メルセデス・ベンツ 300SE(W126)の定期点検のためにディーラーに行ったところ、代車としてメルセデス・ベンツ C200 4MATIC(W206)を貸してくださいました。W126オーナーから見て新世代のメルセデス・ベンツ Cクラスがどのように映ったか、試乗レビューをお伝えします。
私の愛車、メルセデス・ベンツ 300SE(W126)の紹介はこちら。
我が家に間もなくやってくる、メルセデス・ベンツ GLB 200d 4MATIC(X247)の紹介はこちら(カテゴリページが開きます)。
メルセデス・ベンツ C200 4MATIC(W206)試乗:衝撃的!
説明ゼロからスタート(いつもの通り)
ふつうは短い間車に乗っても良さはわからないのと、素人が何を言っても仕方ないだろうと思うので、試乗した際の印象はあまり書かないことにしているのですが、この車は衝撃的だったので書きます。
代車を出してくださる時は、いつも説明なし。ハンドルのコラムのところに「この車はコラムシフトです。お客様に十分に使用方法を説明してからお貸出しください」という紙(?)がぶら下げられています。いや、わかりますからいいですけどね。。
ということで、走り出します。うわっ、ステアリングほんとに軽くなったな。Eクラス(W213)でも軽いと感じましたが、これはもっと軽い(後でスポーツ+モードにしてみたがそれでも軽い)。ただ、そんなことではもう驚きませんよ。
視界性能
相変わらず左前方向の視界は悪い。そしてこの車はかなりのエアロボディになっており後方視界もあまりよくありません。視界性能は全体として、それほど印象はよくありません。

ステアリングフィール: 未体験ゾーン
道路に入るときに、超びっくり。目が点になりそう。
何だこのクイックさは!4WSついている?(オプション。メルセデス・ベンツではリア・アクスルステアリングと呼ぶそう。後で見たところついていませんでした。)私が持っているポルシェ718ボクスターよりも断然クイックに車が曲がるのです。ありえん。。
その後も交差点を左折したりしましたが、慣れてないと「えっ!?」と思うほどクイックです。
そしてもっと驚くのが、ステアリングフィール。バイワイヤ(電気式)かと思うほど、全く操舵反力がないままスッと回り出します。まったくと言っていいほどステアリングを曲げ始めるときのフリクションがない。一方、本当に全くアソビがなくタイヤが曲がり出す。誇張なく(試してみましたが)指一本でハンドル操作できます(推奨しませんが。。)。
それでいて、すごく直進性が高いのです。まったく進路が乱れない。車の中には、ハンドルを切り始めの部分で操舵反力が重めになるよう設定してあり、運転手が不意にハンドルを曲げないようにすることで直進安定性を保っている車もけっこうあるようですが(たとえばホンダのミニバンなど)、この車はそういうのが一切ない。そうしたセンター付近の意図的な重みがないのに、まっすく進みます。それでいて曲がるときはアソビなく超クイックなんだからびっくりです。
そして、全体を通してステアリングは非常に軽く、さらに路面からのキックバックは本当に少ないのでした。デジタルだわー、ゲームみたいだわー、という印象。
(スポーツモードでステアリングを重くしても、とにかくハンドルを戻そうとするアシストが強く、とても人工的でした。)

乗り味: これまた不思議
そしてサスペンション。明らかに先代Cクラスよりサスが柔らかく、ゆらーりゆらーりと動きます。EクラスのW213に比べても、圧倒的に柔らかい(と感じる)。特に高周波振動(路面の細かい凹凸を走った時に発生する振動)に対してはダンパーの減衰力が低い感じがします。昔のドイツ車の「硬めだが路面に張り付いたようにグリップする」という感覚とはだいぶ違います。そういう意味ではW126に通ずるものがあります。が、W126と違って、タイヤ→サスペンション→ボディと機械部品が動いているという感じがまったくないのです。絨毯の上をふわふわ動いている感じ?エアサスかと思うような感じ。
全く「機械部品が動いている」感が伝わってこないという意味では、すごく「滑らか」と表現されることが多いのだろうと思います。少なくとも路面がそれほど荒れていないところでの乗り心地に関しては一つの完成形なのかもしれません。一方、昔の「硬質な」感じのドイツ車が好きな人(私を含む)からするとちょっと新しすぎて頭が消化しきれない感じです。。
語弊を恐れずに言えば、だいぶ昔のトヨタの高級車みたいな感じ。。とにかく車の動きを伝えてこないのです。でも、たまに路面の荒れたところではガツンとくるのですが。
(ただし、高速域での動きはフラットです。そのあたりは昔の日本の「高級車」とは全く違います)
サスペンションの技術的な解説はこちらが詳しいと思います。
メルセデス・ベンツ W206型Cクラスのサスペンション——安藤眞の『テクノロジーのすべて』第72弾
また、特に低速時にはブッシュが柔らかいためか、プルンプルンと動いて衝撃をいなすような動きが見られます。このあたり、操安性を最優先に考えながらも、乗り心地には最大限の配慮をしているメルセデス・ベンツらしいかんじです。
そしてブレーキ。なんというかこちらも踏みごたえがあまりなく、非常にデジタルにボタンを押している感じ。反力が少なく、こちらもゲームをやっている感じ。個人的にはブースターが効きすぎのような気がします。こちらもきちんと効くのは変わらず。
(あと、踏みはじめに少なくないアソビがあること、そこを通り越すと急にブースターが効いて必要以上にブレーキが効くところも昔のメルセデスにはなかった味付けです)
エンジン: 静か、始動時にビックリ
エンジンは直列4気筒1.5Lターボで、スペックは、最高出力204PS/5,800-6,100rpm、最大トルク300Nm/1,800-4,000rpm。それに、ISG(インテグレーテッド・スターター・ジェネレーター)による15PS、208Nmのパワーアシストがつきます。車両重量1,770kgのため抜群に速いわけではありませんが、1.5Lからこれだけの巨体を軽々と動かすのですがから、時代は変わったものです。
エンジンからの音はかなり抑えられています。もともとエンジンも1.5Lしかないコンパクトなエンジンということもあります。
モーターアシストからエンジンの力のみに切り替えながらの加速は、それなりに段付きはあります。NAエンジンのような滑らかな伸びはさすがに無理。それでもこの組み合わせでは滑らかな方だと思いますし、エンジンは思いの外伸びやかで、加速はエコなエンジンにしては気持ち良いです。
しかし!驚くのはその始動。セルモーターではなく、ISGにより始動することで、ボタンを押すと瞬時に始動します。しかも振動がほとんどない。ですので、アイドリングストップからの再始動もものすごくスムーズ。

取り回し:非常に良い
ボディサイズは全長4755㎜、全幅1820㎜、全高1435㎜と、先代Cクラスに比べ全長で65㎜、全幅10㎜、全高10㎜増加。縦方向でさらに大きくなりました。それでも全幅1820㎜は近年のDセグメントの車の中では良心的(?)なほう。
しかし、小回り性能は相変わらず素晴らしいです。
マンションの近くで小回りを利かせないといけないシーンがあったのですが、4.7mを超えるボディサイズなのに、めちゃくちゃ小回りが利きます。何しろリア・アクスルステアリングがついてなくても最小回転半径は5.4m(FRモデルは5.2m)。リア・アクスルステアリングがついていると5.1mになります(FRモデルは5.0m!)
小回り性能は昔からのメルセデス・ベンツの美点で、ハンドルを大きく切るとキャンバー角がついて、ハンドルを切った方向にタイヤが倒れることにより切れ角を確保するようになっているようです。それにしても、という感じです、この車は。
静粛性:まあまあ!?
静粛性は、まあまあ。40年前の設計のW126の方が静かだったりします。
メルセデス・ベンツはタイヤとのマッチングのせいか、けっこうタイヤのパターンノイズが気になることが多いような気がします。この車(フロントに「BRIDGESTONE TURANZA T005 225/45R18 95Y MO」、リアに「BRIDGESTONE TURANZA T005 245/40R18 97Y MO」を装着)もけっこうパターンノイズがしていました。
そして、Sクラス、Eクラスとしっかり作り分けているように感じられました。最近のSクラスは乗ったことがないのですが、特にロードノイズの侵入はやはりEクラス(W213。そろそろ先代モデルになります)はCクラスより少ない。このあたり、しっかりとヒエラルキーがあるなと感じました。
Cクラスはメルセデス・ベンツの中ではミドルクラスなので、そのあたりは上のクラスに忖度して作らないといけないのでしょう。
メーカーの中での上位グレードは、すべての技術をつぎ込んで作る渾身の作になりますが、メーカーの中での中位グレードになると、そのあたりはヒエラルキーを守るための大人の事情が絡んできます。代わりに、上位グレードと共用している安全技術や高い素材を使ったボディ骨格やシャシーなど、通常そのクラスではありえない作りができるという強みもあるので、メリット・デメリットどちらもありますね。
・・・と申し上げましたが、高速走行での風切り音は非常に小さいです。
走行感覚まとめ:これはフランス料理屋が作った宇宙食だ!?
車の動きはめちゃくちゃ正確なのに、ステアリングを通してドライバーには車の動きを伝えてこない。
また車の骨格がしっかりしているので、足回りを柔らかくして乗り心地を確保しているのでしょうが、ほんとデジタルで、完全に車に「運ばれている」感じです。これもメルセデス・ベンツの確信犯的な味付けなんでしょう。。
全体として、車は正常進化、運転者へのフィードバックの伝え方がガラッと変わって(運転者に車の動きを伝えないようにしている)、自動運転時代の車になってきた感じです。
まるで伝統的なフレンチレストランに行ってみたら、宇宙食が出てきました!ってくらい(そんな経験はないけど)未来的な味付けに面食らいました。
乗ったあと気になってプロのレビューも見てみたのですが、この乗り味にそんなに驚いている人はいなかったので、もしかすると私が最近の車を知らないただの化石なのかもしれませんが。。とにかく私は車のハードウェアよりも運転者へのフィードバックの考え方に新しさを感じました。
運転支援機能
これはメルセデス・ベンツの十八番機能で、基本機能はAクラスからSクラスまで同じです。ですので、こちらはGLBが納車されたら別途ご紹介したいと思います。
印象を一言でいえば、機能は賢いけど運転はあまり上手じゃない(とくにブレーキが急で怖い)、です。


外観
セダンですが、空力にはとにかくこだわるメルセデス・ベンツ。よく見るとつるんとしていて、ボディ上部がかなり絞り込まれたデザインになっています。ホイールデザインも空力を考えているようです。Cd値は0.24。




特筆すべきはヘッドライト。片側130万画素のプロジェクションモジュールを連続可変させて照射角を制御する、とあります。なんかすごいなぁ。

内装・その他
センタースクリーンが大きく、メーターにもいろいろな機能を表示できる先進的なもの。表示は非常に見やすいです。



代車はかなり鮮やかなAMGラインのオプションシートがついていました。全体にシルバーパーツが多く使われ、ちょっとキラキラ。ニーズの大きい国の嗜好を反映しているのだと思われます。アンビエントライトも相変わらず。

シートは昔に比べてかなりホールド性を重視したものになっていますが、ともかく良い、と言えるシート。今回は長時間乗る機会はありませんでしたが、前に長距離乗ったW213のEクラスはホント疲れしらず。今回も同じような印象でした。

ついている機能でいいなと思うのは、シートキネティクス機能。シートクッションとバックレストを周期的に動かすことで緊張をほぐすもの。ホントに効果があるかは、長距離で試してないのでわかりませんでしたが。。

ちなみに、FRプラットフォームのセダンゆえ、後席中央は座面が高く、硬いので大人5人乗車はあまりお勧めできない感じでした。
ユーザーインターフェース
大きなセンターディスプレイで操作するのは最近のメルセデス・ベンツの特徴。ざっと使ってみただけですが、反応が早いことと、階層設計が良くできていて、いつもの通り良くできているなぁと思いました。こちらも仕様は違うものの、GLBが納車されてから紹介します。
まとめ
何度も言うようですが、とにかく運転者へのフィードバックのしかたが新しい車、という印象を持ちました。車ってもうこんなところまで来ちゃったんだー、というような感慨です。
整備が終わったW126の重いステアリングホイールとアクセルを踏みながら、「やっぱこれだよなぁ」と思う自分がいたのも事実です。
いずれにしても、車の一つの進化の形を感じることができたのは、とてもハッピーでした。










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