRも、価格は高くなりましたが620万円弱(2026年1月現在)と、おそらく今回の限定車と同じくらいの価格になると思います。タイプRのMTのフィールは、個人的には大好きで、これだけでも味わう価値があると思っています。また、そのままサーキットに持って行けるくらいの速さを持った車なので、FFは絶対嫌だ、ホンダは嫌だ、赤いバッジはあり得ない、という方でなければかなり強力なライバルになるのかな、と思います。笑
ただしこちらは4人乗りですが。。。

なぜ、今回スバルは限定車として出すのか?
スバルとしては、トランスミッションを変えた分、台数を稼いで投資回収をしたいと考えているに違いありません。それであれば、アメリカ仕様の素のモデルを持ってきて(アメリカではCVT仕様の方が「全部盛り」で、MTはその下に位置づけられています)、ベースグレード+αくらいの位置づけで売った方がいいはずです。
でも、そうしませんでした。
なぜでしょうか?
スバルも強気の需要予測はしていない?
少なくとも外から見ている限り、スバルがこのMTモデルに対して強気の需要予測を立てているようには見えません。
なぜでしょうか?
- 歴代WRX STIからの乗り換えは期待できない

これが一番大きいかと思います。今回のMTモデルは、あくまでもWRX S4のマニュアルであり、WRX STIとは立ち位置の異なる車です。パワー・トルクも違う、MTの硬質感も違う、AWDのシステムも違う。
そうなると、よりオーセンティックなWRX S4、速さよりも楽しさを追求するMT車、という立ち位置にせざるを得ません。もしかすると歴代レガシィのMT車オーナーは興味を持つかもしれませんが、その人たちはすでにスバルから離れてしまっているかも。
そうなると、買い替えをしてくれそうな一番の母集団がいない、ということになります。
- 新規顧客の開拓ができるかも微妙
では、新規はどうか、というと、シビックを筆頭として、カジュアルにMTを楽しめる車は意外とある。そういう「とにかくMTを楽しみたい」ユーザに対してアピールできるかというと、そこまで強くない(ベース車の価格が高いこともその一因)。
そうなると、やはりAWD+MTの組み合わせに乗りたい、あるいはWRX S4を検討しているけど、MTだったらよりいいな、というかなりニッチな層がメインターゲットになってしまう。いわば、WRX S4購入候補者に複数の選択肢を与える、くらいの話になってしまうわけです。
反響によってはカタログモデルになるかも?
おそらくスバルもこの需要が読み切れず、とりあえずお客様の反応を見てみよう、という状況なのだろうと思います。何なら、2024年には最初から「限定500台、抽選」と発表していたにもかかわらず、今回(2026年)は具体的な応募受付方法を発表していないことからも、スバルが今一生懸命マーケティングをしていることが伺い知れるというものです。笑
もし、反響が大きかったら、STIパーツを取り去った素のモデルがカタログモデルになるかもしれません。
さて、どうなりますことやら。
S210オーナーとして、乗り換えたい?うらやましい?
結論から言うと、私はどちらとも思いませんでした。
ただ、選択肢が増えることはすごくいいことなので、MT車が出ることは歓迎ですし、できれば誰でも買えるカタログモデルにしてほしいとは願ってます(それだけ反響が多ければいいなぁ、と思っています)。
なぜそう思ったか、ちょっとかみ砕いて説明します(いったい誰のためだ?→S210オーナーのためです!)
理由①:S210は一つの完成形

スバルはもともと過酷な状況でも平常心で運転できる、そういう車だと思っています。そのために、車はできるだけ素直に動く、ドライバーを駆り立てない、そんなところが美点だな、と。
S210が納車されて乗ったら、ほんとにそのまんま。「車の動きのスムーズさ」に感動しました。
その実現のために、かなりの手を入れているようです。
例えば、エンジン。
エンジン単体のパワーアップよりも、点火、デュアルAVCS、電動ウェイストゲートの制御、そして低圧損エアクリーナーエレメントやダクト、菅径を拡大したメインマフラーにエキゾーストパイプといったエレメントまで全部見直しています。
ブレーキもブースターのセッティングを徹底していて、ちょっと味わったことのないような繊細なコントロール感を味わえます。
横方向の動きに対しても、フレキシブルパーツ類はもちろんのこと、フレキシブルパフォーマンスホイールによってちょっと珍しい感覚の舵の入りを経験できます。とにかく、「滑らか」。おそらくリアスタビライザーに初めて採用されたブッシュも効いているのだと思います(面白いことにこのブッシュ、冷間時に段差を通過するときに「ポコン」という音がします。)
空力関連も細かい手が入っています。
体を支えるシートもとてもいい(ちょっと疲れるけど)。
そして、一番大きいのはこれらの車の動きの変化に合わせて、制御系のリセッティングをしているであろうこと。公式には「専用ドライブモードセレクト」としか書かれていませんが、このレベルの変更点があってEPSを再セッティングしていないとは考えにくく。。。運転していても、車がより滑らかに動くようになったのに対して、EPSのセンターの反力が出るポイントなど、細かいところにも手が入っていることが感じられます。
理由➁:エンジンのチューンもやっぱり大きい
たかが25PSですが、これはけっこう大きい。先ほどの吸排気のチューンによってツキが良くなっているのはもちろんのこと、5,000rpmからの伸びはやっぱり別物。
標準車で5,000rpmを超えると、頭打ち感はそこまではないものの、そろそろシフトアップかな、という感覚はありました。それが、今回のチューンで、「まだ伸びているけど、もうここで終わり?」みたいな感覚に変わりました。
もちろん物足りなさはなくなってはないものの、シフトアップの前に苦しそうな、あるいは失速しそうな感覚(もうこれ以上回しても意味ないな、みたいな感じ)の領域があるのは、個人的にはスポーツカーにはあってほしくないと思っています。その点、S210は伸びている最中にレブリミットが来る(最高出力は5,700rpm、レブリミットは6,000rpm)ため、あれ、もう終わり?という感覚はあるものの苦しさは全く感じないで済みます。
CVTはS210に合っている
※これはMTが劣る、という話ではなく、S210という車の性格との相性の話です。
いやー、これを書くとめちゃ叩かれそう。
でも、私はもう一度S210を買い直すとして、MTがあってもこっちを選ぶかなと。
理由は、一つにはS210のCVTの制御がすごくいいからです。残念ながら標準車では味わえなかった切れ味鋭いダウンシフトがS210では楽しめます。
もう一つには、CVTの「クラッチがない」特性が、この車の滑らかな運動特性にとても合っていると思うからです。シフトアップしてもダウンしても動力が途切れない、この滑らかさは車の動きと馴染んでいて心地良いです。(もちろん良くできたDCTがあったらそっちを選びますけどね)
そして最後は、さっきのエンジン特性とのマッチングがいいから。5,700rpmが最高出力で、そのあと6,000rpmでレブリミット。MTだと私はこの領域を使い切れないと思います。なぜなら、この回転差は2速の場合、およそ4㎞/h(78㎞/h→82km/h)の速度差にしかならないからです。フルスロットルではたぶん0.3秒くらいで到達。そこをぴったり合わせてシフトアップするにはメーターを睨んでないとできません。
なので、私はS♯でオートにしておきます。(この話は、たんにこのエンジン特性がCVTを前提としている、ってだけですけどね)
まとめ:WRX S4 STI Sport ♯はS210とは「別の完成形」
WRX S4のMT車は、S210とは別の山に登った車だと感じます。(ダメ、とか好きじゃない、とかではなく)
MT車は、きっとMTらしい「操る」楽しさ満載の車になっていると思います。TY75も軽快感があって車とマッチしていそう。一方、S210は、スバルの目指した「どこでも、どんな時でも平常心で運転できる(すみません、勝手に解釈しています)」を、「滑らかさ」を究極まで突き詰めたことで一つの完成形まで持って行った車。
どちらも、今のスバルが目指したい、「走りの楽しい」車になっていると思います。
まとめ

個人的には、今回応募はしません。
とはいえ、繰り返しになりますが、私はスバルが(トヨタとの共同開発車以外に)MT車を復活してくれたことは大歓迎ですし、スバルの未来のためにも「走りの楽しさ」に振った商品企画は大切だと思っています(「安心」の分野は「データ量」による力技が勝負の世界なので、正攻法では中国やアメリカにかなわなくなる)。
ちょっと見ただけでも「速さ」だけでなく「楽しさ」に主軸を置いた車のように思いますので、ぜひ多くの人に楽しんでもらえたらなぁと思ってます(ってスバルの人間じゃないのに。笑)
スバル S210はスーッと口どけする超滑らかプリンの味わいでした(納車直後の印象)を読む










コメントを残す