メルセデス・ベンツのW126(2代目Sクラス)といえば、日本ではバブルの象徴のような車。黒塗りのベンツといえば堅気でない方が乗る車の定番だったと思います。
そんなネガティブな印象も付きまとう車ですが、私にとってはとても思い出深い憧れの車、手に入れた今では「好きすぎる」車です。そんな私の愛車、メルセデス・ベンツ W126(300SE)を紹介します。
メルセデス・ベンツ W126との初めての出会い
元々の出会いは1980年。父の転勤で旧西ドイツに住んでいたときに、通勤用の(自分で運転する)車として家に来た車です。メルセデス・ベンツ W126は、W116の後継機として1979年のモーターショーで発表後、発売したての車でした。家の車は280SE。
家にはBMWの初代5シリーズがありましたが、(もちろん車格も違うのですが)比べるとW126は何もかも別格ですごい車だなぁと思っていました。静かさ、滑らかさ、乗り心地の良さ、何をとっても夢のよう。アウトバーンで190㎞/hくらいで走っていても静かで速度をあまり感じず、ほんとに快適でした。
そんな車で家族旅行に連れて行ってもらった帰りに高速道路の渋滞末尾に止まっていたら、制御不能になってスピンした車に突っ込まれたのでした。ほとんど傷も負わずに自分たち家族を守ってくれた時に、この車への信頼が確固たるものになりました。
いつかはクラウン、ではなくいつかはW126、というのが私の目標になりました。
40年ぶりにW126と再会!
あれから40年、父も老い、私も少し自由を楽しめる歳になりました。買うなら今しかない、と思いメルセデス・ベンツ W126を2021年頃から探し始めました。
父が乗っていたのがW126前期型の280SEだったので、エンジンは直列6気筒、さらに父が乗っていた色(ラピスブルーだと思います)かそれに近い紺色がいいと思い、業者にもお願いして探していましたが、なかなか出てこない。半年経って、そろそろ色の制約は抜かした方がいいなと思い探し始めたところ、何とW126後期型、1989年式の300SE、走行距離19,000kmという個体が!ディーラーにお伺いして試乗させてもらうことに。
グレード、年式は違えど約40年ぶりのご対面。乗ってみると当時の記憶が蘇り、興奮しました。まさに即決でした!
でも、買ったあと父を乗せたら、「ふーん、こんな車乗ってたんだっけねー。」・・・。特に車好きではない父には、それほどの感慨はなかったようです。。

メルセデス・ベンツ W126(300SE): どんな車?
W126が誕生したのは1979年。二度の石油ショック、公害、交通事故の増加等車の負の側面がクローズアップされてきた時代です。
先代Sクラス (W116、1972年~79年) では、世界に先駆けて安全性能の向上に努め、後のデファクトになる電子制御式ABS (アンチロック・ブレーキシステム) が世界で初めて搭載されました (ボッシュ社と共同開発) 。
W116の次世代にあたるW126でもこの流れを引き継ぎます。オフセットクラッシュ対策は世界初、SRSエアバッグ (W126から世界で初めて実用化。この方式が後に世界の主流に。日本におけるエアバッグ認定第1号) の採用も進みました。

そんな中でメルセデス・ベンツが次に取り組んだのは空力特性の徹底と軽量化でした。W126は、現代の車の空力の基礎を作った車と言ってもよいようです。

スペック
ボディサイズ等
まずはボディサイズ等
| 全長×全幅×全高(㎜) | 5020×1820×1435 |
| ホイールベース(㎜) | 2935 |
| トレッド 前/後(㎜) | 1555 / 1525 |
| 車両重量 前/後/合計(kg) | 870 / 720 / 1590 |
| 前後重量バランス | 54.7:45.3 |
| 最小回転半径(ⅿ) | 5.7 |
全長は5mを超えています。この車にはロングバージョンもあり、その場合は全長5160㎜。
ホイールベースも2935㎜と長め。先代 W 116型よりも65㎜伸びています。
車両重量バランスは54.7:45.3。じつは日産 GT-R(R35)とほとんど同じ。水野氏はメルセデス・ベンツを参考にしていたのではないかと思うほど似ています。笑
このバランスは加速時の前後重量バランスが最も良いと水野氏は何かでおっしゃっていていました。彼によると50:50より良いのだと。
この巨体の割に最小回転半径5.7ⅿは立派。横幅のあるV8エンジン搭載車があってこの数字。メルセデス・ベンツはもともとアウトバーンでの高速走行を想定してキャスター角がかなりついており(10度以上の車もある)、その恩恵でタイヤが少し倒れるように曲がることで切れ角が大きくとれるようです。
エンジン
エンジンスペックは下記。
| エンジン形式 | 103 |
| エンジン種類 | 直列6気筒SOHC |
| ボア×ストローク(㎜) | 88.5×80.2 |
| 総排気量(cc) | 2960 |
| 最高出力 | 185ps(136kW)/5700rpm |
| 最大トルク | 259.9Nm(26.5kgm)/4400rpm |
スペックは平凡に見えますが、この車が登場した1979年当時の日本は排ガス規制でみなパワーダウンを余儀なくされていた時代。ソアラが登場し、当時日本車最高出力である170PSを打ち立てたのが1981年ですから、当時としてはそれなりにハイパワーであることがわかります。
足回り
最後に足回り。
| サスペンション形式(前) | ダブルウィッシュボーン |
| サスペンション形式(後) | セミトレーリングアーム |
| ブレーキ(前) | ベンチレーテッドディスク |
| ブレーキ(後) | ディスク |
| タイヤ(前) | 205 / 65 R15 94H |
| タイヤ(後) | 205 / 65 R15 94H |
| 駆動方式 | FR |
当時の足回りとしては一般的な、リアのセミトレーリングアーム方式。
注目はタイヤ。65扁平の15インチ!これでも後期型になって扁平になっており、前期型は70扁平の14インチタイヤでした。
それでは、メルセデス・ベンツW126型、実際にエクステリア(特に空力)から見ていきたいと思います。
メルセデス・ベンツ W126(300SE): エクステリア
まずはW126のボディサイズから。先ほど見た通り長さ5020㎜×幅1820㎜×高さ1435㎜で、長さは先代W116よりも35㎜長いものの、幅は45㎜狭くなっています。これは、全幅を減らすことで前面投影面積を減らすためだと聞いています。
さらに、全体に尻上がりのスタイルにして空気の流れを改善し、フラッシュサーフェース化を進めたようです。そんなこんなで当時の量販車ではトップのCD値0.36を達成しています。とにかく細部まで空力オタクが喜ぶようなデザインをしています。


W126は、当時高価だった高張力鋼板やアルミニウム、樹脂の多用など、素材からの軽量化も行っているようです。
バンパーやサイドプロテクションパネルは、樹脂で覆われています。当時高級車の外装部分に樹脂を使うなんてことはかなり衝撃的だったようです。デザイナーの名前からサッコプレートと呼ばれるこのパネルは、板金修理の大半がこの部分に集中していることを重視したメルセデスが、修理代を節約できるようにと考えたものだそう。


メルセデス・ベンツ W126(300SE): インテリア
ドアを開けて中に乗り込みます。まずはドアの開閉音に驚きます。
ドアのキャッチャーも独特で、金庫みたいにバチンという音がして閉まります。金属音の余韻が残り、なんとも良い感じです。そしてその余韻がなくなると、しっかり外と隔てられた静寂が訪れます。

さて、運転席に座ってみます。驚くのは視界の良さ。Aピラーも細く立っていて、邪魔になりません。
それよりもさらに驚くのは、前端と角がちゃんと見渡せること!今の車にはもうない特徴ですね。。スリーポインテッドスターも、前端がわかりやすくするためのものだとか。

後席にも座ってみます。ほとんど私はこの特等席に座ることはないのですが。。
何とも言えないシートの座り心地。コイルバネの入ったシートは今の車にはない安楽な感じがします。

メルセデス・ベンツ W126(300SE): 走り
エンジン
300SEはW126のエントリーモデルとしての位置づけ。エンジンはマイナーチェンジ後にW124 (今のEクラス)用に開発された103系、直列6気筒SOHCが搭載されています。当時、
「メルセデス・ベンツが唯一持っていなかったものは、BMWには搭載されている、なめらかで官能的な直列6気筒エンジンである。しかし、ついにメルセデスはそれを手に入れた!(直訳調ですみません)」
と評された、なかなかに味わい深いエンジンです。185PSと控えめながら、まったく振動を伝えることなくとても息の長い加速をするところが魅力です。シリンダー間の隔壁も厚く、耐久性は折り紙付き。

バルクヘッドは二重構造になっていてエンジンと電装系の部品が隔離されている(エンジン後方に見えます)。また、この構造により衝突の際の衝撃を分散し、さらにエンジンやトランスミッションが客室に入り込まないようにしている
せっかくなので動画を紹介します。ただただ加速するだけですが、なかなかいい音ですよ~。
ステアリングフィール
W126のステアリング方式はリサーキュレーティングボール。トラックやオフローダーに使われている方式ですね。最近までGクラスには使われてましたね。あとジムニーは今もそうですよね。アウトバーンで疲れにくいからという理由で採用されているようです(上質感も狙っているのでしょう)。
細く大きなステアリングホイールをよいしょと切って走るのは独特の感覚。ハンドルを切るとじわっとロールしながら向きを変えていく一連の動きには、思わず笑みがこぼれます。
でも緊急回避性能に抜かりはなく、車の前後バランスも良いことからステアリングは正確です。このあたりがまずは安全第一のドイツ車らしい作りだと思います。でも、このナチュラルな運転感覚があるので、ワインディングでも結構楽しいのですよ。

アクセルとブレーキ
アクセル、ブレーキも重めで、しっかりと踏み込まないといけません。このような感覚はすべての操作系に共通していて、すべての動作に「所作」が求められるような感じです。自然と運転姿勢が良くなり、動作が丁寧になります。
足回り
サスペンションはストロークが長く、ねっとりと路面を捉えます。これも独特。柔らかいのにコシがあり、どんなことがあっても絶対に路面とのコンタクトを失わないようにする、そんな執念を感じるような足回りです。
自動車販売業の方の動画で、「これこそ私の言いたかったこと」を仰っている動画がありましたのでご紹介します。気分を共有できればうれしいです。
([ベンツといえばコレだった]メルセデスベンツ300SE試乗動画)
ユーザーインターフェースなど
W126は、ユーザーインターフェースがよく考えられているのも良いところ。
クルーズコントロールはレバーを倒すだけの操作で作動開始。レバーの位置もウィンカーとは離れていて誤動作の心配はありません。

メーター回りは、この時代のザ・メルセデス。視認性の良さ以外に何も考えていないかのような質実剛健さ。ウィンカーの作動を知らせるインジケーターの大きいこと!


乗り心地
残念ながら我が家にはこの車を運転できるのは私しかいません。ですので、ここでの乗り心地は、運転席でのものになります。本当は後席に乗ってみたい!
乗り心地でびっくりするのは、ちょっと舟に乗っているようなゆったりした周波の揺れをするということです。ちょっと乗るだけだと、昔のアメ車みたい。おそらくアメリカ市場のニーズも取り入れて、あたりの柔らかな乗り味にセッティングしたのでしょう。コイルバネの入ったシートとともに、本当にやさしい、ゆったりした乗り心地です。
しかし、一定以上ロールするとすごくしっかりとダンパーが揺れを抑制し、ああドイツ車!というような乗り心地に変化します。柔らかなサスペンションでぼよんぼよんと動き続ける感覚とは違います。
高速も、ゆったりとした動きをして、フラット、というのとはちょっと違う小舟に乗ったような感触が続きます。ここは昔子供の頃に乗った印象とはちょっと違ってました。
この時代の車は、サスペンションやダンパーが仕事をしている感じがじかに体に伝わってきて、懐かしい感じがします。

静粛性
子供の頃に我が家にW126がやってきた時は、「なんて静かなクルマだろう」と思ったものです。当時我が家にはBMW 5シリーズ(初代、4気筒モデル)がありましたが、雲泥の差。
その印象は現在乗ってみてもあまり変わらず、十分静か。もちろん、静粛性の基準をガラッと変えた1989年デビューのトヨタ・セルシオに比べると静かではありません。それでもW213のEクラスに比べると静かです。
特に足回りからのノイズはかなり抑え込んでおり、日本のザラメ路面でもかなり静か。もちろん細いタイヤですからその分ノイズに関しては有利で、現代の車が同じ土俵で比較されるのは酷かもしれませんが。。
もうこのころにメルセデス・ベンツは車のひとつの完成形を作り上げていたんだなと思います。
燃費
見たくない燃費ですが、今のところ下記の通り。
| 走行距離(㎞) | 2,651 |
| 平均燃費(㎞/l) | 7.51 |
| 最大(㎞/l) | 8.59 |
| 最小(㎞/l) | NA |
今のところ平均燃費は7.51㎞/l。当時のカタログ燃費(10モード燃費)が6.3㎞/l(!)ですから、それよりも良いですね。燃料タンクは90Lも入り、めちゃくちゃ大食いです。これで7㎞/lで走ったとしても600㎞無給油は難しいかと。。
私が普段入れているガソリンスタンドでは1度に9,990円までしか給油できないため、たいたい50L消費したところで入れています。
今までの最高は8.59㎞/l。この時は三浦半島ドライブと千葉県へのドライブが中心。長距離乗ればこれぐらい行くんですね。この燃費を見たときは思わずガッツポーズしました。
最低値は、残念ながら前述の問題で満タンにできなかったことが相次いでいるためです。
おそらくですが、6.5㎞/lくらいじゃないかなと思います。
これでも先代W116型から比べると10%以上燃費が良くなったらしいですよ。

まとめ
私の愛車である、メルセデス・ベンツ W126の直列6気筒モデル、300SEの紹介をしてきました。好きすぎて、いろいろ書いていたら長くなってしまいました。
そんなこんなで、メルセデス・ベンツ W126は、車のあるべき姿を追求し、他人のマネをするのではなく世界で誰も成功したことのないことに取り組み、試行錯誤しながら今につながる技術を実用化していった、チャレンジ精神の詰まった車だと思います。車の乗り味もさることながら、その姿勢に共感しています。
大事に乗っていきたいと思っています。










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