我が家の25年選手、スバル レガシィ S401 STiバージョン(以下S401)は、ダッシュボードとメーターパネル周辺からカタカタと音が鳴ります。
この車のカタカタ音を止めるべく作業をしましたので、その記録を残しておこうと思います。
が、ちょっと待って!最近は新車納車時からビリビリという、いわゆるビビり音が鳴ることが多いような。
「まず理屈から」がアミオ流。
そこで、第1回目は、どうしてこういう音が鳴るのかを調べてみた!ということで、
「調査」編から行きたいと思います。
はじめに:車内の異音にはどんなものがある?
現代の車は、ロードノイズやエンジン付近からの遮音が行き届いているためか、あまり心地良くない、いわゆる「異音」も耳につきます。
そもそも、異音にはどんなものがあるのでしょうか?
- パネル共振音(面が鳴く)
- 部品同士の微小スリップ音(チリ音)
- ハーネス・クリップの接触打音
だいたい、こんなところかなと思います。
意外に多い現代の車の異音、それには訳があった!
現代の車、それぞれの異音
それにしても、現代の車(※)は、思いのほか先述の1.と2.の音がすることが多い気がします。逆に3.の音はあまり遭遇しません。
(※)明確に定義はないですが、ここではざっくり21世紀につくられた車、ということにしておきます。
例えば、ホンダ シビック タイプR。いわゆるザラメ路面を走った際、ダッシュボードの左側Aピラーの付け根付近から「ビリビリビリ」というような音がします(1.の音)。

メルセデス・ベンツ GLBも、ザラメ路面を走った際に、こちらはわずかではありますがメーターパネルとダッシュボードの合わせ目付近から「ジリジリジリ」というような音がします(1.の音)。

ポルシェ 718ボクスターは、特定の速度域と路面の状態が重なると、運転席のロールバーカバー、サイドフラップ、ウィンドウディフレクターの助手席側あたりから、「カタカタカタカタ」というようなチリ音がしてきます(2.の音)。

ちょっと古い車でも、やはり同じ。
スバル レガシィ S401 STiバージョン(S401)。次回の主役です。メーターパネルから盛大な「カタカタ」音が鳴ります(2.の音)。そしてダッシュボード全体も「ガタガタガタ」と鳴っています(1.の音)。


スバル レガシィ ツーリングワゴン(BP5)。最近、センタークラスターのオーディオ付近から、「ジリジリジリ」という音が鳴るようになりました(2.の音)。

一方、我が家の古参、メルセデス・ベンツ W126(2代目Sクラス、1989年)はほとんどこの手の音が鳴りません。

なぜ現代の車には「異音」が多い?
W126は異音が鳴らないのに、現代車は鳴る。
それはコスト削減のためでしょうか?
答えは、そんなに単純ではないようです。調べてみるとけっこうおもしろかったので書き残しておきます。
①構成部品が「軽量化」「薄肉化」されたから
現代の車は、燃費規制や安全性、セキュリティなどの要件がシビアで、重量がどんどん膨れ上がっています。それと相殺するために、内装パーツのプラスティックを中心に極限まで薄くして、軽量化を図っているようです。
そのため、起こるのがこちら。
共振周波数の変化
W126のような時代では、そもそもソフトパッドやウッドパネルなどの基材やパネルが厚く、重量があるため、振動しにくいものでした。


また、重くて固有振動数が低いため、路面の高周波振動(ザラメ路面などで発生しやすい100Hz~500Hz程度の周波数)と周波数が一致せず、共振しにくかった。
もちろん、部品の合わせ目にはフェルトやクッション材を多用するため、硬いもの同士が物理的に擦れ合うこと自体が少なかったことも、ビビり音がしない理由だと思います。
一方で、現代の樹脂パーツは薄くて硬いことから固有振動数が上がってしまい、路面からの高周波振動に共振しやすくなってしまったのですね。

➁部品の止め方が変わったから
昔はビスやボルト止め、さらには接着剤といったものを使って、部品同士が動かないようにしていましたが、今は主に生産効率の観点から「はめ込み」によって部品同士を固定することが多くなっています。
具体的には「爪」で固定するのですね(スナップフィット)。これがひょんなことで「遊び」ができてしまい、部品同士がカタカタ鳴る原因になっているようです。

たとえば、、、
・熱膨張の差
エアコンの冷風や直射日光による温度変化で、隣接するパーツがコンマ数ミリ単位で伸縮します。それが「遊び」の原因になります。
・設計公差の累積
製造精度(立て付け精度)自体は昔より上がっていますが、部品点数が爆発的に増えたため、積み重なった誤差(累積公差)を完全に抑え込むのが難しくなっているようです。
その結果、それぞれ設計公差を持った部品が隣り合うと、アンラッキーな場合は「鳴りやすい」個体が誕生します。涙
・経年劣化
スナップフィットは「面圧」で部品同士を固定するものですが、その「面圧」が経年により低下して、部品同士が動きやすくなるようです。
③タイヤや足回りが吸収してくれなくなったから
ここまで、主に車内における「異音」が発生しやすくなる構造的要因を見てきましたが、素朴な疑問が。
そもそも振動が車内に伝わらなければ、こんな問題は起きないはずですよね?
ということで、(高周波)振動の発生源に目を向けてみましょう。
タイヤです!
昔の車は70扁平は普通で、65扁平だと「扁平だなぁ」というくらいの時代。79年設計のW126も前期型は70扁平、後期型で65扁平です。
今の車はセダンでも45~50扁平、スポーツカーだと35扁平あたりも多くなっています(タイプRは30扁平)。


扁平タイヤだと、サイドウォールが極めて薄いため、ザラメ路面の細かな凹凸をタイヤで吸収しきれず、高周波振動を車内に伝えやすくなっています。
足回りも同様で、応答性や操縦安定性を高めるため、硬いサスペンションとダンパー、硬めのブッシュ類を選ぶ傾向が強くなっています。その結果、「遊び」が少なくなり、高周波振動を車内に伝えるのに一役買っています。
④車体の剛性が高くなっているから
足回りで吸収しきれなかった振動はボディ骨格を伝わります。
現代の車は、高張力鋼板などの使用、骨格構造、溶接材や接着剤の多用によって、車の剛性、特に曲げ剛性やねじり剛性が高くなっています。
その結果、走行性能は高くなる一方で、振動が減衰せず、そのまま車内に入ってきやすくなります。

⑤エアバッグが搭載されているから
ついに車内まで振動が入ってきてしまいました。
再びダッシュボードに注目しましょう。
ん、最後の砦のダッシュボードが、振動を吸収してくれない?
それは、エアバッグの搭載が影響している模様。

エアバッグは動作条件が非常に厳しく、展開速度は時速に変換すると300㎞/h以上になるそう。その際に、展開する基部がぐらぐら動くと危ない。なので、ダッシュボードの裏側が昔の車に比べてすごく「強固」に作られているようです。
具体的には、インストルメントパネル・クロスメンバー(インパネリンフォースメント)。Aピラー同士をつなげる太い横梁です。ここにエアバッグを取り付けることで、エアバッグは「強固な発射台」を得たわけです。
そして、まさにこのために、ダッシュボードが一つの「剛体」になった。
タイヤ→薄くて振動を吸収しきれなくなった
足回り→遊びが少なくなり、振動を吸収しきれなくなった
ボディ→剛性が高くなり、振動が遠くまで伝わるようになった
ダッシュボード→こちらもエアバッグの発射台になり、振動を吸収しなくなった
まさに、振動面では「地獄」です!!
⑥部品点数が増え、振動に不利なレイアウトになっているから
こんな感じなものですから、ダッシュボードは「硬い」。そしてその中はエアバッグやエアコンの取り回しなどでキチキチ。
そこから押し出されたかのようにセンターモニターやメーターパネルがダッシュボードの「外」に出てきていますが、これがまた大変。この手のものは、下側のわずかな支持部だけで支えなくてはなりません(キャンティレバー構造)。そうすると、当然振動には弱く、、、なりますね。

まとめるとこんな感じです。
・ダッシュボード裏にいろいろ詰まっていて取り回しが超大変なことになっている
→モニターやメーターがダッシュボードから「押し出されてくる(生えてくる)」
→モニターやメーターを「面」で支えるようなレイアウトを取りにくくなる
→支点が少なく、構造的にも振動に不利になる
本当に大変なんだなぁと思います(他人事ですみません)。
(※もちろん、このレイアウトは商品企画的な要因も大きいものと思われます)
振動が車内に伝わってきた後どうなるの?
残念ながらザラメ路面などからくる高周波振動は、今見てきたようになかなか吸収されずに車内まで伝わってきてしまいました。
その振動はどこに出没するか!?
あまり触れませんでしたが、現代の車はダッシュボードも含めてモジュール化されていて、一体成型されているものが多いです。そうすると、振動はモジュール内では吸収されずに、モジュールとモジュールの「合わせ目」に出てくるのですね。


その典型例が先ほどの「爪」。
ここにエネルギーが集中して、「鳴く」わけですね。
剛性が高くなり、途中で逃げなくなった振動エネルギーが、部品の「合わせ目」にくる。そしてその「合わせ目」は爪で「はめている」だけ。
・・・どうしてもビビり音は発生しやすくなりますよね。。。
蛇足ですが、悲劇的にモノが詰まっているダッシュボード裏。その中で唯一ぽっかり空いている場所があります!
そう、グローブボックスです!!
じつはこれはこれで大変で、消されずに残った振動がこの空洞で共振して、ビリビリ鳴るようなのです。せっかくの空洞もこうやって音を増幅する「スピーカー」になってしまうのですね。
メーカーはどうやって異音対策をしている?
ここまで、現代の車に異音が出やすい理由を見てきましたが、もちろんメーカーも最大限の努力をしているのだと思われます。
ロードノイズに対しては、吸音材の配置やサブフレームとの接合部の工夫、さらにはアクティブノイズキャンセリングのような、人工的に音を発生させて特定の周波数の音をマスキング(聞こえにくくする)ようなことまで、いろいろとやっているようです。
ビビり音のような共振に対しても、設計段階において、特定の周波数に共振しにくいような部品の肉厚最適化をするなど、様々な対策はしているようです。
それでも、ビビり音は「構造由来の問題になってしまうもの」なので、対策も完璧にはできないようです。
まとめ
こうして見てみると、現代の車が新車にもかかわらずビビり音がするのは、半ば「仕方ないかなぁ」というふうにも思えてきます。
燃費規制、騒音規制、衝突安全などに配慮しながら、一方で生産効率も上げないといけない。そうした中で電動モーターを搭載し、様々な安全デバイスを搭載し、環境規制適合のための補機を搭載し、といった要件を詰め込むと、車は重くなってしまう。そうすると軽量化は必須。
そうしたせめぎあいの中で、「チリ音はある程度出ても仕方ない。後から消すしかない」みたいになってるのかなぁ、と思います。
ということで、ビビり音については諦めました!
・・・あ。
というわけにはいきません。
気になるものは気になるもの。
次回以降、S401の異音対策をしていきたいと思います!









コメントを残す